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事件

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「… … …」

「あれ~~ どうしちゃったの…?声、出せなくなっちゃった…?」

フードの男が…遠目でもニヤリと笑っているのがわかる…。

誰だ… 

一体、なんのために… 俺を…襲った… ?

考えたくないことだが、もし…あの男が例の殺人鬼だとすれば…
とりあえず…ソイツが男であることだけはわかった…。

だが…そうだとわかったところで…
俺は果たして…ここから、生きて帰ることが出来るのだろうかという気持ちが、うっすらと、してくる…。

ガチャ… ガチャ…

拘束から必死に逃れようとしても、全くほどけない鎖…
恐らく、どう頑張ったところで、この鎖を外すことはできないだろう…

口頭で、説得するよりほかない…
とにかく、奴の素性を… 正体を知りたい… 

もしも、奴の正体と目的がわかれば… 何か…ここから逃げ出せる手立てが…
そして、奴を捕獲する手立てが…その、ヒントがつかめるかもしれない…

「… お、まえは… …誰、なんだ… ?…」声が、震える…

「ひひっ… !」男がおかしな声を、発する。

思わず見つめると、今度はパンパンと大仰に手をたたき始める…。

「…  な、んだ… おまえ、… 」

「ひっ… ひひひっ…はははっ… !! もう最高、面白いんだけど…」

「…何が、…」

「今まで俺がやってきた人、全てにおいてだよ…ほんと、すごい確率なんだけど…」

「… … …」
俺が黙っていると、今度はくくくと…男が含み笑いを漏らす…。 

「もう完全に全員がさ、100パー、おまえは誰だって…聞いてくんだよ… マジで、意味ないことなのにね…」

「… どういう、意味だ… 」

今、全員と言った…  俺がやってきた、全員と…確かに男はそう言った…。

つまり、そうなのか…?
やはりこいつは…この男は… 本当に最悪なことだが、間違いなく、例の…?  
あの…連続殺人事件の…犯人だと、いうのか…  

やがて、俺の背中に… 生温かな… 嫌な汗が、伝い始める…。

俺は、決して、ただの一般市民じゃない…
守られるべき、無防備な…素人…一般市民じゃない… 

大丈夫だ… きっと、大丈夫…
俺が、ここで死ぬなんてことは…ない… 

こんなところで…?まだ、この歳で…?? 死ねるわけがない…
やり残したことがまだ、山のようにある…

しかも、俺は警官だ…警察官だ… 

コイツが仮に、本当に…例の、殺人鬼だったとしても…
きっと何か方法はある…  コイツの求めているモノはなんだ…
何か、ヒントはないか… 

俺は、初めて感じた恐怖に恐れおののきそうになる自分自身をまるで無理矢理に鼓舞するかのように…
一旦ゆっくりと、目を閉じた…。








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