一部、いただいちゃいます。

事件

４

「…　…　…　」

男がゆっくりと俺の…ほぼ、一メートル以内に近付いた。

俺は、思わず息を飲む…。

殺人鬼…　
コイツがあの…何十人もの民間人を殺めた連続殺人鬼なのかと思うと…ソイツが今…俺の目の前に居るのかと思うだけで、眩暈がしそうだ…。

フードで、やっぱり男の顔の全体像は見えない…　

にったりと笑った唇だけが、奇妙に目に映る…　

声からして、男だと言うことは間違いないが、決して大柄な男ではない…　
完全に俺より、身長も横も、小さいだろう…

「ふふ…あんた何、ジロジロ人のこと見てんの…？さっすが警察官だね…一応、犯人像の分析にかかってるんだね…でも、どうせ死ぬんだから無駄だって、言ってるだろう…往生際が悪いんだね…まあ、いっか…そうそう、種明かしだったね…？」

「…　…　…　」何ひとつ、言葉が出てこない…思考が停止してしまったかのようだ…

「それはそうと、警察は、どこまでつかんでる…？殺された奴がどういう奴らとか…犯人はどうとか、なんか少しくらいは情報あるの…？なんかつかんでる…？」

「…　…　…　」何もない…　何一つ、つかめていない…

被害者達には何の共通点もない。
そして前科、前歴もない…　
強いて言えば、きわめて善良な人間…聞き込みをした限りにおいて、人に恨まれるような点は一切見当たらなかった人間…ばかりだった…。

「…ふーん…その調子だと、全然…みたいだね…ほんと、無能だな…警察って奴はさ…」

「…　…　…　」言い返すことすら、できない…確かに何も…つかめていないからだ…

「ほんと、なんも喋らなくなったね…もういいや…とりあえず、ヒント出そうか？」

「…　は…　？」

「あんたは一応警察だからさ…ヒント、出してやるよ…答えられたらあんたのその命…救って…んー－いや、それは無理か…まあ、とにかくもう少し、楽しもう…ヒント、出してあげる…。」

「…　…　…　」
この男は…楽しんでいる…　

殺人を…まるで、何かのゲームのように…　そう、思った…。