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~誘い~
親指
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「ん… 美味しい… 」
新鮮な刺身の盛り合わせ…
確か初めて来たときにも、この盛り合わせを頼んだ…。
そんなことを思い出しながら、箸を進める。
「ここは刺身が凄く新鮮だから、好きなんだよね。一人でも時々来てるんだ、実は…」
「えっ… そうなんですか…?確かに、ここなら帰り道ですし、一人でも立ち寄りやすいですね。」
「そうそう…でもさすがに水無月さんが一人でカウンターで飲んでる姿なんて発見したら、びっくりするけどね…水無月さんはさすがに居酒屋に一人で来ることはない…よね?」
ふふと笑って、正面から私を見る杉崎さんの視線に、ドキリとする。
「はい…まださすがに、カウンターで一人酒の経験は、ないです…。」
そう言いながら、やはり視線を逸らした瞬間、
「水無月さん… 最近は、どう… ?」
「え… … 」
最近はどう…?と、聞かれて…何と答えたら良いのか、一瞬面食らってしまう…
「えっと… 最近は… 普通に…… 」
「… 普通に…?」
「… あの、… 普通に…その…元気、ですけど… 」
「… 元気… ?… 本当に…?」
杉崎さんの問いに、鼓動が早くなる…。
私の身体は…
元気といえば、元気だ…
でも…本当は、ものすごく心配なことがある…
普段通りと変わらない生活を送っている状態であっても、不安で不安で仕方ない…
あの夜のことが毎日、気になっている…。
でも、とても人には言えない…
相談なんてできるはずもないし、そもそもこんなことを相談できる女友達なんて、私には一人もいない…。
ましてや、男性である杉崎さんに…
あの夜の拓海とのことを…言えるはずはない…。
でも、そんな不安な態度が、はからずも外に出ているのかもしれない…
駄目だ…
子供じゃあるまいし、もう少し、しっかりしなきゃ…
私は、自分自身を鼓舞しながら、ゆっくりと口を開く。
「はい、全然元気ですよ。ただ最近少し寝つきが悪くって…寝不足気味かもしれません…すみません、ご心配かけて…でも、大丈夫です。」
「… … …」
逸らしていた視線をなんとか杉崎さんに合わせ、私は精一杯の笑顔で、微笑んだ。
「… それなら、いいけど… じゃあ…なんで、水無月さんは… 君は … 」
「え… … 」
「出張の日…出張から帰った日…あの日以降…俺を…俺のことを、避けているのかな…?」
「え… … 」 私は、自身の耳を疑った。
避けている…?
私が杉崎さんを… ?
そんな… そんなことは、絶対、ないはずだ…
杉崎さんと目が合うと、心臓が高鳴る…
杉崎さんの朗らかな笑い声を聞くと、心がほわんと、幸せな気持ちになる…
後ろ姿を見ているだけで、うっとりと見惚れてしまう…
杉崎さんのことが好きで、好きで…
杉崎さんのことを考えると、胸がきゅうっと、苦しくなるほどだ…
それなのに、その杉崎さんを、私が避けるなんてことは、ない…ないはずなのに…
なんで、杉崎さんはそんな…ことを…
「そんな、避けて…なんて… あっ… 」
突然、手のひらで片方の頬をそっと包まれ、ビクンと震える…。
「…ほら、まただ…最近の水無月さんは…俺からすぐに視線を逸らす…ちゃんと、俺の方、見て… 」
杉崎さんの長い指が…私の耳にそっと、触れる…
「あっ… … 」冷たい指先が、くすぐったい…それと同時に、全身がゾクゾクしてくる…
駄目…やめて…
ここは、居酒屋だ…。
半個室とはいえ、暖簾を少し上に上げれば、中が見えてしまうような造りの場所で…
杉崎さんが私にこんな風に… 頬に、触れるなど…想像できるはずもなかった…。
「すぎ、さきさん…」
杉崎さんは無言で…私の頬を優しく、撫でさすっている…
その指が…
杉崎さんの親指が、そっと、私の唇に触れた…
「… …つっ … 」
私は声を無くしたまま… 恐る恐る、杉崎さんの眼を、正面から見返した…。
新鮮な刺身の盛り合わせ…
確か初めて来たときにも、この盛り合わせを頼んだ…。
そんなことを思い出しながら、箸を進める。
「ここは刺身が凄く新鮮だから、好きなんだよね。一人でも時々来てるんだ、実は…」
「えっ… そうなんですか…?確かに、ここなら帰り道ですし、一人でも立ち寄りやすいですね。」
「そうそう…でもさすがに水無月さんが一人でカウンターで飲んでる姿なんて発見したら、びっくりするけどね…水無月さんはさすがに居酒屋に一人で来ることはない…よね?」
ふふと笑って、正面から私を見る杉崎さんの視線に、ドキリとする。
「はい…まださすがに、カウンターで一人酒の経験は、ないです…。」
そう言いながら、やはり視線を逸らした瞬間、
「水無月さん… 最近は、どう… ?」
「え… … 」
最近はどう…?と、聞かれて…何と答えたら良いのか、一瞬面食らってしまう…
「えっと… 最近は… 普通に…… 」
「… 普通に…?」
「… あの、… 普通に…その…元気、ですけど… 」
「… 元気… ?… 本当に…?」
杉崎さんの問いに、鼓動が早くなる…。
私の身体は…
元気といえば、元気だ…
でも…本当は、ものすごく心配なことがある…
普段通りと変わらない生活を送っている状態であっても、不安で不安で仕方ない…
あの夜のことが毎日、気になっている…。
でも、とても人には言えない…
相談なんてできるはずもないし、そもそもこんなことを相談できる女友達なんて、私には一人もいない…。
ましてや、男性である杉崎さんに…
あの夜の拓海とのことを…言えるはずはない…。
でも、そんな不安な態度が、はからずも外に出ているのかもしれない…
駄目だ…
子供じゃあるまいし、もう少し、しっかりしなきゃ…
私は、自分自身を鼓舞しながら、ゆっくりと口を開く。
「はい、全然元気ですよ。ただ最近少し寝つきが悪くって…寝不足気味かもしれません…すみません、ご心配かけて…でも、大丈夫です。」
「… … …」
逸らしていた視線をなんとか杉崎さんに合わせ、私は精一杯の笑顔で、微笑んだ。
「… それなら、いいけど… じゃあ…なんで、水無月さんは… 君は … 」
「え… … 」
「出張の日…出張から帰った日…あの日以降…俺を…俺のことを、避けているのかな…?」
「え… … 」 私は、自身の耳を疑った。
避けている…?
私が杉崎さんを… ?
そんな… そんなことは、絶対、ないはずだ…
杉崎さんと目が合うと、心臓が高鳴る…
杉崎さんの朗らかな笑い声を聞くと、心がほわんと、幸せな気持ちになる…
後ろ姿を見ているだけで、うっとりと見惚れてしまう…
杉崎さんのことが好きで、好きで…
杉崎さんのことを考えると、胸がきゅうっと、苦しくなるほどだ…
それなのに、その杉崎さんを、私が避けるなんてことは、ない…ないはずなのに…
なんで、杉崎さんはそんな…ことを…
「そんな、避けて…なんて… あっ… 」
突然、手のひらで片方の頬をそっと包まれ、ビクンと震える…。
「…ほら、まただ…最近の水無月さんは…俺からすぐに視線を逸らす…ちゃんと、俺の方、見て… 」
杉崎さんの長い指が…私の耳にそっと、触れる…
「あっ… … 」冷たい指先が、くすぐったい…それと同時に、全身がゾクゾクしてくる…
駄目…やめて…
ここは、居酒屋だ…。
半個室とはいえ、暖簾を少し上に上げれば、中が見えてしまうような造りの場所で…
杉崎さんが私にこんな風に… 頬に、触れるなど…想像できるはずもなかった…。
「すぎ、さきさん…」
杉崎さんは無言で…私の頬を優しく、撫でさすっている…
その指が…
杉崎さんの親指が、そっと、私の唇に触れた…
「… …つっ … 」
私は声を無くしたまま… 恐る恐る、杉崎さんの眼を、正面から見返した…。
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