【続編 ほかに相手がいるのに】

〜異変〜

感触

「…　…　…」

　ドクン　…　　ドクン　…

　　　　　な、何…　…　

気付けば、私の至近距離に立っている杉崎さん…

至近距離どころか、既に…　完全に私の真後ろで…　
しかも、背後から抱き締められていて、私は驚きを隠せない…。
考え事をしていたせいか…直前まで…全く…杉崎さんの気配を感じていなかった…。

「…　あ　…のっ…　杉崎さん、…　今、珈琲を…　…　」

私はそのままの体勢で、振り返ることも出来ずに声を発する…。

「…　…　…　…　…」

おかしい…

杉崎さんが、何も言ってくれない…　　…
やっぱり、私の一連の行動が…さっきの私の回答が…　　

杉崎さんを不快にさせたのかもしれない…

「…　んっ…　…」

無言のまま…背後からさらに力を込めて抱き締められ、私は思わず呻く…。
杉崎さんの腕が…私の胸の部分に押し付けられるような体勢になり…余計に、恥ずかしい…

「…あっ…の、…　杉崎さん…　…？」

私はみじろいで…杉崎さんの方をなんとか首だけで、振り返る…。

「…　っ　…」　目が、合う…。

私を見下ろした杉崎さんの眼を…少し…ほんの少しだけ、怖いと思った…。

なんと表現したらよいのか、わからない…　

少なくとも、…笑ってはいない…　
射抜かれるような視線に、私は言葉を失う…。

間違いない…。

杉崎さんはきっと、怒っているのだ…　

杉崎さんと身体を重ねた翌日に…拓海と同様のことをした私のことを…

さすがに軽蔑…されたのかもしれない…。
ひょっとしたら、拓海があの日…あの時、口にしたように…杉崎さんにも…淫乱な女などと、思われているのだろうか…

「…杉崎さん…もしかして…さっきのこと…怒っ…　あっ…　！」

突然、くるりと身体を杉崎さんの方に向くように反転させられたかと思うと、頬を両手で包まれるようにして…唇を塞がれる…。

「んぅっ…　、んっ　…　」強く押し付けられる唇…

すぐさま、杉崎さんの熱い舌が差し入れられ…絡められ…私は思わず、目を見開いた…。