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~見えない境界~
快晴
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社員旅行当日の朝。
天気は快晴。
秋晴れで気持ちの良い風が少し吹く、旅行に最適の日になった。
「皆さん、おはようございます!やっとこの日…総務課の社員旅行の日がやってきました…え~…行き先は…」
総務課長の最初の挨拶が、会社の入口付近で始まる。
結局参加者は合計で20人少し位になった。
小さなお子さんがいるお母さんや親の介護などで土日の泊り自体が無理な人もいて、やはり5人ほどは不参加か、日帰り初日のみの参加となった。
課長の少し長めの挨拶の後、ぞくぞくとバスに乗り込む社員。
男女比で言うと、男性が7割、女性が3割というところだろうか…。
バスの車内は、ビールなどのお酒やちょっとしたおつまみを配布したこともあり、なかなかの賑わいを見せた。
「いや~…年に一度の社員旅行…楽しいね~ …最近は社員同士の関係も段々と希薄になってきていて、社員旅行を廃止する団体や企業も多い中、うちは古き良き時代を踏襲していてほんと良いよね~。」
広報ではない、別の係の50代くらいの男性が、缶ビール片手に呟く。
いえいえ…もうそろそろ、社員旅行なんて時代遅れでしょう…
飲み会は行きたい人とだけ行く。
ランチも、夜の食事も…旅行だって…個人の自由で、好きな人とだけ行く…。
昔からある、なかば半強制的に行かされる社員旅行なんて、今の時代、一体何人が喜んで参加するのだろう…。しかも、これは会社次第だとは思うが自分で積み立てて…気を遣うことしかない社員旅行で、自分自身のお金が消えていく…。
良いことなんて、ただの一つもない…もしあるとするなら…社員同士の深まる親睦…人間関係…?
いや…やはりそんなものは、普段の仕事で自然に培われるもので、特に旅行でどうこうというものでもない…ただただ男性が旅先に行ってどんちゃん騒ぎをしたいだけ、なのではないか…
私は内心強くそう思いながらも、もちろん思ったことは一切言わずに、バスに揺られていた。
私達幹事は、通路を挟んで、バスの最前列に二人ずつ、別れて座っている…。
先に主任と石田さんがいち早くバスに乗り込み、横並びで座ったために…必然的に私と杉崎さんが隣同士で座ることになってしまった…。
あんなことがあった後で気まずく、内心席の配置に戸惑ったが、旅行幹事は前方でする仕事もあり、一人だけ自由にというわけにもいかないので、私はその席に静かに座った…。
私は窓際に座り、
始終、杉崎さんの方をなるべく不自然にならない程度に見ないようにして、窓から景色を眺めていた…。
「水無月さん…大丈夫…?もしかして車酔いとか、してない…?」
私が無言でいることを気にしてか、杉崎さんが心配そうに横から声をかけてくる…。
「あ…大丈夫です…少し…眠いだけです…」
私は素っ気なく答え、また、思い出したかのように窓の外を見つめる…。
不意に、ビクンと…身体が震える…。
杉崎さんの手が…私の手に…そっと、重ねられた…。
皆に見えないように…目立たないような形で…私の手が…杉崎さんの大きな手に包まれる…。
内心驚いて、横に座る彼を見上げる…
彼は私の反応に気を留めることもなく、通路側に座っている石田さんと通路を挟んで笑いながら話を続けている…。
その状態で、さらに手をぎゅっと握り込まれ、…心臓が早鐘を打つようになり始める…。
ドキドキドキドキ…
外に聞こえそうな、私の心臓の音…
ああ…杉崎さんの高い体温が私の中に流れ込む…。
なに…杉崎さん…何がしたいのか、わからない…
こんなことをして…私をどうしたいの…
もしかして、私の反応を見て、楽しんでいる…?
もう、やめて…無理…このままでは、心臓が持たない…
私はこれからどうしたら良いのか、
どうすべきか…
今でもわからない状態なのに…なんで今こんなことを…
それでも…その手を突き放すことが出来ずに…熱くて大きな手に…包まれたまま…
私は無言で…窓の外の景色を眺め続けた…。
天気は快晴。
秋晴れで気持ちの良い風が少し吹く、旅行に最適の日になった。
「皆さん、おはようございます!やっとこの日…総務課の社員旅行の日がやってきました…え~…行き先は…」
総務課長の最初の挨拶が、会社の入口付近で始まる。
結局参加者は合計で20人少し位になった。
小さなお子さんがいるお母さんや親の介護などで土日の泊り自体が無理な人もいて、やはり5人ほどは不参加か、日帰り初日のみの参加となった。
課長の少し長めの挨拶の後、ぞくぞくとバスに乗り込む社員。
男女比で言うと、男性が7割、女性が3割というところだろうか…。
バスの車内は、ビールなどのお酒やちょっとしたおつまみを配布したこともあり、なかなかの賑わいを見せた。
「いや~…年に一度の社員旅行…楽しいね~ …最近は社員同士の関係も段々と希薄になってきていて、社員旅行を廃止する団体や企業も多い中、うちは古き良き時代を踏襲していてほんと良いよね~。」
広報ではない、別の係の50代くらいの男性が、缶ビール片手に呟く。
いえいえ…もうそろそろ、社員旅行なんて時代遅れでしょう…
飲み会は行きたい人とだけ行く。
ランチも、夜の食事も…旅行だって…個人の自由で、好きな人とだけ行く…。
昔からある、なかば半強制的に行かされる社員旅行なんて、今の時代、一体何人が喜んで参加するのだろう…。しかも、これは会社次第だとは思うが自分で積み立てて…気を遣うことしかない社員旅行で、自分自身のお金が消えていく…。
良いことなんて、ただの一つもない…もしあるとするなら…社員同士の深まる親睦…人間関係…?
いや…やはりそんなものは、普段の仕事で自然に培われるもので、特に旅行でどうこうというものでもない…ただただ男性が旅先に行ってどんちゃん騒ぎをしたいだけ、なのではないか…
私は内心強くそう思いながらも、もちろん思ったことは一切言わずに、バスに揺られていた。
私達幹事は、通路を挟んで、バスの最前列に二人ずつ、別れて座っている…。
先に主任と石田さんがいち早くバスに乗り込み、横並びで座ったために…必然的に私と杉崎さんが隣同士で座ることになってしまった…。
あんなことがあった後で気まずく、内心席の配置に戸惑ったが、旅行幹事は前方でする仕事もあり、一人だけ自由にというわけにもいかないので、私はその席に静かに座った…。
私は窓際に座り、
始終、杉崎さんの方をなるべく不自然にならない程度に見ないようにして、窓から景色を眺めていた…。
「水無月さん…大丈夫…?もしかして車酔いとか、してない…?」
私が無言でいることを気にしてか、杉崎さんが心配そうに横から声をかけてくる…。
「あ…大丈夫です…少し…眠いだけです…」
私は素っ気なく答え、また、思い出したかのように窓の外を見つめる…。
不意に、ビクンと…身体が震える…。
杉崎さんの手が…私の手に…そっと、重ねられた…。
皆に見えないように…目立たないような形で…私の手が…杉崎さんの大きな手に包まれる…。
内心驚いて、横に座る彼を見上げる…
彼は私の反応に気を留めることもなく、通路側に座っている石田さんと通路を挟んで笑いながら話を続けている…。
その状態で、さらに手をぎゅっと握り込まれ、…心臓が早鐘を打つようになり始める…。
ドキドキドキドキ…
外に聞こえそうな、私の心臓の音…
ああ…杉崎さんの高い体温が私の中に流れ込む…。
なに…杉崎さん…何がしたいのか、わからない…
こんなことをして…私をどうしたいの…
もしかして、私の反応を見て、楽しんでいる…?
もう、やめて…無理…このままでは、心臓が持たない…
私はこれからどうしたら良いのか、
どうすべきか…
今でもわからない状態なのに…なんで今こんなことを…
それでも…その手を突き放すことが出来ずに…熱くて大きな手に…包まれたまま…
私は無言で…窓の外の景色を眺め続けた…。
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