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〜お互いの日常〜

初めての誘い

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それから、二か月ほど過ぎたある日、少し驚くことがあった。
林さんが、九州に長期間の研修に行くことになったのだ。

8月から、翌年の7月まで…1年間の期間限定ではあるけれど、研修としてはかなりの長期間で、職場の中でも、かなりざわつく事態となった。

でも、どうやら当の林さんが実は長いこと希望していたシステム関連の研修らしく、彼女はいたって明るかった。

彼女の送別会が開かれた際もあっさりしていて、「1年の研修を通して自分のスキルをアップさせて、必ず、この会社に貢献したいと考えています。皆さん、お元気で…福岡に寄られることがあればお声掛けください。」
そう言って、にっこりと笑って会社を去っていった。

杉崎さんは…寂しくないのだろうか…私は真っ先に、杉崎さんの心情を思った。

突然の、遠距離恋愛…
ただ、突然とは言っても、彼らは恋人同士だから、杉崎さんはもともと彼女の希望を知っていて、覚悟していたのかもしれない…。それでもやはり、突然の別れ…寂しくはないのだろうか…。

まあ、私なんかが気にしても仕方のないことだし、私はその後も、そのことについて杉崎さんにあえて触れることは、一度もしなかった。

林さんが去って1ヵ月ほどたったある日の夕方、私が7時過ぎまで部屋で一人で残業していると、執務室のドアが静かに開く。

見ると、杉崎さんが立っていた。確か、定時に帰ったはずだけど…忘れ物かな…と不思議に思う。
「水無月さん、まだ残業…?毎日、お疲れ様だね…」優しい言葉をくれる。

「はい…でも、もうすぐ帰りますから、大丈夫です。ありがとうございます。」
明るくそう言うと、しばらくの間があり…私がどうしたのかなと彼を見つめると、突然…

「もし、もうすぐ帰るなら…良かったら、どこかで一緒にご飯でも食べてかない?…俺、まだ食べてなくって…」思いがけない彼からの食事の誘いだった…私は耳を疑う。杉崎さんから食事に誘われるのは初めてのことで…一瞬だけ、言葉を失う。

聞き間違い…では、ないだろうか…「え…っと…」私が驚いて、少し返事に手間取ると「あっ…いや、いいんだ…いきなり何、言ってんだろ俺…まだ、仕事…残ってるよね、全然気にしないで…」彼が即座に申し出を取り下げる。

私も…行きたい…本音はこうだったから…勇気を出して、こう答える。「はい、喜んで…!ご飯行きましょう。私もお腹、すいちゃいました。あと、15分ほどお時間いただければ出られると思いますので…もう少しだけ、待っててもらえますか?」

彼はニコリと微笑み、答える。「じゃあ俺、ちょっと行くとこあるから、それ片付けてここに戻るね、全然急がなくて良いから…じゃあまたあとで…」

初めての杉崎さんとの、二人だけの食事…
単なる職場の先輩ではあるけど、一回りも上の、やっぱり大人な…男性としても素敵な杉崎さんとの食事…
           
少し意識してしまう自分を抑えながら、私は残務処理に臨んだ。



















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