【続編 ほかに相手がいるのに】

～杉崎～

予感

「あ…　…　」

ほんの一瞬だけ…　　近付いて、声を掛けようか迷った。

だが…わざわざこんな人気のない場所を選んで食事をしているのには、それなりの理由があるだろう…。
彼女のあの、気を遣い過ぎる性格…。
勤務時間中は神経が張りつめていて…かなり緊張しているのかもしれない。

食事の時間くらいは一人になりたいと考え、この場所に来ている可能性が高い。

実は、俺自身が度々一人になりたいときに来ていた場所でもあり、なんとなく、その気持ちはわかる気がした…。

彼女を初めてその場所で見かけた日…俺は結局彼女に声を掛けることなく、部屋に戻った。
そして今も…彼女の邪魔をしないよう、そこには寄り付かないようにしている…。

「…　…　…」

　　　　それにしても、遅い…。

こんなに気になってしまうとは…俺は、大丈夫だろうか…
これではまるで、軽いストーカーだ…。

彼女は今日もそこにいるのだろうか…それとも、外にランチに出かけたのだろうか…
そういえば、冷蔵庫の中身が消えていたから、やはりあの場所か…？

実は…
ついさきほど、細野さんが部屋に来たのが少し引っかかっている…。
彼女が水無月さんを探しているというので、小さなバッグを持って出たよと、見たままの状況を伝えたのだが…

ふと、後になって…妙に気になった…。
あの二人は…あまりにタイプが違い過ぎる…。
なぜわざわざ細野さんは、水無月さんの元に行こうとしていたのだろうかと…。

そういえば、前に…細野さんは、俺と彼女の出張について、詳しく聞きたがっていた。

まさか…細野さんは…

そのことを彼女に聞くために…
あるいは、俺と彼女の関係性を、根掘り葉掘り探るために…
今日、彼女に接触しようとしているのではないか。　

俺は、なんとなく嫌な予感がして、
　まず真っ先に、あの場所に向かったが…　

…残念なほどに、その嫌な予感は的中した…。