【続編 ほかに相手がいるのに】

～拓海～

脱兎

「…　…ふうっ　…」

　　　ガサ… 

飲み会帰りにコンビニで買ったビールとアイスが入った袋を、無造作にテーブルに置く。

「…　ああ　…」

ゴロンと、ベッドに仰向けになり、天井を見上げる…。

さっき…帰り道に…思い切って、葉月にメールしてみたのだが…

駄目だ…　

全く、反応がないし、そもそも既読にすら、ならない…。


「　はあっ…　」


あれから…　

　　　　もう、どれくらい経つ…？

東京から逃げるように…
俺が、東京にある葉月のマンションから、逃げるように九州に帰って来てから…どれくらいだ…？

俺はカレンダーを見る…　もう、二週間ほど…　か…

「　はあっ…　…　」

あれから全然…　仕事に身が入らない…。

こんな風に一人、家で…寝転んでいても…
起きて、テレビをつけていても…ネットで動画を見ていても…なにも、頭に入ってこない…。


あの夜…葉月に酷いことをしてしまった後も…　

俺は普通に葉月の家の風呂でシャワーを浴び…普通に、葉月の横で眠った…。

だが、翌日は…　

まともに葉月の顔を正面から見るのが怖くて…
何を話せば良いのかも、さっぱりわからなくて…

なにより、葉月にどんな対応をされるのか、それが一番怖くて…　

俺は文字通り、逃げ帰ったのだ…。

あんなにも、男としてダメなことを葉月にしておいて…まるで脱兎のごとく、逃亡してしまった俺…。

　　ただ、帰り際にごめんと…口にしただけ。

だが、今思えばあんな軽々しい…短い謝罪の言葉を…

その場を取り繕うかのように、勢いでなんとなく発して…葉月の家を後にしたあれは…

やはり、あの態度は、まずかったように思う…