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残業万歳
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ある日、俺は残業することになった。もちろん、時々は残る俺だが、基本的には明日に回せる仕事は明日に、をモットーに出来るだけ日々の残業を減らせるようにしている。
ただ、その日は違った。
午後から急に大量の仕事が舞い込んだ。しかも、明日、それに費やす時間を確保できる状況でもなく、俺はムカつくが、残業を余儀なくされた。
今日は久々に帰りに映画でも、観て帰ろうと思っていたのに、ちくしょう…
時計を見るともう既に17時すぎ。
俺はうなだれながら完全に残業を覚悟して、19時まで空いてる食堂兼売店に、間食用のパンやらカップ麺、栄養ドリンクを確保するべく向かう。
あ!…
売店に由良さんがいる。
「白石さん、お疲れ様です。今の時間にここにいる、ということは、もしかして、残業ですか?」
俺が尋ねると、
「ばれました?… というか、昨日も残業したので、なんだか疲れちゃいます…あれ?珍しいですね、もしかして、木下さんもですか?」と由良さん。
人に聞いたが、由良さんは時々だがやはり残業しているらしい。恐らく、俺より頻度はかなり多め。残っているからこそ、俺がよく定時に帰るのを目にしているに、違いない。
「え?昨日もだったんですか?…連続は辛いですね、あまり無理せず…帰ってくださいね」
俺はそう言いながら、久々の残業位で、イライラしていた自分自身に、喝を入れる。
由良さんに比べたら、今日の残業は大したことじゃない。いちいち文句垂れてないで、やんなきゃ。
「あ…はい。そうですね、なるべく、早く帰れるように頑張ります。じゃ、また…部屋で」と由良さん。
色々と買い込み、デスクに戻り、
その後、俺はかなり気合いを入れて仕事を片付けた。
気付くと…部屋には俺と由良さんと、もう1人しか残っていなかった。
時計を見ると既に19時半過ぎ…あーあ、もう、とても映画は無理だ… 俺は諦め、残りの仕事を片付けようとしていたら、「お先に!」ともう一人が部屋を出る。
気付けば、由良さんと二人きり…
とはいえ、フロアは広く、デスクはかなり離れているので少し緊張はしたが、そのまま仕事を続ける。
出来れば、20時迄には終わらせたい…その一心で。
20分ほどして、俺の仕事の終わりの目処がついた頃、由良さんがやってきて、俺の机にチョコレートを二つ置いた。
「良かったら、どうぞ…木下さん、まだ…頑張りますか?」
…この質問、どういう趣旨だろう?
由良さんは先に帰るけど、という意味かな?
俺は素直に答える。
「いえ、実はもう、ちょっとなんだか限界で…20時までにはあがろうかと…」
ん?…
彼女が心なしか、もじもじしながら俺の横に近づき、
「そうなんですね…あ、あの…木下さん、本当にもし、よかったらなんですが… この後どこかで、軽くごはん、食べて帰りません…?」…彼女が言う。
俺は、耳を疑う。
え?…ええっ!?
動揺しながらも、俺が由良さんからの誘いを、断るはずもない。
「いい、ですね…ぜひ!行きましょう!」
はやる気持ちを抑え、残務処理をする。
もはや、残りの時間は、何をしているのかわからないくらい、俺は浮き足だっていた。
残りは明日の朝でいいや、今やるとミスしそうだ。
俺は、まるで最初のデートのように、ウキウキしながら、デスク周りの片付けを始めた。
残業して良かった!そう、心から思った瞬間だった。
つづく
ただ、その日は違った。
午後から急に大量の仕事が舞い込んだ。しかも、明日、それに費やす時間を確保できる状況でもなく、俺はムカつくが、残業を余儀なくされた。
今日は久々に帰りに映画でも、観て帰ろうと思っていたのに、ちくしょう…
時計を見るともう既に17時すぎ。
俺はうなだれながら完全に残業を覚悟して、19時まで空いてる食堂兼売店に、間食用のパンやらカップ麺、栄養ドリンクを確保するべく向かう。
あ!…
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「あ…はい。そうですね、なるべく、早く帰れるように頑張ります。じゃ、また…部屋で」と由良さん。
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気付くと…部屋には俺と由良さんと、もう1人しか残っていなかった。
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気付けば、由良さんと二人きり…
とはいえ、フロアは広く、デスクはかなり離れているので少し緊張はしたが、そのまま仕事を続ける。
出来れば、20時迄には終わらせたい…その一心で。
20分ほどして、俺の仕事の終わりの目処がついた頃、由良さんがやってきて、俺の机にチョコレートを二つ置いた。
「良かったら、どうぞ…木下さん、まだ…頑張りますか?」
…この質問、どういう趣旨だろう?
由良さんは先に帰るけど、という意味かな?
俺は素直に答える。
「いえ、実はもう、ちょっとなんだか限界で…20時までにはあがろうかと…」
ん?…
彼女が心なしか、もじもじしながら俺の横に近づき、
「そうなんですね…あ、あの…木下さん、本当にもし、よかったらなんですが… この後どこかで、軽くごはん、食べて帰りません…?」…彼女が言う。
俺は、耳を疑う。
え?…ええっ!?
動揺しながらも、俺が由良さんからの誘いを、断るはずもない。
「いい、ですね…ぜひ!行きましょう!」
はやる気持ちを抑え、残務処理をする。
もはや、残りの時間は、何をしているのかわからないくらい、俺は浮き足だっていた。
残りは明日の朝でいいや、今やるとミスしそうだ。
俺は、まるで最初のデートのように、ウキウキしながら、デスク周りの片付けを始めた。
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