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〜出会い〜
彼女の話
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「どう…?もう、仕事には慣れた…?あ…でも、水無月さんはまだ入って1ヵ月も経たないから、まだまだ…今は大変な時期かな…?ご飯とか、ちゃんと食べれてる?」
林さんが赤ワインのグラスを片手に、私に微笑みながら聞いてくる。
「あ…はい、そうなんです。実はまだ…全然仕事に…パソコンの操作にも慣れてなくて…。毎日本当に家に帰ってから、ぐったりしてます。食事とかもなかなか作る気にならなくて…だめだとは思いつつ、つい買って帰ったり…」
私はそう返事をした後、付け加える。
「広報部ってどんな仕事をするのか未知の世界で…最初は本当に不安だったんです…。でも、係の先輩方がとても親切で優しいので…今はすごく、良かったと思ってます。
杉崎さんなんて、本当に優しくて…もしかしたら色々仕事が忙しくてイラついてるかもしれない時でも、いつも笑顔で接してくれるので…本当に…」
言いながら私は考える。
係の先輩と言っても…もはや、親切に優しく教えてくれるのは、杉崎さんだけだった。
石田さんは悪く言えば、ほぼ丸投げタイプで…
私がまだしたこともない未経験の事務処理を説明もなく、私に突然託してきたりする…出来るわけがないのに…。
私が呆然としながらも、処理方法がわからずしばらく固まっていると、そのやり取りを見ていた杉崎さんが、すかさずその事務処理について、「石田さん、初めての事務はきちんと教えてあげないとかわいそうですよ~」と、石田さんに声をかけながらも、手取り足取り私に教えてくれるのだ…それも何度か…。
だから仕事の内容はともかくも、私は杉崎さんのいる部署に配置になって本当に良かったと思っていた。
「そう…杉崎さんが、やっぱりフォローしてるのね…!彼…確かに優しいもんね、誰にでも…本当に…。」
林さんがワインを一口、美味しそうに口に含んで、私にそう告げる。
笑顔が素敵…。
明るくて綺麗な人…栗色のショートボブのヘアスタイルが小さな顔にとてもよく似合っている。
切れ長の目に…長い睫毛。
メイクは濃くなくてナチュラルな感じで…一見、サバサバしたタイプに見えて、この前の歓迎会の時のような女性らしい面も兼ね備えている…。
素敵な人…こんな素敵な女性に食事に誘われて…今、すごく幸せだ…できれば、もっと仲良くなりたいな…。
林さんの見た目も、性格も…何もかもが素敵で…お姉さんのようで…見習いたくて…私には純粋にそう思えた。
私がそんな風に考えていると、割と唐突に…
「実は…私…ね、…」林さんが手にしていたグラスをコトリとテーブルに置いて、私を見ながら口を開く。
…? なんだろう…何かの報告?…秘密の話とか…?私には検討もつかない…。
「私…前から杉崎さんと…お付き合いしてるの…あ、周りの人には…まだ、秘密ね…知ってる人もいるけど、まだごく少数だから…」
彼女が人差し指を口元に持っていき、シーっと囁くような…いわゆる…秘密にしてね、のポーズをする…。
そうか…なるほど…そっか…そうなのか…。
私には妙に、腑に落ちた…
彼女と杉崎さんなら、年齢的にもピッタリな気がするし…あの歓迎会の時は周りに人もいたし…そっか…普通に…気付かなかった…
そもそも私は、高校時代から、恋愛に関してかなりうとくて鈍感だって言われてるし…なるほど…
ああ…それにしても…全然、気付かなかったな…
「そうなんですね…!私…全然気付かなかったです…そうなんだ~。わー、なんだか、お似合いですね!」
私の口は、勝手に笑いながらそう答えていた。
最初は有頂天に食事の誘いに乗った私だけど…そして、バカな私はその時すぐには気付かなかったのだけど…
後になって、こんな風に…思ってしまった。
彼女…林さんが係の違う私を…なんの接点もない特に特徴もない私を…わざわざ食事に誘った目的は…
その目的は…もしかして…もしかすると…
杉崎さんは、私の彼氏だから、今後…必要以上には彼に近づかないでね…と…
私に…忠告するつもりがあったのだろうかと…そんな風に、邪推してしまった…
おそらく私は…釘を刺されたのだ。
私には既に彼氏がいるのに…
その話は歓迎会でもしたし、私が杉崎さんにちょっかいをかけるなど、絶対にありえないのに…
やはり、杉崎さんと同じ係だから警戒されたのだろうか…それとも、彼女はいつもこうやって、周りの女性を杉崎さんから遠ざけている…のだろうか…
ああ…誘いが純粋に、嬉しかったのに…ちょっと、人間不信に…なりそうだ…
そんな暗い気持ちを払拭するべく、
私はその日以降、一心不乱に仕事に専念した。
林さんが赤ワインのグラスを片手に、私に微笑みながら聞いてくる。
「あ…はい、そうなんです。実はまだ…全然仕事に…パソコンの操作にも慣れてなくて…。毎日本当に家に帰ってから、ぐったりしてます。食事とかもなかなか作る気にならなくて…だめだとは思いつつ、つい買って帰ったり…」
私はそう返事をした後、付け加える。
「広報部ってどんな仕事をするのか未知の世界で…最初は本当に不安だったんです…。でも、係の先輩方がとても親切で優しいので…今はすごく、良かったと思ってます。
杉崎さんなんて、本当に優しくて…もしかしたら色々仕事が忙しくてイラついてるかもしれない時でも、いつも笑顔で接してくれるので…本当に…」
言いながら私は考える。
係の先輩と言っても…もはや、親切に優しく教えてくれるのは、杉崎さんだけだった。
石田さんは悪く言えば、ほぼ丸投げタイプで…
私がまだしたこともない未経験の事務処理を説明もなく、私に突然託してきたりする…出来るわけがないのに…。
私が呆然としながらも、処理方法がわからずしばらく固まっていると、そのやり取りを見ていた杉崎さんが、すかさずその事務処理について、「石田さん、初めての事務はきちんと教えてあげないとかわいそうですよ~」と、石田さんに声をかけながらも、手取り足取り私に教えてくれるのだ…それも何度か…。
だから仕事の内容はともかくも、私は杉崎さんのいる部署に配置になって本当に良かったと思っていた。
「そう…杉崎さんが、やっぱりフォローしてるのね…!彼…確かに優しいもんね、誰にでも…本当に…。」
林さんがワインを一口、美味しそうに口に含んで、私にそう告げる。
笑顔が素敵…。
明るくて綺麗な人…栗色のショートボブのヘアスタイルが小さな顔にとてもよく似合っている。
切れ長の目に…長い睫毛。
メイクは濃くなくてナチュラルな感じで…一見、サバサバしたタイプに見えて、この前の歓迎会の時のような女性らしい面も兼ね備えている…。
素敵な人…こんな素敵な女性に食事に誘われて…今、すごく幸せだ…できれば、もっと仲良くなりたいな…。
林さんの見た目も、性格も…何もかもが素敵で…お姉さんのようで…見習いたくて…私には純粋にそう思えた。
私がそんな風に考えていると、割と唐突に…
「実は…私…ね、…」林さんが手にしていたグラスをコトリとテーブルに置いて、私を見ながら口を開く。
…? なんだろう…何かの報告?…秘密の話とか…?私には検討もつかない…。
「私…前から杉崎さんと…お付き合いしてるの…あ、周りの人には…まだ、秘密ね…知ってる人もいるけど、まだごく少数だから…」
彼女が人差し指を口元に持っていき、シーっと囁くような…いわゆる…秘密にしてね、のポーズをする…。
そうか…なるほど…そっか…そうなのか…。
私には妙に、腑に落ちた…
彼女と杉崎さんなら、年齢的にもピッタリな気がするし…あの歓迎会の時は周りに人もいたし…そっか…普通に…気付かなかった…
そもそも私は、高校時代から、恋愛に関してかなりうとくて鈍感だって言われてるし…なるほど…
ああ…それにしても…全然、気付かなかったな…
「そうなんですね…!私…全然気付かなかったです…そうなんだ~。わー、なんだか、お似合いですね!」
私の口は、勝手に笑いながらそう答えていた。
最初は有頂天に食事の誘いに乗った私だけど…そして、バカな私はその時すぐには気付かなかったのだけど…
後になって、こんな風に…思ってしまった。
彼女…林さんが係の違う私を…なんの接点もない特に特徴もない私を…わざわざ食事に誘った目的は…
その目的は…もしかして…もしかすると…
杉崎さんは、私の彼氏だから、今後…必要以上には彼に近づかないでね…と…
私に…忠告するつもりがあったのだろうかと…そんな風に、邪推してしまった…
おそらく私は…釘を刺されたのだ。
私には既に彼氏がいるのに…
その話は歓迎会でもしたし、私が杉崎さんにちょっかいをかけるなど、絶対にありえないのに…
やはり、杉崎さんと同じ係だから警戒されたのだろうか…それとも、彼女はいつもこうやって、周りの女性を杉崎さんから遠ざけている…のだろうか…
ああ…誘いが純粋に、嬉しかったのに…ちょっと、人間不信に…なりそうだ…
そんな暗い気持ちを払拭するべく、
私はその日以降、一心不乱に仕事に専念した。
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