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~彼氏~

出不精

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「いや~ それにしても、ご近所さんとはいえ、ばったり遭遇の頻度、すごいですよね…!」

拓海がジョッキを手にしながら明るい口調で口にする。

「そうね!…だって私と拓海さんは普段こっちに住んでるわけでもないし…たまたま週末に来てるだけで…しかもこのあたり店の数はそこそこあるから…被らない方が普通だと思うけど…3度目…。なかなか、ないよね…ふふ…」

林さんも拓海の発言に合いの手を打つように発言し、微笑む。

「… …」話す言葉が…どうしても浮かばない…

共通の話題…もしくは、話題として膨らむ話…何か話さなきゃと思うのに、浮かばない…
なんだか今日は頭が真っ白だ…このままではいけない…。

私はなんとか愛想笑いのようなものを浮かべつつも頭をフル回転しながら、シークワーサー酎ハイに口をつける。

なんとか話題を探し出し、やっと、言葉を紡ぐ。

「あ…の、林さんは元気にされていましたか?向こうでの研修はどんな感じなんですか…?私も少しだけ、興味があって…お知り合いとかはできましたか?」

質問をいくつか投げかける…。

できるだけ、私と杉崎さんの関係する話からは遠ざけたい…。
そんな防衛本能が働いたのか、話を逸らすべく口が勝手に動き出した…そんな感じ…。

「ええ!研修ね…それがね、実は思っていたより大変なのよ…私としては将来を見据えて、スキルアップのために手を挙げて参加したんだけど…実務研修のほかに、毎日の講義や課題の提出…ディスカッションとかの頻度がなかなか多くて…気が抜けないというか…そんな感じ…まあ、終わった頃には充実感が得られるかもしれないけど…ちょっと少しだけ、立候補したこと、後悔してるかも…」

林さんは、グラスを置いて、ため息をつく。

「…そう…なんですか…」
私は驚く。
聞いていて意外だった…。

いつも明るくて前向き…朗らかな林さんが…そんな風な発言をするのは珍しいことのように思えた。

「そう…なのよ…しかも今、…遠距離でしょ…修哉さんにはなかなか会うことが出来ないし…私はいつもこっちにくるけど修哉さんははるばるなんて…一度も来てくれないしね…!」

「ね…?修哉さん…!」言いながら、林さんが笑いながら隣にいる杉崎さんの肘をつつく…。

「おっと…そっか…そうきたか…ごめん…俺はもともと出不精で…飛行機も苦手…なんだよね…はは…」

杉崎さんが苦笑いをしながら弁解する。

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