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〜戸惑いの日々〜
彼の領域
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桜マンション804。
杉崎さんから聞かされた部屋番号のボタンをマンション下のエントランスで押す。
ピンポンと小さく作動音がしたと思うと「どうぞ、」と杉崎さんの声がして自動ドアが開く。
ドキドキドキ…部屋に上がるつもりは毛頭ないものの、異常に緊張してくる。
私の申し出はやはり少しまずかった気が、今更ながらにしてくる…
彼女のいる男性に対して自宅まで差し入れを持参すると提案すること自体…
仮にもし林さんが知れば、あまりいい気がしないかもしれない…
ドアの前に立って、もう一度ピンポンを押す。
「はい。」彼の声がしたので、即座に、
「あ、水無月です!言われたもの、買ってきました。ドアノブにかけておきますね!お大事にされてください。」
そう言って、すぐに立ち去ろうとしたら、突然ガチャリと…ドアが開く。
「…水無月さん…わざわざ、ありがとう…ほんと、ごめんね…」杉崎さんがひょこんと顔を出す。
きちんとマスクをしていて…少しだけ、いつもより顔が赤い気がした。
「あ…杉崎さん、無理されないでください…どうぞ…これ…」手にしていた袋を差し出す。
「助かるよ…ちょっと良くなってきたのかお腹もすいちゃって…だからと言って買いに行く気力はなくて…あ…水無月さん良かったら…少しだけ上がっていかないかな…?って言っても、何のお構いもできないけど、珈琲くらいは…どうかな…?」
杉崎さんがそう言って微笑んだ…気がした。
マスクで口元は見えないが、目元がすごく優しくて…ドキリとする。
「え…っと…でも…」
正直私は、杉崎さんの言葉にぐらついた…
お邪魔してみたい…
普段から素敵な男性である杉崎さんのお宅にお邪魔できるなんて、まさに夢のようだ…
本心は…私の本心は…心からそう思ったのだけど…その一方で、
上がっちゃダメでしょ…仮にも彼女さんがいる独身男性のお宅に…しかもこんな夜に…事情はどうあれお邪魔なんてしちゃ…駄目でしょ…と止める自分がいた。
「もし、良ければだけど…っていうか、普通、嫌だよね…男の部屋に入るの。そうだ…風邪うつっちゃうといけないしね…ごめん、俺、無神経だった…今日はありがとう…」そう言って杉崎さんが話を終わらせた…だけど、私はまたしても、自分の気持ちに貪欲になってしまう。
「では…少しだけお邪魔します…、そうだ、買ってきたおかゆ…温めたり、私全部しますから…杉崎さんは座って大人しく待っていてください…ね!」
ニッコリ笑ってそう言うと、
杉崎さんも、「…じゃあ、よろしくお願いします…!俺、準備ができるまでおとなしく寝てます…」そう言ってにっこりと微笑む。
「じゃ…入って…」ドアを開ける彼…
「すみません、お邪魔します…」足を踏み入れる私…
私はわけもわからず高鳴る鼓動を抑えながら、彼の領域に侵入した…。
杉崎さんから聞かされた部屋番号のボタンをマンション下のエントランスで押す。
ピンポンと小さく作動音がしたと思うと「どうぞ、」と杉崎さんの声がして自動ドアが開く。
ドキドキドキ…部屋に上がるつもりは毛頭ないものの、異常に緊張してくる。
私の申し出はやはり少しまずかった気が、今更ながらにしてくる…
彼女のいる男性に対して自宅まで差し入れを持参すると提案すること自体…
仮にもし林さんが知れば、あまりいい気がしないかもしれない…
ドアの前に立って、もう一度ピンポンを押す。
「はい。」彼の声がしたので、即座に、
「あ、水無月です!言われたもの、買ってきました。ドアノブにかけておきますね!お大事にされてください。」
そう言って、すぐに立ち去ろうとしたら、突然ガチャリと…ドアが開く。
「…水無月さん…わざわざ、ありがとう…ほんと、ごめんね…」杉崎さんがひょこんと顔を出す。
きちんとマスクをしていて…少しだけ、いつもより顔が赤い気がした。
「あ…杉崎さん、無理されないでください…どうぞ…これ…」手にしていた袋を差し出す。
「助かるよ…ちょっと良くなってきたのかお腹もすいちゃって…だからと言って買いに行く気力はなくて…あ…水無月さん良かったら…少しだけ上がっていかないかな…?って言っても、何のお構いもできないけど、珈琲くらいは…どうかな…?」
杉崎さんがそう言って微笑んだ…気がした。
マスクで口元は見えないが、目元がすごく優しくて…ドキリとする。
「え…っと…でも…」
正直私は、杉崎さんの言葉にぐらついた…
お邪魔してみたい…
普段から素敵な男性である杉崎さんのお宅にお邪魔できるなんて、まさに夢のようだ…
本心は…私の本心は…心からそう思ったのだけど…その一方で、
上がっちゃダメでしょ…仮にも彼女さんがいる独身男性のお宅に…しかもこんな夜に…事情はどうあれお邪魔なんてしちゃ…駄目でしょ…と止める自分がいた。
「もし、良ければだけど…っていうか、普通、嫌だよね…男の部屋に入るの。そうだ…風邪うつっちゃうといけないしね…ごめん、俺、無神経だった…今日はありがとう…」そう言って杉崎さんが話を終わらせた…だけど、私はまたしても、自分の気持ちに貪欲になってしまう。
「では…少しだけお邪魔します…、そうだ、買ってきたおかゆ…温めたり、私全部しますから…杉崎さんは座って大人しく待っていてください…ね!」
ニッコリ笑ってそう言うと、
杉崎さんも、「…じゃあ、よろしくお願いします…!俺、準備ができるまでおとなしく寝てます…」そう言ってにっこりと微笑む。
「じゃ…入って…」ドアを開ける彼…
「すみません、お邪魔します…」足を踏み入れる私…
私はわけもわからず高鳴る鼓動を抑えながら、彼の領域に侵入した…。
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