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~彼氏~
拓海の問い
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「葉月、最近どうなん?仕事とか…」
帰省した拓海と空港で合流して、私たちは近くのイタリアンの店に入った。
トマトベースの魚介のパスタを口いっぱいに頬張りながら、拓海が私に尋ねてくる。
「うん…まあまあ、かな…最近やっと仕事にも慣れてきて、残業も減ってきたよ。」
「そっか…良かったな。あの…前に会った…えっと杉崎さんって人も、良くしてくれてんの…?」
「うん…すごく親切だよ、杉崎さんは。年の離れた優しいお兄ちゃんみたいな感じ、…」
拓海に杉崎さんの話題を振られて一瞬ドキリとしたものの、拓海に変に思われないようにサラッと答える。
週末にドライブしたことも、杉崎さんが熱を出した日にお宅を訪問したことも…当然のことながらわざわざ拓海には言っていない。
土日のことを聞かれていないから…だから拓海に話していないだけ…私はそう、自分自身に言い訳をしていた。
「おまえさ…先週の土日、何してたの?」
再び、ドキリと心臓がなる。唐突に聞かれた。私のパスタを巻くフォークの動きが不自然に止まってしまう。
「え…何って…えっと… なんで?」私のその問いに、
「いや…何となく… ただ、おまえが土日、俺になんもラインとか電話とかしてこねーの、珍しいなって思っただけだよ。なんか、忙しかったんか?」
…少し、本当は迷った…
土曜日に、杉崎さんと …車で社員旅行の下見に行った。
そこでお風呂に入り、お昼を食べて、仮契約を済ませて、帰った…
拓海にその事実を伝えるべきか、やはり迷った。
何故なら…後ろ暗いからに決まっている。そこでハプニングがあり…結果的に裸を見せ合い…帰ったのだから。
「あの、土曜日に、会社の人と社員旅行会の下見に行ってきたよ、幹事だからさ…日曜日は疲れで、家でだらっとしてたくらいかな…拓海は何してたの?」
その先、拓海に何も聞かれなければ、そのまま終わろうと思っていた。
でも、拓海はやっぱり…聞いてきた。
「ふーん、下見…?どこに‥?会社の人って何人かで?…」
… もう、いいや…隠しても仕方ないし、隠すと余計に怪しまれる、そんな気がした…
「んー… うん、あの、杉崎さんと二人で、車で、花咲温泉まで…行ってきた。そこで下見して仮予約してきた」
「…へえ…二人だけでか… そっか… 車で二人で… … 」
拓海が、よくわからない表情で、アイスコーヒを口にする。
「職場で家庭があったり子供がいたりで、他に行ける人がいなくて…で、私はひとりで暇だったし、かといって杉崎さんだけに頼むのも申し訳なくて…」
少し、言い訳がましいかな…なんて思いつつ、そう、口にする。
「そ…だな。まあ、おまえはフリーだし、仕方ないか、お疲れ…あ、俺はさ、週末だらだらしてただけだよ…」
そう言って、デザートのタルトにザクリとフォークを突き刺す拓海。
…目に見えて、少し不機嫌になったような気がしたために、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
それ以降その話題には一切触れずに、ランチを終えた。
その日の帰宅後、やっぱり言うんじゃなかったと、私は後悔することになる。
夜、拓海の…お昼には抑えて見せなかった感情が…むき出しになった。
帰省した拓海と空港で合流して、私たちは近くのイタリアンの店に入った。
トマトベースの魚介のパスタを口いっぱいに頬張りながら、拓海が私に尋ねてくる。
「うん…まあまあ、かな…最近やっと仕事にも慣れてきて、残業も減ってきたよ。」
「そっか…良かったな。あの…前に会った…えっと杉崎さんって人も、良くしてくれてんの…?」
「うん…すごく親切だよ、杉崎さんは。年の離れた優しいお兄ちゃんみたいな感じ、…」
拓海に杉崎さんの話題を振られて一瞬ドキリとしたものの、拓海に変に思われないようにサラッと答える。
週末にドライブしたことも、杉崎さんが熱を出した日にお宅を訪問したことも…当然のことながらわざわざ拓海には言っていない。
土日のことを聞かれていないから…だから拓海に話していないだけ…私はそう、自分自身に言い訳をしていた。
「おまえさ…先週の土日、何してたの?」
再び、ドキリと心臓がなる。唐突に聞かれた。私のパスタを巻くフォークの動きが不自然に止まってしまう。
「え…何って…えっと… なんで?」私のその問いに、
「いや…何となく… ただ、おまえが土日、俺になんもラインとか電話とかしてこねーの、珍しいなって思っただけだよ。なんか、忙しかったんか?」
…少し、本当は迷った…
土曜日に、杉崎さんと …車で社員旅行の下見に行った。
そこでお風呂に入り、お昼を食べて、仮契約を済ませて、帰った…
拓海にその事実を伝えるべきか、やはり迷った。
何故なら…後ろ暗いからに決まっている。そこでハプニングがあり…結果的に裸を見せ合い…帰ったのだから。
「あの、土曜日に、会社の人と社員旅行会の下見に行ってきたよ、幹事だからさ…日曜日は疲れで、家でだらっとしてたくらいかな…拓海は何してたの?」
その先、拓海に何も聞かれなければ、そのまま終わろうと思っていた。
でも、拓海はやっぱり…聞いてきた。
「ふーん、下見…?どこに‥?会社の人って何人かで?…」
… もう、いいや…隠しても仕方ないし、隠すと余計に怪しまれる、そんな気がした…
「んー… うん、あの、杉崎さんと二人で、車で、花咲温泉まで…行ってきた。そこで下見して仮予約してきた」
「…へえ…二人だけでか… そっか… 車で二人で… … 」
拓海が、よくわからない表情で、アイスコーヒを口にする。
「職場で家庭があったり子供がいたりで、他に行ける人がいなくて…で、私はひとりで暇だったし、かといって杉崎さんだけに頼むのも申し訳なくて…」
少し、言い訳がましいかな…なんて思いつつ、そう、口にする。
「そ…だな。まあ、おまえはフリーだし、仕方ないか、お疲れ…あ、俺はさ、週末だらだらしてただけだよ…」
そう言って、デザートのタルトにザクリとフォークを突き刺す拓海。
…目に見えて、少し不機嫌になったような気がしたために、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
それ以降その話題には一切触れずに、ランチを終えた。
その日の帰宅後、やっぱり言うんじゃなかったと、私は後悔することになる。
夜、拓海の…お昼には抑えて見せなかった感情が…むき出しになった。
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