1 / 26
〜二人〜
朝
しおりを挟む
「おはよう、水無月さん」
「あ…おはよう、ございます。」
朝、給湯室で背後から…
もはや、間違えようのない…愛しい…彼の、優しい声がした。
振り返ると、彼の眼差しが瞬時に私をとらえる。
「… あ…あの… 」
「… ん…?」
不思議そうな彼の瞳の中に、私は即座に包み込まれる。
駄目だ…
何も、言葉が出てこない…。
確かに今…目が合った…のに…
真っすぐ彼を…見つめ返すことが出来ない…。
私は反射的に、視線を自身の持つマグカップに移す。
心臓がバクバクと鳴っている気がする…
どうして私は、いまだに…
こんなにも… 彼を…
杉崎さんを前にすると、緊張してしまうのか…
こんな素っ気ない態度を取りたいわけではないのに…なぜだか、恥ずかしくて仕方ない…。
「…あ…すみません、退きますね…もう少し、で…」
「おっと、…退かなくていいよ、ちょっと奥に行ってもらえれば…ね…?」
「えっ …あっ …杉… …っ…」
給湯室の入口の、右奥…
壁で全く見えない場所に、杉崎さんが私を指で、そっと追いやる…。
給湯室の機械本体の目の前…入口からは、そこに誰がいたとしても全く見えない場所だ…。
そんなことを職場でされたことのない私は、
いつにも増して驚いて思わず声を上げてしまう…
「あ… あの… 杉崎さん…っ…、人が… …」
「…大丈夫…まだ、誰も来ていない…俺も珈琲淹れるから…しばらく、そこにいて…」
甘く…囁くような声が、私の耳をくすぐる。
杉崎さんが悪戯っ子のような顔で笑いながら、珈琲を淹れる作業を隣で盗み見る…。
もう…無理だ…
なんて、綺麗な横顔で…
なんて、魅力的な人なんだろう…。
なんでこんな人が…こんな素敵な人が…
私を…?
私みたいに何のとりえもない人間を、好きに…
好きになって…くれたんだろう…
もはや、感謝しかない…
そう… まるで、夢… 夢のよう…
考えている最中に、
杉崎さんがとても小さな声でつぶやいた…。
~お知らせ~
こちらのお話は、既に完結済の小説「ほかに相手がいるのに」の、本編、続編に続く3作目となります。
よろしければまずそちらをご覧いただけると嬉しいです。
「あ…おはよう、ございます。」
朝、給湯室で背後から…
もはや、間違えようのない…愛しい…彼の、優しい声がした。
振り返ると、彼の眼差しが瞬時に私をとらえる。
「… あ…あの… 」
「… ん…?」
不思議そうな彼の瞳の中に、私は即座に包み込まれる。
駄目だ…
何も、言葉が出てこない…。
確かに今…目が合った…のに…
真っすぐ彼を…見つめ返すことが出来ない…。
私は反射的に、視線を自身の持つマグカップに移す。
心臓がバクバクと鳴っている気がする…
どうして私は、いまだに…
こんなにも… 彼を…
杉崎さんを前にすると、緊張してしまうのか…
こんな素っ気ない態度を取りたいわけではないのに…なぜだか、恥ずかしくて仕方ない…。
「…あ…すみません、退きますね…もう少し、で…」
「おっと、…退かなくていいよ、ちょっと奥に行ってもらえれば…ね…?」
「えっ …あっ …杉… …っ…」
給湯室の入口の、右奥…
壁で全く見えない場所に、杉崎さんが私を指で、そっと追いやる…。
給湯室の機械本体の目の前…入口からは、そこに誰がいたとしても全く見えない場所だ…。
そんなことを職場でされたことのない私は、
いつにも増して驚いて思わず声を上げてしまう…
「あ… あの… 杉崎さん…っ…、人が… …」
「…大丈夫…まだ、誰も来ていない…俺も珈琲淹れるから…しばらく、そこにいて…」
甘く…囁くような声が、私の耳をくすぐる。
杉崎さんが悪戯っ子のような顔で笑いながら、珈琲を淹れる作業を隣で盗み見る…。
もう…無理だ…
なんて、綺麗な横顔で…
なんて、魅力的な人なんだろう…。
なんでこんな人が…こんな素敵な人が…
私を…?
私みたいに何のとりえもない人間を、好きに…
好きになって…くれたんだろう…
もはや、感謝しかない…
そう… まるで、夢… 夢のよう…
考えている最中に、
杉崎さんがとても小さな声でつぶやいた…。
~お知らせ~
こちらのお話は、既に完結済の小説「ほかに相手がいるのに」の、本編、続編に続く3作目となります。
よろしければまずそちらをご覧いただけると嬉しいです。
20
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身
青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。
レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。
13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。
その理由は奇妙なものだった。
幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥
レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。
せめて、旦那様に人間としてみてほしい!
レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。
☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。




どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる