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~智花〜

別れ

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「またね…修哉さん…」

一人、ぼそりと呟く。

テーブル上に置かれたままの、空の珈琲カップをぼうっと見つめる。

終わった… 

遂に、終わってしまった…

もちろん、予想はしていた。

わざわざ彼が私に会いに福岡に来るくらいだ…
きっと、別れ話だろうとは、思っていた。

思っていたけど…

「はあっ… … 」重いため息が漏れ出てしまう…。

なんだか、疲れた…ものすごく、疲れてしまった…。

最後の晩餐ならぬ、最後のランチ…

せめて、最後くらい…お茶ではなく、修哉さんと一緒に食事をしたい…。

そう思って、ランチを提案したのは私…。

だけど… 正直… 
あまり、味がしなかった…。

それは当たり前のことかもしれない…
少なくとも、楽しいランチではなかった。

いつ…修哉さんが別れ話を切り出すかもしれない状況下…

そんなおかしな緊張のせいで、ランチの味など…味わう余裕がなかった…。

「…あ、すみません…オーダーいいですか?」

「はい!」近くにいた従業員の女性に声を掛ける。

「すみません…珈琲のおかわり、いただけますか…?」

「かしこまりました、こちら、お下げしますね。」

「はい。」

ついさっきまで、修哉さんの座っていた場所…。
テーブルの上が片付いていくさまをぼうっと見つめる。

「ああ… 馬鹿だな、私… 」思わず、独り言を吐き出す。

「馬鹿、ですね…間違いなく…くくっ…」
小さく、低い声が聞こえた…。

「 え っ…!?…」
 
     耳を、疑った…。

思わず、声がした方…後ろを振り返る…。

「…なんで…ここに…!? 三橋…くん… 」

「…いやいや、こっちのセリフですよ…てか、仕方ないか…俺らが後に座ったし…すんません、立ち聞き…いやいや、座り聞きなんて、するつもりはなかったんすけど…席、案内されちゃった後に、気付いたもんで…」

「…いつから…、い…いたの…」

「だから…最初から…あ、でも俺も人といたんで…細かくは聞いてないっすよ…全然…」

「…最っ、低…」
思わず、言葉を吐き捨ててしまう…。

こんな場面を見られるなんて…

よりにもよって…

彼氏にフラれる瞬間を同僚に…三橋君に見られるなんて…

   最低なタイミングだ…  

      そう、思った…。 





~智花のその後~

ボチボチ更新いたします。
よろしければ、引き続きご覧ください。
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