【完結】あの可愛い人妻を、誰か俺に譲ってください。

もえこ

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ガーリックライス

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彼女との約束の日がきた。

週末の金曜日。

夜7時に駅の近くで待ち合わせだったが、かなり早く着いてしまった俺は、近くの本屋で時間をつぶしていた。雑誌をペラペラとめくりながらも、頭の中は、少しの緊張と…混乱があった。

彼女との今日の食事の後、いつもどおり儀式であるハグに進んだ後…のこと。彼女のあの返事からすると、俺は…キスをしたければ、しても…いいってこと…なのだろうか。

バクバクとなる心臓を抑え、見てもいない雑誌をパラパラとめくりながら10分ほど経過した。
そろそろだ…俺は雑誌を置き、待ち合わせ場所に向かう。

いつもは行き当たりばったりで店を選ぶこともあったが、今日は金曜日なので念のため焼肉店を予約していた。彼女はあの見た目からするとかなり意外だが、肉が好きらしく、俺の提案に二つ返事でOKした。

手ごろな値段で美味しいと評判の焼肉店。しかも全席が個室になっていて、人目が気にならない。

彼女は人妻だから、やっぱり俺と食事しているところを見られてしまうのは、できるだけ避けたかった。ただもうすでに食事は二人だけで何度も行っているから、既に目撃されてる可能性も否定できないけど…。

「こんばんは。お待たせしました!あ~お腹すきました、私今日の焼肉、すごく楽しみにしてて…では、行きましょう!」彼女がにこやかに俺に笑いかけ、歩き出す。

「はい、では…」二人で歩きながら、考えてしまう。

…由良さん、今この人、この瞬間、絶対、100パーセント、肉のことしか、考えてないな…。
完全に、食べることが大好きな由良さん、俺のこの内心のモヤモヤなんて、きっと想像もつかないだろう。

「7時に予約していた木下です。」そう店員に告げ焼肉店に入り、二人用おススメコースを注文した。
肉が来るまでに、先に乾杯をする。

「今週もお疲れ様でした~!なんだか最近、すごく忙しかったですよね、ほんと毎日、仕事、嫌になります…私、今日だけを楽しみに生きてきたような感じです。」
由良さんがそう言って、ゆずソーダに口をつけ美味しいと言いながら、微笑む。

またまた…今日だけを楽しみに…だなんて…

家庭のある由良さんには、俺なんかよりもっともっと、別の楽しみがあるはずだ。いつも一人でぼんやり毎日を過ごす俺なんかより、そりゃ格段に幸せなんじゃないか… なのに、そんなことを言うから…ほんと、罪な人だ…といっても、彼女の主目的はきっと肉だから、言葉に嘘はないのかもしれない。

旨そうな肉が次々と運ばれてくる。
食べ進めるにつれて、俺の中に、今思い切って、例のキス発言について由良さんの真意を聞いてみようかという気持ちが湧いてきた。

ほろ酔い状態の今なら、彼女はあまり意識せずに答えてくれるだろうか?

ちょうどよく焼けた肉を、美味しい美味しいと言って無邪気に口に運ぶ彼女を見ながら、迷ったものの…俺はやっぱりその話題を彼女にふることはできなかった。

やっぱり…次に彼女を抱き締めるときに、その場で聞くしかない。つまり…今日だ。

その店名物の、人気のガーリックライスを食べ、お腹を満たした俺たち二人はその店をあとにした。時間は夜10時前。

「すごーく、美味しいお肉でしたね、お値段も手頃ですし…行けて良かったです。」

「…ですね…」
もう、随分恒例となったハグの場所へ向かいながら、意図していたわけでなかったが俺は段々と、言葉少なになっていった、キスできるのか、やっぱりハグだけなのか…どうしても、もやもや考えてしまう。

…はっ!! それと、今、とても微妙なことに気付いてしまった… 
さっきの焼肉店で…しめに大量のニンニク入りのガーリックライス…を二人して、食べちゃった…ぞ。

もし仮に今日、キスに至ったとして…記念すべき初キスが…まさかの、ニンニクの味… …

俺はまるで、彼女と初キスをする前の中坊のように、そんなことを考えていた…

                                   
                                  つづく
                        










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