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夫婦の形
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「はあ~~美味かった…!先輩、めちゃうまでした、豚キム… てか、食べ過ぎたーー」
圭一が椅子にもたれるようにしながら、お腹をポンポンと叩く。
今日のメニューは、具沢山の豚汁に、豚キムチ…あとは簡単なサラダだけのシンプルなメニューだった。
豚に豚…とも思ったが、俺は断然、味噌汁より豚汁が好きで…豚肉が余っている場合にはよく豚汁を作る。手が込んでいるとは言い難い料理だが、俺の得意料理ではあるのだ…。
「特にこの豚汁~~ 油が出てて…牛蒡とかニンジンとか全部…マジで美味かったです…野菜たっぷりですごく健康的だし…夫は大変、満足してます!」
圭一の、普段は切長の目が、笑った時にだけほわんと緩む…目尻に皺がほんの少し刻まれる…
本人には言ったこともないが、俺は圭一のその顔が好きだ…可愛くて頭を撫でたくなるのだが…そこはなんとか堪える…。
「あほう…何が夫だ、さっきから…夫婦ごっこでもしてんのか… 俺とお前は男…同士だし…俺は、おまえの妻じゃない…妻になんか、なれない…」
俺は…男なのだ…
男はどうしたって、男の妻…には、なれない…
圭一の…妻… だと… ?
妻って言われると…花柄のフリルで縁取られたエプロンをつけて、あなた、おかえりなさいっていう、そんなイメージ…このイメージ自体…圭一と同じく、いつの時代かよってくらい、古いのかもしれないけど…
無理だ…俺たちにはありえない設定…関係性だ…
そもそも俺と圭一は…男同士で…俺たちに…この先明るい未来などあるのだろうか…いくら時代が変わっても…まだまだ偏見があるこの世の中…男同士で夫婦なんてありえない、だろ…
無理なのだ…
今、深く考えても仕方ないことなのに…
心の奥底に…何か不安というか…迷いのような…得体の知れない嫌なものが、渦巻き始める…
「もう~先輩ほんと、冗談通じない…いいじゃないですか、ここには誰もいないんだし…そもそも俺は…」
圭一が話しながら、食べ終わった皿を重ねて手に持ち、おもむろに立ち上がる。
「ああ… 」
「既に俺は、夫のつもりですよ…もはや、単なる先輩後輩じゃないし…いや、もちろん先輩は先輩ですけど…バイト先でたまたまそういう呼び方をし始めたってだけで…既に俺達は恋人同士…男と男だけど… 同じ場所で飯食って同じベッドに寝て…旅行にも行って…あれも…しっかりするんですから…夫婦も同然ですよ…新しい夫婦の形でいいんじゃないですか…?」
圭一が俺を見下ろして、恐ろしく整った顔で…ニコリと笑う。
同じ場所で飯食って、寝て…までは、いいとして…
あれ、するって…まさか、あれのこと… か…
圭一はいつも話をおかしな方向に持っていく…ひょっとして、俺の反応を楽しんでいるのかもしれない…
「お…おまえ、何言ってんだ…ばか…たとえそうだとしても俺たちはまだ…その…恋人、止まりだろ…夫婦…とかはまた、違うだろう…?も…う、いいから早く流しに皿、出して、手洗って来いよ…」
「はあ… また簡単に、俺の話をさらっと流しますね…先輩… 」
カチャと皿を流しに置いて、圭一が頬を膨らませながらも、しぶしぶと洗面所へ向かう。
あんな顔…
かっこいい顔が、可愛く変化した顔…
その辺の女の子に見せたら、卒倒ものだろうな…
ほんとうに…このまま、俺が圭一を独り占めして、いいんだろうか…
そんなことが頭によぎりながらも…俺は、
食後のコーヒーの準備を始めた…
圭一が椅子にもたれるようにしながら、お腹をポンポンと叩く。
今日のメニューは、具沢山の豚汁に、豚キムチ…あとは簡単なサラダだけのシンプルなメニューだった。
豚に豚…とも思ったが、俺は断然、味噌汁より豚汁が好きで…豚肉が余っている場合にはよく豚汁を作る。手が込んでいるとは言い難い料理だが、俺の得意料理ではあるのだ…。
「特にこの豚汁~~ 油が出てて…牛蒡とかニンジンとか全部…マジで美味かったです…野菜たっぷりですごく健康的だし…夫は大変、満足してます!」
圭一の、普段は切長の目が、笑った時にだけほわんと緩む…目尻に皺がほんの少し刻まれる…
本人には言ったこともないが、俺は圭一のその顔が好きだ…可愛くて頭を撫でたくなるのだが…そこはなんとか堪える…。
「あほう…何が夫だ、さっきから…夫婦ごっこでもしてんのか… 俺とお前は男…同士だし…俺は、おまえの妻じゃない…妻になんか、なれない…」
俺は…男なのだ…
男はどうしたって、男の妻…には、なれない…
圭一の…妻… だと… ?
妻って言われると…花柄のフリルで縁取られたエプロンをつけて、あなた、おかえりなさいっていう、そんなイメージ…このイメージ自体…圭一と同じく、いつの時代かよってくらい、古いのかもしれないけど…
無理だ…俺たちにはありえない設定…関係性だ…
そもそも俺と圭一は…男同士で…俺たちに…この先明るい未来などあるのだろうか…いくら時代が変わっても…まだまだ偏見があるこの世の中…男同士で夫婦なんてありえない、だろ…
無理なのだ…
今、深く考えても仕方ないことなのに…
心の奥底に…何か不安というか…迷いのような…得体の知れない嫌なものが、渦巻き始める…
「もう~先輩ほんと、冗談通じない…いいじゃないですか、ここには誰もいないんだし…そもそも俺は…」
圭一が話しながら、食べ終わった皿を重ねて手に持ち、おもむろに立ち上がる。
「ああ… 」
「既に俺は、夫のつもりですよ…もはや、単なる先輩後輩じゃないし…いや、もちろん先輩は先輩ですけど…バイト先でたまたまそういう呼び方をし始めたってだけで…既に俺達は恋人同士…男と男だけど… 同じ場所で飯食って同じベッドに寝て…旅行にも行って…あれも…しっかりするんですから…夫婦も同然ですよ…新しい夫婦の形でいいんじゃないですか…?」
圭一が俺を見下ろして、恐ろしく整った顔で…ニコリと笑う。
同じ場所で飯食って、寝て…までは、いいとして…
あれ、するって…まさか、あれのこと… か…
圭一はいつも話をおかしな方向に持っていく…ひょっとして、俺の反応を楽しんでいるのかもしれない…
「お…おまえ、何言ってんだ…ばか…たとえそうだとしても俺たちはまだ…その…恋人、止まりだろ…夫婦…とかはまた、違うだろう…?も…う、いいから早く流しに皿、出して、手洗って来いよ…」
「はあ… また簡単に、俺の話をさらっと流しますね…先輩… 」
カチャと皿を流しに置いて、圭一が頬を膨らませながらも、しぶしぶと洗面所へ向かう。
あんな顔…
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その辺の女の子に見せたら、卒倒ものだろうな…
ほんとうに…このまま、俺が圭一を独り占めして、いいんだろうか…
そんなことが頭によぎりながらも…俺は、
食後のコーヒーの準備を始めた…
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