【続編 ほかに相手がいるのに】

～拓海～

質問攻め

しばらく、無言のままでいた俺に、智花は容赦なく続ける。

「…ねえ、…拓海さんの方はどうなの…水無月さんとは順調にいってる…？ここ最近で、何か…変わったことは…？」

「…えっ…　と…　」矢継ぎ早に聞いてくる智花…。

改めて顔を見て、美人だと思う…。
葉月とは違う、華やかさ…　
メイクの力なのかもしれないが、やはり葉月とは系統が違う華やかな雰囲気の美しさを備えている…。　

いや、そんなことを考えている場合ではない…。
言葉の速さに、智花の焦りを感じた…。

瑠衣が、いつトイレから戻ってくるかわからない状況だから当然か…。

いつもの俺だったら、こんなことを第三者に、こんな風に不躾に聞かれれば、
そんなことをあんたに言われる筋合いはないとブスッとした表情をして、答えるに違いない…。

だけど…　今回ばかりは、そうは言えない…。
どうしたって、強気になれない…。

瑠衣との関係性も暴露した…。

もはや、智花の目には…　
俺は、1年にも満たない期間ですら遠距離恋愛を続けることが出来ない、いやらしい裏切者に映っているに違いないのだから…。

「あ…　えっと…　実は、ですね…」言葉をなんとなく紡ぎながら、頭の隅で思う…。

もう、色々隠したって仕方ない…。
もはや、俺の部屋はここだと、バレているのだ。

智花がその気になれば、俺に連絡を取ろうとしてくることだってできるし、こんな風に、瑠衣と一緒に突撃訪問してくることだって可能なのだ…。

ああ…もう、いいや…。
無駄無駄…　すべてが、無駄な抵抗だ…。

「…　うちも、そっちと同じですよ…　同じ…　」
態度が、少しぶっきらぼうになってしまった。

「　…　同じ…　？」

「同じです…　俺も…ちょっと前に、葉月に話があるって言われて…時間作って、こっちに来るって言われてて…」

「　え…　…　？」

「アイツ…　前に話しましたっけ…？飛行機、めちゃくちゃ苦手なんですよ…少なくとも、好き好んで乗ることはない…。しかも一人で…　わざわざ話があるって、福岡に来るって…ある意味、異常事態っていうか、なんていうか…　」

「…　…　…　」

途端に、無言になる智花に…　その先、俺の言葉は、止まらなくなってしまった…。

誰かに、聞いて欲しかったのかもしれない…
誰かに、愚痴りたかったのかもしれない…　　アイツのことを…　あの、忌々しい男のことを…

その愚痴る相手を、今思えば、間違ったのかもしれないけれど…　

そんなことを思ったところで…後の祭りだった…。