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~杉崎~

落胆

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彼女は今、確かに口にした…。

拓海と、そういうことをした…つまり、セックスをしたと…。

とても言いにくそうに… 
そして、恥ずかしそうに、そんなニュアンスのことを俺の目の前ではっきりと、口にした。

「… … …」

その答えを、ある程度予想はしていた…。

覚悟はしていた。

あの男が突然、長年付き合ってきた彼女に別れ話をされて… 
おとなしく、うんと言うはずがないと思っていた。

それどころか、悪くすれば逆上でもして… 
彼女におかしなことを…危害を加えることもあるのではないかと…それくらいには、思っていた…。
何度か会っただけではあるが、子供っぽい一面がある男だ…。
普段は優しくとも、怒りに任せて何をするかわからないタイプに、俺には思えた…。

今さら彼女に言い訳をするつもりも、必要性もないのだが、
もし仮に、出張後の彼女が、いつも通りの朗らかで穏やかな彼女であれば…
俺は彼女にこんな風に…家に上がり込んでまで尋ねることはしなかったかもしれない…。

それほどに、彼女の様子は変だった…。
あの男が… 彼女に何か、酷いことをしたのではないか… 
そんなことを俺に疑わせるほどに…会社での彼女の様子はいつもと違った…おかしかったのだ…。

「はあっ… 」

俺は小さくため息をつく…。


やはり予想は的中した。

別れ話は片付くどころか、きっと、こじれにこじれたに違いない…。

それで恐らく… 彼女は男の怒りか、勢いに押されて…仕方なく身を任せたのではないか… 

彼女が積極的に、男の申し出に…行為に応じたとはどうしても考えにくい…

いや… そもそもそんなことは、考えたくもないのだが、ただ、引っかかること…。

彼女は一切言い訳をしなかった… 
少なくとも、彼女の物言いは…拓海に無理矢理に襲われたなどといった、被害者のような口ぶりではなかった…

だからこそ、彼女のあの説明の仕方では、その細かな状況は、分かりようもない…
だがもはや、さらなる詳細など、俺の口から聞けるはずもない…。

「… … … 」

俺が聞けるのは、ここまでだ… 

そして彼女に、そんなことをして欲しくないと、伝えることすらできない…。

             
       
俺は今更ながらに、自分自身の中途半端な立場に、心から落胆した…。















 























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