【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~杉崎~

充電

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俺の質問に対し、
彼女は結局、何ひとつ語らなかった。

苦し紛れに、俺が彼女にあげたデザートの話を持ち出し、その場を乗り切った。

俺が少し前からあの場に居たことを知らずに、泥棒猫などと言われたことを俺に一言も言わずに…
何事もなかったかのように演じる彼女を、いじらしいと思った。

いっそ、全てを俺にぶちまけてくれて良いのにと思う一方で、
実に、彼女らしい対応だなと思ってしまったからだ。

きっと、女性のタイプによっては…

自分に危害を加えてきた相手について…

こんなことを言われた、
あんな風に責められて、とても辛かったと、
自分がされた嫌なことの詳細を…その時の気持ちを、そのまま男に聞かせ、感情を爆発させ…自分自身の身を守る反面、相手を貶めることに専念し…

ある意味で、その対処を…その救済を、男に委ねる人間もいるだろう…。

でも、やはり彼女は違う… やはり、思った通りだ…。

性格の根っこ…
もともと、彼女の中に、そういった気質は持ち合わせていないのだろう…。
むしろ、自分の中だけでなんとかことを納めようとし…なるべく、荒波を立てないように…誰かが一方的に責められることのないように配慮する…してしまう…つまり、角度を変えてみれば、とても損な性格…。

今回彼女が俺の質問に対し口をつぐんだことは、俺にとって妙に納得が出来るもので…
だからこそ、彼女を守りたい…。
だからこそ、どうしようもないほどに…俺は…彼女のそういうところが好きなのだと思えた。

一通り話を終えた後に彼女は時計を見て、慌てたように部屋に戻ろうと言いながら、ドアに手を掛けた。

だが、俺は彼女を引き止め、背後から思い切り抱き締めた…。

彼女の温かな体温…柔らかな感触…そして、彼女の甘い匂いが俺を心からほっとさせる…。

        充電したい…

そう…なんとか、その場しのぎの言葉を伝えたが… 

本当は、彼女を背後から振り向かせて、キスをしたいと思っていた…。
今すぐ、唇を、塞ぎたい…  
舌をからめて、彼女が頬を赤らめる様子…そして、俺のキスに溺れて、とろけていく彼女の表情を見たい…

      …そう、思ったが…

ここは職場だ…  そして、昼休みも、もう終わる…  

こんな場所でそんなことをすれば、
ただでさえ、細野さんの言葉でダメージを受けている彼女を、更に動揺させるに違いない…

俺はなんとか自分自身の欲望を内に抑え込み、
    彼女を抱き締める腕に、力を込めた…。










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