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~拓海~
温室
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「…おっ… 良かった…」
まばらだが、いくつかベンチが開いていた。
裏庭といっても完全なる屋外ではなく、天井が透明になっただけの、温室のような空間。
ところどころにでっかい植物が植えられていて、なんとなく落ち着く癒しのような空間だ。
寒い冬の時期に、いちいち外に出るのが嫌だという社員は、割とここで、コンビニ弁当などを食っていたりする。
「さて、瑠衣の… 」
サクランボ柄の風呂敷包みをあけ、弁当の蓋を開ける。
「… うわ… す、げー… うまそう…」
唐揚げに卵焼き、タコだかカニだかの、なんだか可愛らしいウインナー。
ほうれん草のおひたしに、これは…肉じゃがだろうか…。
マジで、いつの間に作ったんだろう…。
昨夜、瑠衣が持参した手作り総菜だといっていたものとは多分、一切かぶっていない。
もしかして、俺が寝てる間に起きて、自宅に戻っていそいそと作ったのだろうか…。
準備して家を出る時キッチンあたりを見たが、特に汚れている様子はなかったので、きっとそうに違いない。
「いただきます…。」
朝飯も食べていなかった俺は、相当空腹だったのもある。
だけど…とにかく…
「うっ…ま…瑠衣… すげーー…」そのおかずが美味くて、思わず、独り言をつぶやく。
原田さんに貰った栄養ドリンクだけで午前中を凌いだので、見栄えの良い…そして、
味もイケてる瑠衣の手作り弁当に、ある種の感動を覚える。
とてもじゃないが、いそいそと弁当を作りそうなキャラには見えない。
少し派手目、露出多めの服装に、あの性格…。
包丁を握ったことはありませんと言われても、全然不思議じゃない瑠衣の、あのキャラ…。
むしろ、葉月の方が見た目的には、凝った手作り弁当を作りそうな女性に見えるのに…。
葉月は弁当は持参していると言ってはいたが、普段そこまで凝った料理はしない気がする…。
両親に愛されて育った、温室育ちの葉月。
かたや、自由奔放、そう言えば瑠衣から家族の話なんて聞いたことがないことに気付く。
「…人はみかけによらんな… うま… 」
もぐもぐと食べ進みながら、ぼうっと空を見上げる…。
「ああ… もう、きっと…ダメなんだな…」
葉月のこと… 俺の申し出に、葉月は完全にNOという結論を出した。
そしてあの男。杉崎とのあの夜。
一対一の対面で、俺は決定打を打たれた気分だ…。
あの男の、あんな顔は見たことがない…見たことがなかった。
あんなにも、余裕な顔で、笑っていたくせに…。
俺がどんな発言をしても、さらりとかわし、笑っていたくせに…。
林さんと、葉月と…俺と4人で食事をしていた時の笑顔の杉崎からは全く想像できない眼で、奴は俺を見た…。
そして、告げた。
葉月に金輪際、近付くなと…葉月をひどく傷付けたおまえに、もう二度と葉月は渡せないと…
きっと… いや、多分確実に…
葉月はあの男に、俺とのことを話したのだろう…。
葉月の性格から、とても話しているとは思えない一方で、杉崎の発言から、そう思わないではいられない…。
「… ああ …終わった、な… 」
残りの唐揚げを、ゆっくり口に含んだ瞬間だった。
「…終わり… やっぱりそうか…そう、なんだな…」
「ぐ、む、ぐっ … ん、、げほっ …げほげほげほっ …!」
なんでまた、ここにまで…?ストーカーかよ!?
俺の目の前に… バカでかい影が、かかる…
「… あ、驚かせたかな… 隣、いいかな… 」
笠村だ… もはや、課長なんて肩書はつけてやらない。
良くない、良くないっ!!と、口内に唐揚げを含んだまま、呆然と奴を見上げぶんぶんと首を振るが、
奴は構わず、俺が座ったベンチ横のスペースに所狭しに座る。
どこが、いいかな…?だ…
こっちが返事もしてないのに堂々と座る、勝手な男…。
「… もぐもぐもぐ… 」恨みがましい眼で、奴を睨む…。
「ちょっと、話したいことがあってね…」
話したい、こと…?
人の貴重な、物思いにふける時間を…ランチタイムを邪魔しやがって…
だが、どうにも…なんか…怖い… 仕事のことなのか…?
それとも、別件か…?
怖い…そう思うのは、俺の気のせいだろうか…
俺は唐揚げをかみ砕きながら、なるべく男の方を見ないように正面を見据えた。
まばらだが、いくつかベンチが開いていた。
裏庭といっても完全なる屋外ではなく、天井が透明になっただけの、温室のような空間。
ところどころにでっかい植物が植えられていて、なんとなく落ち着く癒しのような空間だ。
寒い冬の時期に、いちいち外に出るのが嫌だという社員は、割とここで、コンビニ弁当などを食っていたりする。
「さて、瑠衣の… 」
サクランボ柄の風呂敷包みをあけ、弁当の蓋を開ける。
「… うわ… す、げー… うまそう…」
唐揚げに卵焼き、タコだかカニだかの、なんだか可愛らしいウインナー。
ほうれん草のおひたしに、これは…肉じゃがだろうか…。
マジで、いつの間に作ったんだろう…。
昨夜、瑠衣が持参した手作り総菜だといっていたものとは多分、一切かぶっていない。
もしかして、俺が寝てる間に起きて、自宅に戻っていそいそと作ったのだろうか…。
準備して家を出る時キッチンあたりを見たが、特に汚れている様子はなかったので、きっとそうに違いない。
「いただきます…。」
朝飯も食べていなかった俺は、相当空腹だったのもある。
だけど…とにかく…
「うっ…ま…瑠衣… すげーー…」そのおかずが美味くて、思わず、独り言をつぶやく。
原田さんに貰った栄養ドリンクだけで午前中を凌いだので、見栄えの良い…そして、
味もイケてる瑠衣の手作り弁当に、ある種の感動を覚える。
とてもじゃないが、いそいそと弁当を作りそうなキャラには見えない。
少し派手目、露出多めの服装に、あの性格…。
包丁を握ったことはありませんと言われても、全然不思議じゃない瑠衣の、あのキャラ…。
むしろ、葉月の方が見た目的には、凝った手作り弁当を作りそうな女性に見えるのに…。
葉月は弁当は持参していると言ってはいたが、普段そこまで凝った料理はしない気がする…。
両親に愛されて育った、温室育ちの葉月。
かたや、自由奔放、そう言えば瑠衣から家族の話なんて聞いたことがないことに気付く。
「…人はみかけによらんな… うま… 」
もぐもぐと食べ進みながら、ぼうっと空を見上げる…。
「ああ… もう、きっと…ダメなんだな…」
葉月のこと… 俺の申し出に、葉月は完全にNOという結論を出した。
そしてあの男。杉崎とのあの夜。
一対一の対面で、俺は決定打を打たれた気分だ…。
あの男の、あんな顔は見たことがない…見たことがなかった。
あんなにも、余裕な顔で、笑っていたくせに…。
俺がどんな発言をしても、さらりとかわし、笑っていたくせに…。
林さんと、葉月と…俺と4人で食事をしていた時の笑顔の杉崎からは全く想像できない眼で、奴は俺を見た…。
そして、告げた。
葉月に金輪際、近付くなと…葉月をひどく傷付けたおまえに、もう二度と葉月は渡せないと…
きっと… いや、多分確実に…
葉月はあの男に、俺とのことを話したのだろう…。
葉月の性格から、とても話しているとは思えない一方で、杉崎の発言から、そう思わないではいられない…。
「… ああ …終わった、な… 」
残りの唐揚げを、ゆっくり口に含んだ瞬間だった。
「…終わり… やっぱりそうか…そう、なんだな…」
「ぐ、む、ぐっ … ん、、げほっ …げほげほげほっ …!」
なんでまた、ここにまで…?ストーカーかよ!?
俺の目の前に… バカでかい影が、かかる…
「… あ、驚かせたかな… 隣、いいかな… 」
笠村だ… もはや、課長なんて肩書はつけてやらない。
良くない、良くないっ!!と、口内に唐揚げを含んだまま、呆然と奴を見上げぶんぶんと首を振るが、
奴は構わず、俺が座ったベンチ横のスペースに所狭しに座る。
どこが、いいかな…?だ…
こっちが返事もしてないのに堂々と座る、勝手な男…。
「… もぐもぐもぐ… 」恨みがましい眼で、奴を睨む…。
「ちょっと、話したいことがあってね…」
話したい、こと…?
人の貴重な、物思いにふける時間を…ランチタイムを邪魔しやがって…
だが、どうにも…なんか…怖い… 仕事のことなのか…?
それとも、別件か…?
怖い…そう思うのは、俺の気のせいだろうか…
俺は唐揚げをかみ砕きながら、なるべく男の方を見ないように正面を見据えた。
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