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~新しい朝~

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翌日から…私はまるで細野さんから姿を隠すかのように、静かに毎日を過ごした。
杉崎さんとは仕事上の会話のみをして…極力、雑談などもしないようにして…

どこかで彼女が私たちのことを監視しているような気がしてならなかった。
一方で、相変わらず彼女は、杉崎さんを見つけては、話しかけ、悩みを打ち明け…嬉しそうに笑っていた。
彼女でもない私は所詮、そんな状況を見てもどうすることもできなかった。

それから2週間ほど経った頃、私は思いがけないことを指示され、固まっていた。
「え… 出張… ですか…?」
私は主任に言われた言葉を、思わずもう一度、復唱する。

「そうそう、出張…。今度うちの商品とコラボする予定の製菓会社の方に行って欲しいんだよね、水無月さんに…」

「は… え…えっと、… …」

出張… 初めての出張… 
確かに石田さんや杉崎さんが…他の部署の社員も…たまに日帰りや泊りで出張に行っているのは知っていたけど…
まさか、まだ入社一年目の私が…出張を命じられるとは思ってもいなかった…。

胸の中に不安な気持ちが渦巻く…  
だめだ… どうしよう…私は一体、何をすればいいんだろう…

「あ… あの…場所は、どちらですか…?…」

「ああ!場所ね…場所は、九州の…なんだよ?行ったことある…?」

「… いえ、一度もないです…」でも、地図上…拓海のいる福岡から、近そうだ…
ちらと、そんなことが頭をよぎった。

「… …私、なんかで…大丈夫、なんでしょうか… あの…一人、ですよね…」
思わず、不安が外に出てしまった。

社会人失格だろうか…だけど、あまりに突然のことで…不安しかない…
いきなり出張と言われても、目的も聞かされていない…作法も、段取りもさっぱりだ…

「いやいや、!水無月さん…君はきちんと…いつも丁寧な仕事をしてるからね…信頼してるからこそなんだよ?そんな不安そうな顔しないで…!それと、ごめんね!肝心なことを…前置きすべきだったね…あの、杉崎くんも一緒だよ!君は補助!あくまで補助としてついて行って…そこで色々学ぶといいよ…すごく勉強になるし、いい経験になると思うんだ…ね?」

「え… … … 」杉崎さんと…一緒に… 嘘… 

「…水無月さん…大丈夫だよ、出張は初めてなんだし、俺の横にいて、俺と先方のやり取りを見ててくれたらいいから…ね?」杉崎さんがふわりと、私に笑いかける。

「は… はい… あの…すみません、色々不慣れですが、よろしくお願いします…。」

「初めてなんだから、不慣れは当然だよ…?…こちらこそ、よろしく。」

「はい… 」
心臓の音が、外まで聞こえてしまいそうだ…

頭の中の不安が瞬時に消え去ると同時に…
杉崎さんと一緒に、出張に行く… その事実が、不謹慎だとはいえ…確実に、私の胸を高鳴らせた。 





























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