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苦渋
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かたかたかたかた…
タクシーの座席に座ってからも…俺は小刻みに震えていた。
最初に読んだ…その時…既に、違和感を覚えていたのだ…。
いきなり思い立って、旅に出ようとする人間が…果たして、こんな文章を作り出すだろうか…
前半はほぼ、独り言のようなつぶやき…
俺に対する謝罪と、後悔の念…
そして、中に巣食う男への…憎しみ…
いつもは静かで穏やかな寺崎に似合わない、爆発的な、憎しみともとれるマイナスな感情…
そんなものが、じわじわと俺に、訴えかけてくるような内容…
一番おかしいと感じたのは、最後だ…
最後に…と、記している通り…
まるで、これで最後なのかと思わせるほどの、書置ともとれる、しめくくり…。
だが、本当はおかしい…
寺崎がこんなものを俺によこしてくること自体、通常では考えられないような気がしてくる…。
あの…人一倍、人に気遣いができる寺崎が…
こんな…下手をしたら、人を心配させるかもしれないような内容のものを…いきなりよこす…
あまりに、寺崎らしくない…
そこのことが余計に、俺に、おかしな違和感を覚えさせていた…。
もはや、そんなことに気が回らないほどに…
そんなことに気を遣える余力もないほどに、寺崎は自身の行く末に、絶望していたのではないか…
「… … 先輩… 大丈夫ですか…? きっと、…大丈夫ですよ… 」
「… … …」
「多分…俺の… 俺らの、思い違い… なんか、感傷的な内容だったんで俺、思わずタクシー呼んじゃいましたけど、多分…なんてことないことだと、思いますよ…?」
「う… ん… 」
圭一が、俺を元気づけようとしているのがわかる…。
「きっと、到着してピンポン慣らしたら、ドア開けて、おっ!て、…驚いた顔するんじゃないですか?
日曜の朝から何しに来たんだって…二人でいちゃついてるとこ、見せつけに来たのかって怒るかもしんないですよ…」横に居る圭一が、静かに囁く…。
「う… ん… そう、かな… 」
そう…応じながらも… 俺は落ち着かなかった…。
違う…
絶対に違うと、寺崎が早まったことをしていないと信じたい自分がいる一方で…
そんな風に… 寺崎が部屋から呑気に顔を出す情景が全然…ただの、1%も、思い浮かばない…。
なにか、嫌な… 悪いことが起きるような気がしてならない…。
寺崎は…自身の中のアイツを、死ぬほど憎んでいるに違いない…。
自分自身では全くコントロールできずに、外で、信じられないような悪さをするアイツ…
俺ですら、もし、寺崎の身になれば…
寺崎と同じようなことが自分自身に起きていれば…絶対に平静ではいられないだろう…。
これでもかというほどに、中の奴を憎むはずだ…
嫌な予感…
それは、寺崎が中の奴を… シュウを、消そうとすること…
つまり、自分自身を… シュウとともに、この世から消去すると言うことだ…
自殺、だなんて… 寺崎に限ってあり得ない… あっちゃいけない…
そう思う反面、頭の隅で… 黒い感情が…俺の希望的な観測を…正常な思考を、からめとろうとする…。
寺崎だからこそ…
あんな、いい奴だからこそ… 十分にあり得る…
これ以上、俺に… 周りの人間に迷惑をかけないために…
自らで、その命を断つ… シュウを、自身の身体から切り離せないがために選ぶ、苦渋の決断だ…
普通に、あり得ると想像できることが余計に、俺を不安にさせる…。
「… 寺崎… 頼むから、無事でいてくれ… 」
俺が小さく呟くと…
「きっと、寺崎さんは…大丈夫… 先輩には俺も、ついてますから… 」
「うん…」俺には、圭一がいる…
だが、寺崎にはそんな風に思える人間が、 … … いただろうか…
そんな風に考えている最中、キキッと音を立てて…タクシーが路地裏へ停車する。
「先輩… つきましたよ… 行きましょう。」
「うん… 」
俺と圭一はすぐさまタクシーを降り… 猛スピードで、寺崎の部屋へ向かった…。
タクシーの座席に座ってからも…俺は小刻みに震えていた。
最初に読んだ…その時…既に、違和感を覚えていたのだ…。
いきなり思い立って、旅に出ようとする人間が…果たして、こんな文章を作り出すだろうか…
前半はほぼ、独り言のようなつぶやき…
俺に対する謝罪と、後悔の念…
そして、中に巣食う男への…憎しみ…
いつもは静かで穏やかな寺崎に似合わない、爆発的な、憎しみともとれるマイナスな感情…
そんなものが、じわじわと俺に、訴えかけてくるような内容…
一番おかしいと感じたのは、最後だ…
最後に…と、記している通り…
まるで、これで最後なのかと思わせるほどの、書置ともとれる、しめくくり…。
だが、本当はおかしい…
寺崎がこんなものを俺によこしてくること自体、通常では考えられないような気がしてくる…。
あの…人一倍、人に気遣いができる寺崎が…
こんな…下手をしたら、人を心配させるかもしれないような内容のものを…いきなりよこす…
あまりに、寺崎らしくない…
そこのことが余計に、俺に、おかしな違和感を覚えさせていた…。
もはや、そんなことに気が回らないほどに…
そんなことに気を遣える余力もないほどに、寺崎は自身の行く末に、絶望していたのではないか…
「… … 先輩… 大丈夫ですか…? きっと、…大丈夫ですよ… 」
「… … …」
「多分…俺の… 俺らの、思い違い… なんか、感傷的な内容だったんで俺、思わずタクシー呼んじゃいましたけど、多分…なんてことないことだと、思いますよ…?」
「う… ん… 」
圭一が、俺を元気づけようとしているのがわかる…。
「きっと、到着してピンポン慣らしたら、ドア開けて、おっ!て、…驚いた顔するんじゃないですか?
日曜の朝から何しに来たんだって…二人でいちゃついてるとこ、見せつけに来たのかって怒るかもしんないですよ…」横に居る圭一が、静かに囁く…。
「う… ん… そう、かな… 」
そう…応じながらも… 俺は落ち着かなかった…。
違う…
絶対に違うと、寺崎が早まったことをしていないと信じたい自分がいる一方で…
そんな風に… 寺崎が部屋から呑気に顔を出す情景が全然…ただの、1%も、思い浮かばない…。
なにか、嫌な… 悪いことが起きるような気がしてならない…。
寺崎は…自身の中のアイツを、死ぬほど憎んでいるに違いない…。
自分自身では全くコントロールできずに、外で、信じられないような悪さをするアイツ…
俺ですら、もし、寺崎の身になれば…
寺崎と同じようなことが自分自身に起きていれば…絶対に平静ではいられないだろう…。
これでもかというほどに、中の奴を憎むはずだ…
嫌な予感…
それは、寺崎が中の奴を… シュウを、消そうとすること…
つまり、自分自身を… シュウとともに、この世から消去すると言うことだ…
自殺、だなんて… 寺崎に限ってあり得ない… あっちゃいけない…
そう思う反面、頭の隅で… 黒い感情が…俺の希望的な観測を…正常な思考を、からめとろうとする…。
寺崎だからこそ…
あんな、いい奴だからこそ… 十分にあり得る…
これ以上、俺に… 周りの人間に迷惑をかけないために…
自らで、その命を断つ… シュウを、自身の身体から切り離せないがために選ぶ、苦渋の決断だ…
普通に、あり得ると想像できることが余計に、俺を不安にさせる…。
「… 寺崎… 頼むから、無事でいてくれ… 」
俺が小さく呟くと…
「きっと、寺崎さんは…大丈夫… 先輩には俺も、ついてますから… 」
「うん…」俺には、圭一がいる…
だが、寺崎にはそんな風に思える人間が、 … … いただろうか…
そんな風に考えている最中、キキッと音を立てて…タクシーが路地裏へ停車する。
「先輩… つきましたよ… 行きましょう。」
「うん… 」
俺と圭一はすぐさまタクシーを降り… 猛スピードで、寺崎の部屋へ向かった…。
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更新が長いこと止まっていましたのに引続き読んでいただき、ありがとうございます。
そうですね、画像と動画の削除…そして、治療…
それが先決だとは思いますが、寺崎はこれから一体、どう動くのか…
引続き読んでいただけると嬉しいです。
何度も感想いただき、ありがとうございます。
そうですね!警察を呼ぶのが一番かもしれません。ただ、僚介の心中にはやはり寺崎の立場があり、なるべく悪者にしたくない…そう、考えているのかもしれません。
ただ、今後の展開によっては…?どうなるかは…
更新ゆっくりですが、引き続き読んでいただけると幸いです。
温かなご感想いただき、ありがとうございます。実は私も途中、どういう展開に転がるかわからず、ハラハラしながら書いていました、笑。
最後のラブラブは、あまりに長過ぎて、ちょっとくどかったかも…と若干気になっていましたので、そう言っていただけて、とても嬉しいです。
この作品のタイトルにかかる部分なので、思い切り圭一らのラブラブ描写に力を注ぎたかったのですが、気付けばなかなかの長編になってしまいまして…笑。
今後ともよろしくお願いします。^ ^
ありがとうございました。