【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

文字の大きさ
上 下
396 / 538
~彼との分離~

アールグレイ

しおりを挟む
「こんにちは…あなた確か昨夜…修哉と一緒にいた女の子…よね…?」

その綺麗な女性は私を見下ろし、かなりフレンドリーに…そんな風に語り掛けて来た。

「え… っと… …」
何と答えればいいのか、一瞬迷う…。
なぜ、この女性が今、私の目の前にいるのか…一瞬、頭が回らなくなる。

でもそうか…
この人も昨夜、男性と一緒にエレベーターに乗ってきたのだ…。
その男性とともに宿泊し…
同じように男性がチェックアウトを済ませ、先にホテルを出て…
女性一人で…ゆっくりとカフェに来たのかもしれない…

ああ…なんだか…心の中がざわざわするのを、止めることが出来ない…
話したくない…この女性と、長く話をしていたくない…
漠然と、そんな気持ちになった…

この人は杉崎さんのことを親し気に「しゅうや」と…名前で、呼び捨てにした…  
男性と一緒にいたてまえか、すぐに杉崎くんと言い直したものの…明らかに、親し気に杉崎さんに接してきて…
そうだ…確か…私のことも、聞こうとしてきた…彼女?…って…確かそう、聞いてきたような…あの後、杉崎さんはなんと答えていたっけ…  思い出せない…

そして…あの短時間の間に、私にまとわりつくように絡められた視線…
何度か体験した、あの空気感…

誰から…どう見ても、素敵な杉崎さんと一緒にいるだけで、私はいつも…他の女性からこんな視線を受けてしまう… 

見てみてあの人、すごくかっこいい…え…でも、隣の女見て…誰…あの、冴えない女…似合わない~

夜、自宅近所の店に杉崎さんと食事に行った際も…お茶に行った時も、いつもそんな風に、周りに言われているような気がするのは、私の被害妄想だろうか…

「あら…どうしたの?…人違いだったかしら…ごめんなさい、突然話しかけて…でも…やっぱり昨日の…」

その女性が微笑みながら、私の席に、更に一歩近づく。

ええ…人違いですよ…誰とお間違いですか…?
そんな風に少し強気に返事ができたらどんなに良かっただろう…
私にはとても、無理だった…

「あ…いえ… すみません、そう…です… 」

「やっぱり!!…私昨夜、酔っぱらってたから…夢かと思っちゃったわ~ふふ…」

「… … … …」
ごめんなさい、私、フルーツタルトを一人でゆっくり食べたいです…もう、いいでしょうか…?
そんな風に…言えたらどんなに良かっただろう…

世の中にはいろんな人がいる…
たとえ、初対面だったとしても…相手の状況にお構いなしに、ずかずかとテリトリーに入ってくる人も、一定数いるらしい…

「私もお茶しようと思って来たのよ…?少しだけ、ご一緒していいかしら…?」

「え… … … …あ… 」

駄目な私… 
明確に断れないまま…その少し派手目な女性は、私の返事を待つまでもなく、
私の正面の椅子に優雅な素振りで、ゆっくりと腰かけた。

「あ…、お兄さん、私、アールグレイをお願い。」
「かしこまりました。」

そう言えば…杉崎さんが…紅茶の種類が豊富って言ってたな…
なのに、私はうっかり、珈琲を頼んじゃった…

そんな、どうでもいいことが、なぜだかそんな時に頭の隅をよぎったが、後の祭りだった…。


















しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...