【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~不安~

謝罪

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拓海は、あの日の翌朝、そそくさと家を出て行った。

普段の拓海であればお昼過ぎまでベッドでゴロゴロしたり、そうじゃなくてもお昼前には二人で家を出て、空港に行く途中、どこかでランチをするのが常だった。
でも今回ばかりは、とてもそんな気分にはなれなかった。

拓海はまだ布団の中で丸まっている私を横目に、手早く身支度を済ませ、

「じゃあ俺、もう行くな…」とだけ、口にした。

普段であれば、飛行機の時間は何時…?朝食はどうする…?などと、聞く私…

でも…この時ばかりは、何ひとつ言葉が出てこなかった…。

「… … …」

うん、とも…気を付けて帰ってね…とも…本当に、何の言葉も出なかった。

むしろ、もう帰るという拓海に対して、一刻も早くこの場からいなくなって欲しい…九州へ帰って欲しい…
私の頭には、もはやそんなネガティブな感情しか頭に浮かんでこなかった。

ギッと、ドアの音がした直後、

「…葉月…昨日は、ごめん…また、連絡する… 」

「… … … …」え… ?

         バタン…

静かにドアの閉まる音がして、私は、無言でシーツに顔を埋める。

      昨日は、ごめん… …?


そんな言葉で… 
簡単に、片付けられるようなことじゃ、ない…

謝るくらいなら、なんで、あんな… …

きっと、拓海には…

今の私の…この、不安な気持ちは、わからない。
ずっと気を付けていたのに、最後に…あんな風に半ば無理矢理に…あんなことをされてしまった私の、絶望…

子を宿す可能性がない拓海には…

男である拓海には、絶対に分かりっこない…。

再び、拓海から連絡がきたところで、なんだというのだろう…。
もう、拓海とは二度と…前のような関係には戻れない…絶対に無理…

もう、私には終わりしか、見えない…

私の心は、この時点で既に完全に決まっていた。

それなのに…思い出したくなんて、ないのに…

昨夜の…生々しい行為の記憶が… 
何度も、頭の中に押し寄せてくる。

忘れられない感触。
拓海が最後に…私の奥を激しく突き上げた瞬間、
熱いものが… 確かに、私の中に… ドクドクと流れ込んできて…   

 
ああ… 

  駄目だ… 眩暈がしそうだ…

「… どうしよう… どうしたら、いい… 」

私はぼそりとつぶやきながら、拓海のいなくなった玄関を見つめた。





























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