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~杉崎~

本音

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『はい、…もしもし、』電話の向こうから聞こえる、彼女のくぐもった声ですら愛おしい…。

「もしもし、こんばんは、水無月さん…ごめんね急に、電話…しちゃって。」

『いえ、全然…その…嬉しかったです…あの、お疲れ様です…』

「あ、ああ… おつかれ、さまです…」

      おつかれ、さま… ?

まるで、仕事の挨拶だ…しかも俺まで、彼女につられてしまった。 

「 ははっ… 」

思わず、笑ってしまった。

『えっ…?』

「いや、…あまりに…かしこまってるなって、思って…」

『…です、よね…ごめんなさい…!もっと…あの、普通に…しますっ…』

真面目な彼女が、正座をしたような格好で宣言する様子が、目に見えるようだ…。

「いやいや、そんな宣言…しなくっても…ごめんね、俺がただ…」

『…はい…?』

「…急に…水無月さんの声を、聞きたくなっただけ…だから…」

『… 私… …思って、… ました… 』ぼそりと…小さな声で彼女が呟いたが、聞こえなかった俺は、

「…え…ごめん、なんて、言った…?」もう一度、声を掛ける。

『…私も…同じようなことを…思ってました…だから、嬉しいです…』

その言葉を聞いて、俺の気持ちは舞い上がった…

いや、きっと…
舞い上がり過ぎたのだろう…。

「…水無月さん… 好きだ… 」

その言葉で、とどめておくべきだったのに…

あろうことか、俺は… 馬鹿な、俺は…

「今…君を抱きたくて、たまらない…」

こんな言葉を…    おそらく…  
心の奥底に潜む本音を、口走ってしまった…。 

『… …っ …』
彼女が息を飲む音が、聞こえたような気がして、我に返る…。

今、俺は何と言った…?

俺は、馬鹿か…  
馬鹿、なのか… 
いや、100パーセント馬鹿、だな…。

せめて、好きで、止めておくべきだった…

そしてせめて、抱き締めたくて、たまらないと…言うべきだった…。

俺が発した言葉は『抱きたくて、たまらない』

抱く…それはつまり、
セックスしたくてたまらないと言っていることに、ならないか…

いやむしろ、そうとしか取れないだろう…。

電話が叶ったからといって、
早速、なんという言葉を彼女に告げているんだ、この俺の口は…

恋をすると…
  どうやら思考が、馬鹿になるらしい…

俺は焦りながらも、

うまい訂正の言葉を、フル回転で探し始めた…。



































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