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~誘い~
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「… … …」
何か、言わなきゃ…
こういう場面で、こんな風にフリーズしてしまうことが一番ダメに決まっている…。
それは、杉崎さんの表情から明らかだった…。
確実に、私を心配してくれている… そして、何かあったのではと考えているに違いない真剣な表情…。
「あ… あの… 別に、そんな… 」
「水無月さん…」
まだ、私が話している最中、突然言葉を被せてくる杉崎さん…。
いつもとは違う、少し強引な様子の杉崎さんに、少し…驚く。
「は… はい… ?」
「…俺が、前に…君に言ったこと、覚えてる…?」
「え… … ?」
なんのことだろう… 思い当たることがなくて…
私は杉崎さんを見つめる。
「何かあったら必ず、言ってって…彼氏に何かされたら、包み隠さず話してねって言ったの、覚えてるかな…。」
「… あ… … 」
私は少し前の記憶をたどる。
……もしも、この後彼氏に何かされたら…何かあったら、包み隠さず俺に話して欲しい……
確かに…
そんなことを、空港で杉崎さんと別れる少し前に、言われたのを思い出した…。
だけど… あの後起こったことを…
特に、綺麗に別れることが出来たわけでもなく、いまだ曖昧な、ままの…
別れる前のカップルの、嫌な言い争いの様子や、そもそも、あのことを…あんなことを…
杉崎さんに包み隠さず話すことなんて、できるわけがない…。
それでも、杉崎さんの気持ちはわかる…わかってしまう…。
きっと、私があの状況にいたら…
自分が想う相手の恋人が、迎えに来ている状況…
もし、私が杉崎さんの立場であれば…きっと同じことを思うし、二人の間に何があったのか気になるのは当然だと思う…。
私は必死に思考を巡らせつつ、杉崎さんに、必要最低限の話を事実を曲げずに説明した…。
帰りに食事をしたお店で別れを告げたものの、最初はなんとなくはぐらかされ、その後も拓海に簡単には承諾してもらえず、結果的に揉めてしまったこと。
そして、拓海が私と杉崎さんとのことを疑っている可能性があること。
つまり、拓海に別れ話をすることはできたものの、拓海の承諾は得られず、むしろ怒らせたようなとても中途半端な状態で…拓海が福岡へ帰ってしまったこと。
そのすべてを、私はゆっくりと説明した。
「そんな状況でしたので…ちょっと、話はあまりうまくいかなくて…だからまた、落ち着いたら拓海に連絡して、今度こそしっかり話します。もう、よりは戻せない…会えないと話すつもりですし、私ももう、会う気はありません。」
これは、紛れもなく、私の本当の気持ち…。
今の私には、そうとしか思えないほどに、あの夜、拓海が私にしたことは、私の心身を、ズタズタに傷付けた。
「… … …」
ずっと、静かに私の話を聞くだけで無言だった杉崎さんが、ある時からじっと私を見つめていることに気付き、ドクンと心臓が震えた。
何か、言わなきゃ…
こういう場面で、こんな風にフリーズしてしまうことが一番ダメに決まっている…。
それは、杉崎さんの表情から明らかだった…。
確実に、私を心配してくれている… そして、何かあったのではと考えているに違いない真剣な表情…。
「あ… あの… 別に、そんな… 」
「水無月さん…」
まだ、私が話している最中、突然言葉を被せてくる杉崎さん…。
いつもとは違う、少し強引な様子の杉崎さんに、少し…驚く。
「は… はい… ?」
「…俺が、前に…君に言ったこと、覚えてる…?」
「え… … ?」
なんのことだろう… 思い当たることがなくて…
私は杉崎さんを見つめる。
「何かあったら必ず、言ってって…彼氏に何かされたら、包み隠さず話してねって言ったの、覚えてるかな…。」
「… あ… … 」
私は少し前の記憶をたどる。
……もしも、この後彼氏に何かされたら…何かあったら、包み隠さず俺に話して欲しい……
確かに…
そんなことを、空港で杉崎さんと別れる少し前に、言われたのを思い出した…。
だけど… あの後起こったことを…
特に、綺麗に別れることが出来たわけでもなく、いまだ曖昧な、ままの…
別れる前のカップルの、嫌な言い争いの様子や、そもそも、あのことを…あんなことを…
杉崎さんに包み隠さず話すことなんて、できるわけがない…。
それでも、杉崎さんの気持ちはわかる…わかってしまう…。
きっと、私があの状況にいたら…
自分が想う相手の恋人が、迎えに来ている状況…
もし、私が杉崎さんの立場であれば…きっと同じことを思うし、二人の間に何があったのか気になるのは当然だと思う…。
私は必死に思考を巡らせつつ、杉崎さんに、必要最低限の話を事実を曲げずに説明した…。
帰りに食事をしたお店で別れを告げたものの、最初はなんとなくはぐらかされ、その後も拓海に簡単には承諾してもらえず、結果的に揉めてしまったこと。
そして、拓海が私と杉崎さんとのことを疑っている可能性があること。
つまり、拓海に別れ話をすることはできたものの、拓海の承諾は得られず、むしろ怒らせたようなとても中途半端な状態で…拓海が福岡へ帰ってしまったこと。
そのすべてを、私はゆっくりと説明した。
「そんな状況でしたので…ちょっと、話はあまりうまくいかなくて…だからまた、落ち着いたら拓海に連絡して、今度こそしっかり話します。もう、よりは戻せない…会えないと話すつもりですし、私ももう、会う気はありません。」
これは、紛れもなく、私の本当の気持ち…。
今の私には、そうとしか思えないほどに、あの夜、拓海が私にしたことは、私の心身を、ズタズタに傷付けた。
「… … …」
ずっと、静かに私の話を聞くだけで無言だった杉崎さんが、ある時からじっと私を見つめていることに気付き、ドクンと心臓が震えた。
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