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〜杉崎〜

滲む

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水無月さんを乗せたタクシーが走り去って行った後…俺は再び、ベンチに腰を掛けた。

空にはぽっかりと三日月が浮かび上がっていた。

ヤバい…ヤバいやばい…

まただ…また…やってしまった…

「好き」という彼女の呟き…

それだけでは、俺だってなんとか理性を働かせ、そこまで行動に起こすことはなかったかもしれない…なのに、彼女は、俺を好きだと…一緒にいると楽しいと…離れたくないと…多分…いや、確かにそんな風に言った…

俺は…そう聞くなり、頭で考えるより先に、彼女を引き寄せていた…

細くて華奢な彼女の身体…強く抱き締めると本当に折れてしまうんじゃないかと思えるほどの…儚さ…。
抱き締めた瞬間、彼女からはふわりと、いい匂いがした…。

シャンプーの香りなのか洋服の香りなのかわからないが…石鹸のような、花の香りのような…とにかく女性らしい…鼻をくすぐるような香りが俺の全身をゆっくりと包み込んだ…。

智花がよくつけているキツめの海外の香水の匂いとは違う…なんていうかずっと嗅いでいたいような心地良い香り…。


引き寄せて、抱き締めるだけならともかくも…

キスをしてしまうなんて…

しかもまた…あの時と同じだ。

彼女の固く閉じた唇を無理矢理こじ開けるようにして、強引に俺の舌を彼女の小さな口にねじ込み…執拗に…まるで、愛する恋人にするようなキスを彼女に…

激しいキスをしてしまう、自分がいた…。

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