【BL・R18】運良く異世界転生できたが、俺の結婚相手が男って…マジですか?

もえこ

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ダンスの間

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「…リンス様…リン…スお嬢様…」

ハッとする。
ウェンリーの睨みつけるような視線に気を取られて、俺はすぐ後ろから誰かに声をかけられていることに気付かずにいた。

「はっ…い、…?」
振り向くと、一人の男性… 茶髪の…申し訳ないがこれと言って特徴のない男…。

現世ではきっと、ただの、「良い人」と、形容されるであろう容姿…でも、人の良さそうな男だ。

俺のこの異世界における登場人物の男、三人目…
どんな奴だ…少し構える。

「リンス様…もし…もし・・・っもし…っよろしければ、わたっ…わた…私…と踊っていただけませんか…?」

カミ過ぎ…でも、なんだか一生懸命で好感が持てる…

ついに恐れていたことが起きた…
俺にこの…世界の、優雅な…あんなにもかろやかなダンスは踊れない…。
この、優しそうな男子には申し訳ないが、断る…しかない。

「あっの…本当に…光栄なのですが、今日はちょっと…」

回答が、頭で考えるより先に、口から出る。

もしかしたら…このリンスお嬢は、めちゃくちゃダンスが上手いかもしれない…。
だからとりあえず、今日は…って含みを持たせて拒否をした方が無難だ…
咄嗟にそう思ったからだ…。

「あ…そう…ですか…ではまた次回にでも…」
よほど勇気を振り絞ったのか、しょんぼりと項垂れて去っていく男…   

悪い…

さすがに無理だ…この状況で踊ったら、スカートをビリビリに破いてしまう自信がある…。

そのしょげた男の背中をぼんやり見送っていると、
「お姉様…どうされたの…?
今、せっかくのダンスのお誘いをお断り…したのかしら…?」

フェイルが、ウェンリーとともにダンスを踊り終えて戻ってきた。

「ええ…今日はちょっと…」

さっきの男に対して言ったことと、同じように言ってみる。

「まあ…もったいない…。せっかくの出会いの場、もっと大切にしないと駄目ですわよ、お姉様…ねえ、ウェンリー様」

ウェンリーは口をつぐんだまま私を一瞥する。
さっきの視線はなんだったのか… 
   本当になんだか、怖すぎた…

「…そうですね、せっかくの機会だ…どうです、リンス様…私と踊っていただけませんか…?」

だから無理だって…

俺は全く踊れない…
裾を何度も踏むのがオチ…

「あ…すみません…今日は…ちょっと…」

まだ、話している最中に、ウェンリーにぐいっと…強引に手を引かれる。

「…大丈夫ですよ、少しだけだから…」
あっという間に、ホールに連れて行かれる。

壁際で呆気に取られているフェイル…
その表情が、みるみるうちに、

      はんにゃに変わる…

こえー、こえーよ…

女…女の嫉妬は多分一番ヤバい… 
なんてこと、してくれるんだ…
この強引な、ウェンリーって男は…

ぐいっと腰を引き寄せられ、「!?」
  言葉を失う。
「安心して…私に身を任せてください…」
耳元で囁くウェンリー…

ああ

 もう、どうにでもなれ…

 
  俺は奴に、とりあえず体を傾けた。







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