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〜二人〜

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頭上から、優しい杉崎さんの声…


「水無月さん…ごめん…途中から、かなり激しかったよね…、身体、大丈夫…?」

囁きながら、杉崎さんが私の上からそっと体を離す…。

私の中で脈打っていた杉崎さんの…熱過ぎる熱が、ずるりと…ゆっくりと引き抜かれ…少しして…我に帰る私。

「あ…あの…いえ…」言葉が出てこない。

杉崎さんのいなくなった場所…が、突然、外気に晒される…。
気恥ずかしさのあまり、すぐに近くにあったシーツを手繰り寄せて身体を…全身を隠す。

「だ…大丈夫です…ごめん…なさい…」
思わず、口をついて出る謝罪の言葉…

この言葉は…一体、誰に対しての言葉なのか…

拓海に対してか…
林さんに対してなのか…

こんなことをして…

もう、なんと言って、謝れば良いのかもわからない…

「…なぜ…今、謝るの…?水無月さんは悪くない…悪いのは全て俺だよ… 俺が酔っている君を強引にホテルに誘って、連れ込んだ…。」杉崎さんが私を真っ直ぐに見つめる…

言葉を続ける。

「しかも、ベッドの上でも、いやだといった君を、逃さなかった…。だからもう、そんな風に謝るのは、なし…」

杉崎さんがシーツに包まれた私を体全体で優しく、強く…抱きしめるようにして、耳元で囁く。

私も同罪なのに…

杉崎さんが全てを被ろうとしているのがわかった…。
今夜のことを、杉崎さんだけのせいに…?

そんなこと…間違っている…
事実と違う…そんな言い訳できるはずがない…。

私の意思が…確かにそこにあったのだ。
もう、我慢の限界だった…触れたい…
杉崎さんに抱かれたかった。

淫乱だと言われてもいい…私は彼の全てが…欲しかった…。

これは、完全なる同意による交わり…
完全なる、裏切りだ…

「シャワー…浴びてきていいかな…?水無月さん、先に行く?俺が先でも、どちらでもいいけど…水無月さんが、動けるようなら…」

正直今すぐ…とても動ける気がしなかった。
そのまま…砂のように溶け落ちてしまいそうなほどに、身体がだるくて、仕方なかった…

そしてまだ、じんわりと…身体の芯が…熱を帯びている…

何より杉崎さんの前で…裸で横切ってシャワー室へ向かうのも恥ずかしかった…

「いえ…すみません、杉崎さん、お先にどうぞ…私はもう少し、横になっています…」

「そう…?じゃあ、お言葉に甘えてお先に…少し、待っててね…」杉崎さんは私に優しく微笑みかけ、シャワー室へと消えて行った…

私はついに…杉崎さんに、抱かれた…

自分で自分が信じられない…

長年付き合っている恋人…拓海がいるのに…
最低、最悪な女…だ…
真面目な…いい子のふりをした女は今夜…、霧に消えた…

ふと、時間を確認しようと携帯を手にする。



ドキリとした。


拓海からのライン…だ… 
      着信履歴も、ある…



…杉崎さんと抱き合っていた…
     そのくらいの時間に、何通か…



私はその夜、どうしても

その…
 拓海のメッセージを
      開くことができなかった…















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