10 / 538
〜出会い〜
彼女の話
しおりを挟む
「どう…?もう、仕事には慣れた…?あ…でも、水無月さんはまだ入って1ヵ月も経たないから、まだまだ…今は大変な時期かな…?ご飯とか、ちゃんと食べれてる?」
林さんが赤ワインのグラスを片手に、私に微笑みながら聞いてくる。
「あ…はい、そうなんです。実はまだ…全然仕事に…パソコンの操作にも慣れてなくて…。毎日本当に家に帰ってから、ぐったりしてます。食事とかもなかなか作る気にならなくて…だめだとは思いつつ、つい買って帰ったり…」
私はそう返事をした後、付け加える。
「広報部ってどんな仕事をするのか未知の世界で…最初は本当に不安だったんです…。でも、係の先輩方がとても親切で優しいので…今はすごく、良かったと思ってます。
杉崎さんなんて、本当に優しくて…もしかしたら色々仕事が忙しくてイラついてるかもしれない時でも、いつも笑顔で接してくれるので…本当に…」
言いながら私は考える。
係の先輩と言っても…もはや、親切に優しく教えてくれるのは、杉崎さんだけだった。
石田さんは悪く言えば、ほぼ丸投げタイプで…
私がまだしたこともない未経験の事務処理を説明もなく、私に突然託してきたりする…出来るわけがないのに…。
私が呆然としながらも、処理方法がわからずしばらく固まっていると、そのやり取りを見ていた杉崎さんが、すかさずその事務処理について、「石田さん、初めての事務はきちんと教えてあげないとかわいそうですよ~」と、石田さんに声をかけながらも、手取り足取り私に教えてくれるのだ…それも何度か…。
だから仕事の内容はともかくも、私は杉崎さんのいる部署に配置になって本当に良かったと思っていた。
「そう…杉崎さんが、やっぱりフォローしてるのね…!彼…確かに優しいもんね、誰にでも…本当に…。」
林さんがワインを一口、美味しそうに口に含んで、私にそう告げる。
笑顔が素敵…。
明るくて綺麗な人…栗色のショートボブのヘアスタイルが小さな顔にとてもよく似合っている。
切れ長の目に…長い睫毛。
メイクは濃くなくてナチュラルな感じで…一見、サバサバしたタイプに見えて、この前の歓迎会の時のような女性らしい面も兼ね備えている…。
素敵な人…こんな素敵な女性に食事に誘われて…今、すごく幸せだ…できれば、もっと仲良くなりたいな…。
林さんの見た目も、性格も…何もかもが素敵で…お姉さんのようで…見習いたくて…私には純粋にそう思えた。
私がそんな風に考えていると、割と唐突に…
「実は…私…ね、…」林さんが手にしていたグラスをコトリとテーブルに置いて、私を見ながら口を開く。
…? なんだろう…何かの報告?…秘密の話とか…?私には検討もつかない…。
「私…前から杉崎さんと…お付き合いしてるの…あ、周りの人には…まだ、秘密ね…知ってる人もいるけど、まだごく少数だから…」
彼女が人差し指を口元に持っていき、シーっと囁くような…いわゆる…秘密にしてね、のポーズをする…。
そうか…なるほど…そっか…そうなのか…。
私には妙に、腑に落ちた…
彼女と杉崎さんなら、年齢的にもピッタリな気がするし…あの歓迎会の時は周りに人もいたし…そっか…普通に…気付かなかった…
そもそも私は、高校時代から、恋愛に関してかなりうとくて鈍感だって言われてるし…なるほど…
ああ…それにしても…全然、気付かなかったな…
「そうなんですね…!私…全然気付かなかったです…そうなんだ~。わー、なんだか、お似合いですね!」
私の口は、勝手に笑いながらそう答えていた。
最初は有頂天に食事の誘いに乗った私だけど…そして、バカな私はその時すぐには気付かなかったのだけど…
後になって、こんな風に…思ってしまった。
彼女…林さんが係の違う私を…なんの接点もない特に特徴もない私を…わざわざ食事に誘った目的は…
その目的は…もしかして…もしかすると…
杉崎さんは、私の彼氏だから、今後…必要以上には彼に近づかないでね…と…
私に…忠告するつもりがあったのだろうかと…そんな風に、邪推してしまった…
おそらく私は…釘を刺されたのだ。
私には既に彼氏がいるのに…
その話は歓迎会でもしたし、私が杉崎さんにちょっかいをかけるなど、絶対にありえないのに…
やはり、杉崎さんと同じ係だから警戒されたのだろうか…それとも、彼女はいつもこうやって、周りの女性を杉崎さんから遠ざけている…のだろうか…
ああ…誘いが純粋に、嬉しかったのに…ちょっと、人間不信に…なりそうだ…
そんな暗い気持ちを払拭するべく、
私はその日以降、一心不乱に仕事に専念した。
林さんが赤ワインのグラスを片手に、私に微笑みながら聞いてくる。
「あ…はい、そうなんです。実はまだ…全然仕事に…パソコンの操作にも慣れてなくて…。毎日本当に家に帰ってから、ぐったりしてます。食事とかもなかなか作る気にならなくて…だめだとは思いつつ、つい買って帰ったり…」
私はそう返事をした後、付け加える。
「広報部ってどんな仕事をするのか未知の世界で…最初は本当に不安だったんです…。でも、係の先輩方がとても親切で優しいので…今はすごく、良かったと思ってます。
杉崎さんなんて、本当に優しくて…もしかしたら色々仕事が忙しくてイラついてるかもしれない時でも、いつも笑顔で接してくれるので…本当に…」
言いながら私は考える。
係の先輩と言っても…もはや、親切に優しく教えてくれるのは、杉崎さんだけだった。
石田さんは悪く言えば、ほぼ丸投げタイプで…
私がまだしたこともない未経験の事務処理を説明もなく、私に突然託してきたりする…出来るわけがないのに…。
私が呆然としながらも、処理方法がわからずしばらく固まっていると、そのやり取りを見ていた杉崎さんが、すかさずその事務処理について、「石田さん、初めての事務はきちんと教えてあげないとかわいそうですよ~」と、石田さんに声をかけながらも、手取り足取り私に教えてくれるのだ…それも何度か…。
だから仕事の内容はともかくも、私は杉崎さんのいる部署に配置になって本当に良かったと思っていた。
「そう…杉崎さんが、やっぱりフォローしてるのね…!彼…確かに優しいもんね、誰にでも…本当に…。」
林さんがワインを一口、美味しそうに口に含んで、私にそう告げる。
笑顔が素敵…。
明るくて綺麗な人…栗色のショートボブのヘアスタイルが小さな顔にとてもよく似合っている。
切れ長の目に…長い睫毛。
メイクは濃くなくてナチュラルな感じで…一見、サバサバしたタイプに見えて、この前の歓迎会の時のような女性らしい面も兼ね備えている…。
素敵な人…こんな素敵な女性に食事に誘われて…今、すごく幸せだ…できれば、もっと仲良くなりたいな…。
林さんの見た目も、性格も…何もかもが素敵で…お姉さんのようで…見習いたくて…私には純粋にそう思えた。
私がそんな風に考えていると、割と唐突に…
「実は…私…ね、…」林さんが手にしていたグラスをコトリとテーブルに置いて、私を見ながら口を開く。
…? なんだろう…何かの報告?…秘密の話とか…?私には検討もつかない…。
「私…前から杉崎さんと…お付き合いしてるの…あ、周りの人には…まだ、秘密ね…知ってる人もいるけど、まだごく少数だから…」
彼女が人差し指を口元に持っていき、シーっと囁くような…いわゆる…秘密にしてね、のポーズをする…。
そうか…なるほど…そっか…そうなのか…。
私には妙に、腑に落ちた…
彼女と杉崎さんなら、年齢的にもピッタリな気がするし…あの歓迎会の時は周りに人もいたし…そっか…普通に…気付かなかった…
そもそも私は、高校時代から、恋愛に関してかなりうとくて鈍感だって言われてるし…なるほど…
ああ…それにしても…全然、気付かなかったな…
「そうなんですね…!私…全然気付かなかったです…そうなんだ~。わー、なんだか、お似合いですね!」
私の口は、勝手に笑いながらそう答えていた。
最初は有頂天に食事の誘いに乗った私だけど…そして、バカな私はその時すぐには気付かなかったのだけど…
後になって、こんな風に…思ってしまった。
彼女…林さんが係の違う私を…なんの接点もない特に特徴もない私を…わざわざ食事に誘った目的は…
その目的は…もしかして…もしかすると…
杉崎さんは、私の彼氏だから、今後…必要以上には彼に近づかないでね…と…
私に…忠告するつもりがあったのだろうかと…そんな風に、邪推してしまった…
おそらく私は…釘を刺されたのだ。
私には既に彼氏がいるのに…
その話は歓迎会でもしたし、私が杉崎さんにちょっかいをかけるなど、絶対にありえないのに…
やはり、杉崎さんと同じ係だから警戒されたのだろうか…それとも、彼女はいつもこうやって、周りの女性を杉崎さんから遠ざけている…のだろうか…
ああ…誘いが純粋に、嬉しかったのに…ちょっと、人間不信に…なりそうだ…
そんな暗い気持ちを払拭するべく、
私はその日以降、一心不乱に仕事に専念した。
1
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる