【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～拓海～

放置

しばらくの間、俺はその女を放置したまま、忘れたようにテレビを見ていた。

食べかけだった弁当をやっと食べ終わり、殻をゴミ箱に捨てる。

時計を見ると、もう１０時近い。

ふと、考える。
あの子がトイレに入ってどのくらい経つだろうか…
いちいち測っているわけではないが1５分位は経っている気がする…
水を流す音はおろか、何の音もしない…気がする。

少し心配になり、俺は忍び足でトイレのドアの方に近付く。

さっきといい、今といい…　
なんで俺が自分の部屋の中で忍び足にならなきゃいけなんだと思いつつ、ドアの前に耳をあてがう。

・・・シーン・・・　

…そんな音がしそうなほどに、音がしない…人の気配がない…。

もしかして、俺が気付かないうちに自分の部屋に戻ったか？とも思うが荷物はそのままあるし、
なによりトイレに鍵…　は…あれ…　かかっていない…
恐らく吐き気でそれどころではなかったのだろう…

とりあえず、得体の知れない女子がトイレの中にいて、今、どんな状態かもわからない…。
当然勝手に開けるわけにはいかず、
考えた末、ノックをしてから一応外から声をかける。

コンコンコン・・・　「あの…大丈夫ですか…？」

・・・シーン・・・

駄目だ…もう一回…

コンコンコン・・・「あの！！大丈夫ですか…！？起きてますか…！？」

・・・シーン・・・

もう、このままだと埒が明かない…そして何より、このまま放置するのは怖い…。
ないとは思うが、まさか…中で死んでたなんてなったら、マジでシャレにならない…

俺は意を決して声をかける。

「…あの、すみませんがドア、とりあえず開けますね…失礼します…」

ギッと、ゆっくりとドアを開けると、そこには…　

便座の蓋の上に座った状態で…

前にだらんと頭を下げて気を失ったようにみえる女が、いた…。


　　　嘘…　　どんな状態だ、　これ…