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~現実~
疲れたおっさん
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「週末はお疲れさん、ありがとねー!杉崎くんと水無月さんのおかげだよ、皆、料理もうまいし温泉も良かったって、褒めてたよ…!」
月曜の朝、
主任と石田さんに口を揃えて言われる。
振り返ってみれば、結局は主任と石田さん抜きで、杉崎さんと私の2人だけで幹事をこなしたようなものだった。
それはそれで楽しかったので、今となっては感謝したいくらいだ。こんなことでもなければ、杉崎さんとドライブなんて絶対に行けなかったに違いない。
最初は、参加することすらあんなに気が引けていた社員旅行が、杉崎さんがいるだけで真逆なものになった。
幹事の仕事ができて良かった、旅行に参加できて楽しかった…私の感想はそれに尽きる。
「いえ、そんな…杉崎さんが全て手配してくださったので、私は何も…でもすごく、勉強になりました」
「そんなことないよ。水無月さんは覚えもいいし、気配りができるから俺もすごく助かったよ。お疲れ」
隣の席から杉崎さんが微笑む。
その言葉だけで嬉しい…。
顔がにやけやそうになるのを必死に抑える。
その様子を見守っていた主任が割って入る。
「おいおい、君たち、…なーんか雰囲気、怪しいぞ…2人の世界が出来上がってないか…?
杉崎くんも隅におけないな…こんなひと回りほどに若い子を、たぶらかしちゃダメだぞっ…!はははっ…」
その場で聞いていた石田さんも私たちを交互に見て笑いながら答える。
「確かに…なんか2人、距離感が…2人の間の空気感が前と違うな…前より一層、仲良くなってる気がする…うんうん、怪しい…」
…冗談…なのはわかってる。
でも…冗談だとはわかっていても、その主任らの発言に一瞬、ヒヤリとする。
私たちの間に、おかしな雰囲気が醸し出ているのだろうかと、気になってしまう。
「主任も石田さんも、冗談はほどほどにしてくださいよ。俺と水無月さんじゃ、疲れたおっさんと若さ溢れる娘さんですよ…あり得ない…
冗談でもそういう発言、下手したらセクハラになっちゃいますよ。最近はそういうのうるさいから、気を付けてくださいよ…はは」
杉崎さんが笑って受け流す。
さすがの処世術。
私はまだまだで、返す言葉は何一つ、浮かんでいなかった。
疲れたおっさんと若さあふれる娘…
杉崎さんは決して疲れたおっさんじゃない…
格好良くて素敵だし、私はこんな身なりで、若さは少しも溢れていないと思う…
そんなところに、いちいち心の中で訂正を加える私。
「はい!以後!発言には気をつけまっす!」
主任がわざとおどけて言いながら、おもむろにチケットのような紙を鞄から取り出す。
「それはそうとさ…!お礼も兼ねて、これ、良かったら使わないか…?」
杉崎さんが主任からチケットらしきものを受け取る。
見ると、クルーズディナーのチケット?ペア券…。
「デパートの抽選で嫁が当てたんだが…俺らその日は都合悪くて二人とも行けないんだよ…。
だから君たち2人で行ってもらうか、無理なら誰か他に譲ってもらってもいいから、良かったらさ…」
行きたい…正直にいうとそう思った。
クルーズディナーなんて、行ったこともない…
テレビでしか見たこともない…船の上での食事…
でも…さすがに、行きます、ください!だなんて…がっついたりはできない…。
杉崎さんが先に答える。
「頂いていいんですか?行けるかわからないけど、ちょっと俺、…興味あります。水無月さんも使い道、考えてみて?とりあえず、俺が代表してありがたくいただきます。」
そう言って、チケットを受け取る杉崎さん。
その場で、その話は終了したが、その夜、杉崎さんからきた一通のラインで、正直に言うと、
私は、胸を躍らせてしまった…。
月曜の朝、
主任と石田さんに口を揃えて言われる。
振り返ってみれば、結局は主任と石田さん抜きで、杉崎さんと私の2人だけで幹事をこなしたようなものだった。
それはそれで楽しかったので、今となっては感謝したいくらいだ。こんなことでもなければ、杉崎さんとドライブなんて絶対に行けなかったに違いない。
最初は、参加することすらあんなに気が引けていた社員旅行が、杉崎さんがいるだけで真逆なものになった。
幹事の仕事ができて良かった、旅行に参加できて楽しかった…私の感想はそれに尽きる。
「いえ、そんな…杉崎さんが全て手配してくださったので、私は何も…でもすごく、勉強になりました」
「そんなことないよ。水無月さんは覚えもいいし、気配りができるから俺もすごく助かったよ。お疲れ」
隣の席から杉崎さんが微笑む。
その言葉だけで嬉しい…。
顔がにやけやそうになるのを必死に抑える。
その様子を見守っていた主任が割って入る。
「おいおい、君たち、…なーんか雰囲気、怪しいぞ…2人の世界が出来上がってないか…?
杉崎くんも隅におけないな…こんなひと回りほどに若い子を、たぶらかしちゃダメだぞっ…!はははっ…」
その場で聞いていた石田さんも私たちを交互に見て笑いながら答える。
「確かに…なんか2人、距離感が…2人の間の空気感が前と違うな…前より一層、仲良くなってる気がする…うんうん、怪しい…」
…冗談…なのはわかってる。
でも…冗談だとはわかっていても、その主任らの発言に一瞬、ヒヤリとする。
私たちの間に、おかしな雰囲気が醸し出ているのだろうかと、気になってしまう。
「主任も石田さんも、冗談はほどほどにしてくださいよ。俺と水無月さんじゃ、疲れたおっさんと若さ溢れる娘さんですよ…あり得ない…
冗談でもそういう発言、下手したらセクハラになっちゃいますよ。最近はそういうのうるさいから、気を付けてくださいよ…はは」
杉崎さんが笑って受け流す。
さすがの処世術。
私はまだまだで、返す言葉は何一つ、浮かんでいなかった。
疲れたおっさんと若さあふれる娘…
杉崎さんは決して疲れたおっさんじゃない…
格好良くて素敵だし、私はこんな身なりで、若さは少しも溢れていないと思う…
そんなところに、いちいち心の中で訂正を加える私。
「はい!以後!発言には気をつけまっす!」
主任がわざとおどけて言いながら、おもむろにチケットのような紙を鞄から取り出す。
「それはそうとさ…!お礼も兼ねて、これ、良かったら使わないか…?」
杉崎さんが主任からチケットらしきものを受け取る。
見ると、クルーズディナーのチケット?ペア券…。
「デパートの抽選で嫁が当てたんだが…俺らその日は都合悪くて二人とも行けないんだよ…。
だから君たち2人で行ってもらうか、無理なら誰か他に譲ってもらってもいいから、良かったらさ…」
行きたい…正直にいうとそう思った。
クルーズディナーなんて、行ったこともない…
テレビでしか見たこともない…船の上での食事…
でも…さすがに、行きます、ください!だなんて…がっついたりはできない…。
杉崎さんが先に答える。
「頂いていいんですか?行けるかわからないけど、ちょっと俺、…興味あります。水無月さんも使い道、考えてみて?とりあえず、俺が代表してありがたくいただきます。」
そう言って、チケットを受け取る杉崎さん。
その場で、その話は終了したが、その夜、杉崎さんからきた一通のラインで、正直に言うと、
私は、胸を躍らせてしまった…。
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