【完結(番外編)】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~二人~

能動

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「んっ…  ん… 杉…崎  さ、…ん、…んっ…!」

苦しい…

息ができないくらいに隙間なく、杉崎さんの唇が私の唇に押し付けられる…。

背中を抱かれるようにしながら横を向く形になり杉崎さんの胸板が私の胸にぴたりと触れて恥ずかしさが増す…。

「… んっ… 」

ようやく唇が離れて、私は杉崎さんを見上げる…。

「… あの… …」思わず、声が出た。

「… ごめんね… 水無月さん… 」
杉崎さんの濡れた唇が目に映り、なぜだかずきりと胸が痛む…。

「… … やっぱり… … 私の…せいで… 」

「 違う …全然違うよ。 」

「だって、私が何も… …しない…から… 」

「…いやいや…本当に、違うって…」

「… … …」

杉崎さんは否定するが…杉崎さんはいつも優しい…。
本当のところはどうなのかわからない…。

「君が、マグロ…とか…なんでそんなことを…?…ていうか、水無月さんの口からまさかそんな言葉が出るとは…思いもしなかった…驚いたよ、本当に…でも、意味…本当にわかってる…?」

杉崎んさがクスリと笑って私を見るその瞳が、あまりに優しい…。

「わ…わかって、ます!もちろん… その…始終…受け身で…何もしない女性を…指す…んですよね…」

雑誌でも見たことはあるが…
拓海から、そのキーワードを聞いたことがあるなどとは、口が裂けても言えない…。

「…ん…受身、ね…まあ、そういう風に言われてはいるけど…そもそも俺は…そんなことを微塵も思ってないよ。」

「…嘘… だって… 」
さすがに、このまま杉崎さんの顔を見ながら続けることができない…私は反射的に下を向く…。

「… ん… ?」

「だって… その… 途中で…やめるって… わ、私は… まだ… 」

「… ん… まだ… ?」

「… まだ… その… 」

「… うん…まだ…何…?」
頭上から降りてくる杉崎さんの声に、ほんの少しの含みを感じた…

何だろう… 

言わされている…?

じわじわと恥ずかしさが込み上げてきて、私は途端に口をつぐむ…。

「… や… なんでも、ないです… 」

横抱きのような体勢のまま…杉崎さんが私の髪に、さらりと触れた…。
その指の感触でさえ、愛おしいのに… どうして…

「…ごめん… 水無月さんの反応が可愛くて…意地悪した…俺、かなりの性悪だな…自分自身に引く。」

「… … … 」

「…俺がなんで途中で…やめたか、わかる…?」

「…いえ… でも…やっぱり私が… 私に、魅力が… 足りない… とか…ぁっ… 」

いきなり… 杉崎さんに手を掴まれて運ばれたその先…

どくどくとした、熱を感じた…。

「あっ… やっ… 」
少し力を加えて押さえつけるかのように、杉崎さんが私の手を自身のそこにあてがう…。

     熱い… なんで…

「 … ほら…わかる…?…やめるって言ったけど…、俺は今だに…こんな状況だよ…?」

「… っ… …」

「本音は…君を抱きたくて、仕方ない…でも、ね…今日はちょっと精神的に不安定…だから…」 

布地の上からでもわかる…
杉崎さんの堅く…逞しく…熱いその部分が…私の指が触れた瞬間にびくんと震えた気がした…。

明らかに屹立しようとしているそれを…なんとか布地が抑えつけているような状態…

余計に、意味が分からなくなる…。

杉崎さんの欲望がなくなったわけでは、ないということ…?

それなのに、なんで…

杉崎さんの言うことを言葉通り信じれば…
私が受身なことに、嫌気を指したわけではなさそうだけど…じゃあ、どうして…?

杉崎さんはこんな風になっているのにも関わらず なぜ突然、今日はやめておこうなんて言ったの…?

「 … どう、して… ?」疑問が、そのまま口に出た…。

「 …んー… それはまあ、また今度…説明できたら、しようかな… でもまあ、とにかく今日は…」

その返答を聞いて、私は意を決した…。
説明もしてくれない… 
でも…モヤモヤする気持ちを抱えたまま…このまま、杉崎さんと離れたくはない…。

「…嫌、です…それなら…もういいです…教えてくれないなら…今日は私が…杉崎さんの、を… 」

「 …えっ …?」

私にだって…
女にだって…欲望はある…。

今日は、引くことが出来ない…受け身ではなく、自分のしたいように、あくまで能動的に…

      私は静かに身体をずらし、杉崎さんのベルトに手を掛けた…。





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