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夢
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俺と由良さんは毎日ではないが、割とラインで連絡を取るようになってきていた。
その日の些細な出来事や、行ってみたい店の話、映画や本の話、色々と話は尽きない。
職場では席も遠く、1日に話せても、数分程度だから、むしろラインで話すときの情報量が断然多くなってきていた。
でも彼女には家庭がある。
だから俺の返信はもちろん恐る恐るではあったが、彼女からくるラインには、可能な限り応じた。
でも、その度重なる連絡のせいで、本当に最近、由良さんが俺にとっての付き合いたての彼女のような…そんなおかしな錯覚に陥りそうになる。
気を付けなければ…
あくまで彼女は人妻なんだから…
そう、自分に何度注意喚起しても、彼女をさらに好きになっていく自分の気持ちは止めようがなかった。
だって、望めば…というか正確には、今のところ、彼女からアクションがあったときのみに限られるが、ハグだってできる。旦那以外に、彼女の柔らかで華奢な身体をこの胸に抱くことができるのは、俺だけだ…
その事実が、俺の彼女に対する気落ちに拍車をかけていた。
ある時、いつもどおり彼女との楽しいラインのやり取りをしている最中に、彼女が俺に初めて、家庭の不満みたいなものを漏らしたことがあった。
彼女はこうつぶやいた。「疲れました、遠くに行きたい…一人になりたい」と。
俺は思い切って、でも冗談めかしてこう返事をした。
「なんか、嫌なことでもありましたか?…俺もちょっと疲れてて…いっそ一緒に、遠くに行きますか?…あ、でも、それだと、一人になれないか…笑」
すると彼女はこう、返してきた。
「いいですね!どこ、行きます?日帰り?お泊り?もういっそ、沖縄とか北海道がいいです、何もかも忘れて遠くに…」
おいおい… 俺はため息をつく…
これは…寂しい独身男に返すべきではない冗談が過ぎる内容の返信だ…いつも、由良さんはこんなことを俺にいって、俺をこんなにも…惑わせる…
俺は一種の苛立ちを覚え、わざとこんな内容でラインを返す。
「それでは、どちらにしましょうか?俺は北と南、どっちも好きな場所なんでどっちでもいいですよ、白石さん、日程と行き先、自由に決めてください。」
彼女はこのラインで、少しくらい戸惑ってくれるだろうか…
俺をいつも惑わせ、寸前のところで我慢させ、俺を唯一、その魅力的な顔で、身体で、翻弄する人妻。
「…すみません…冗談が過ぎました。木下さん、ごめんなさい、でもまた食事には付き合ってくださいね。」
想像通りの、彼女の回答…ほらな…いつもこうだ。
こうやって彼女は俺をいつも翻弄し、俺がいざ、ヤバイ方向に話をわざと持っていこうとすると、すぐ、態度を翻す。
この部分については、彼女はとっても、ずるくて…ある意味、残酷だ…
でも、悲しい性分だが俺は、彼女の気持ちになるべく沿えるように努力する。怒らず、態度を変えずをモットーに。
「…ですよね。俺も冗談です。はい、食事にはまた、いきましょう。」そう、文字を打ち込んだ後、俺に少しだけ、心の中の悪魔が、ささやいた。
おまえ…いつもそんなんでいいのか…?
彼女にきわどい冗談でからかわれ、ハグしながらも気持ちを抑え…ずっと結局、彼女に…ある意味、利用され続ける。かわいそうな奴だな…まるで…拷問だ。
その悪魔のささやきで、俺の中の本性が目を覚まし、彼女に反撃する。
「白石さん…でもその後、また、ハグですよね…?ハグはまあ、いいんですけど、一応これでも俺…男、なんで…本当はその先を、つまり…キスとか…したくなったりしてます…あ、もちろん今抑えていますけど。だからもう、ハグは…やめますね。」
俺はそう、ラインを続け送信ボタンを押した。
完全に、一種の、賭けに出た。
これで由良さんが引くなら、それでもう、全て終了、変な期待はせずに、俺は身を引く…しかない。
もし彼女が引かないなら…その先は、俺にも…もはや、よくわからない
俺はそろそろ…甘美な拷問に耐えられなくなってきていたのだ。俺は勢いでラインして初めて、そのことを自覚した
彼女からの返事は…こう、だった。
「キス…までは、わたしの許容範囲内…です…」
え…?
え…嘘… うそうそ…!? 夢か…?
また、いつもの冗談か?
ドッキリ、とか…?!
俺は文面を何度も見返し、布団に突っ伏した。
つづく
その日の些細な出来事や、行ってみたい店の話、映画や本の話、色々と話は尽きない。
職場では席も遠く、1日に話せても、数分程度だから、むしろラインで話すときの情報量が断然多くなってきていた。
でも彼女には家庭がある。
だから俺の返信はもちろん恐る恐るではあったが、彼女からくるラインには、可能な限り応じた。
でも、その度重なる連絡のせいで、本当に最近、由良さんが俺にとっての付き合いたての彼女のような…そんなおかしな錯覚に陥りそうになる。
気を付けなければ…
あくまで彼女は人妻なんだから…
そう、自分に何度注意喚起しても、彼女をさらに好きになっていく自分の気持ちは止めようがなかった。
だって、望めば…というか正確には、今のところ、彼女からアクションがあったときのみに限られるが、ハグだってできる。旦那以外に、彼女の柔らかで華奢な身体をこの胸に抱くことができるのは、俺だけだ…
その事実が、俺の彼女に対する気落ちに拍車をかけていた。
ある時、いつもどおり彼女との楽しいラインのやり取りをしている最中に、彼女が俺に初めて、家庭の不満みたいなものを漏らしたことがあった。
彼女はこうつぶやいた。「疲れました、遠くに行きたい…一人になりたい」と。
俺は思い切って、でも冗談めかしてこう返事をした。
「なんか、嫌なことでもありましたか?…俺もちょっと疲れてて…いっそ一緒に、遠くに行きますか?…あ、でも、それだと、一人になれないか…笑」
すると彼女はこう、返してきた。
「いいですね!どこ、行きます?日帰り?お泊り?もういっそ、沖縄とか北海道がいいです、何もかも忘れて遠くに…」
おいおい… 俺はため息をつく…
これは…寂しい独身男に返すべきではない冗談が過ぎる内容の返信だ…いつも、由良さんはこんなことを俺にいって、俺をこんなにも…惑わせる…
俺は一種の苛立ちを覚え、わざとこんな内容でラインを返す。
「それでは、どちらにしましょうか?俺は北と南、どっちも好きな場所なんでどっちでもいいですよ、白石さん、日程と行き先、自由に決めてください。」
彼女はこのラインで、少しくらい戸惑ってくれるだろうか…
俺をいつも惑わせ、寸前のところで我慢させ、俺を唯一、その魅力的な顔で、身体で、翻弄する人妻。
「…すみません…冗談が過ぎました。木下さん、ごめんなさい、でもまた食事には付き合ってくださいね。」
想像通りの、彼女の回答…ほらな…いつもこうだ。
こうやって彼女は俺をいつも翻弄し、俺がいざ、ヤバイ方向に話をわざと持っていこうとすると、すぐ、態度を翻す。
この部分については、彼女はとっても、ずるくて…ある意味、残酷だ…
でも、悲しい性分だが俺は、彼女の気持ちになるべく沿えるように努力する。怒らず、態度を変えずをモットーに。
「…ですよね。俺も冗談です。はい、食事にはまた、いきましょう。」そう、文字を打ち込んだ後、俺に少しだけ、心の中の悪魔が、ささやいた。
おまえ…いつもそんなんでいいのか…?
彼女にきわどい冗談でからかわれ、ハグしながらも気持ちを抑え…ずっと結局、彼女に…ある意味、利用され続ける。かわいそうな奴だな…まるで…拷問だ。
その悪魔のささやきで、俺の中の本性が目を覚まし、彼女に反撃する。
「白石さん…でもその後、また、ハグですよね…?ハグはまあ、いいんですけど、一応これでも俺…男、なんで…本当はその先を、つまり…キスとか…したくなったりしてます…あ、もちろん今抑えていますけど。だからもう、ハグは…やめますね。」
俺はそう、ラインを続け送信ボタンを押した。
完全に、一種の、賭けに出た。
これで由良さんが引くなら、それでもう、全て終了、変な期待はせずに、俺は身を引く…しかない。
もし彼女が引かないなら…その先は、俺にも…もはや、よくわからない
俺はそろそろ…甘美な拷問に耐えられなくなってきていたのだ。俺は勢いでラインして初めて、そのことを自覚した
彼女からの返事は…こう、だった。
「キス…までは、わたしの許容範囲内…です…」
え…?
え…嘘… うそうそ…!? 夢か…?
また、いつもの冗談か?
ドッキリ、とか…?!
俺は文面を何度も見返し、布団に突っ伏した。
つづく
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