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申し出

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俺は圭一と別れた後、寺崎に少し遅れて店に入る。
更衣室だろう…
既に、寺崎の姿は見えなくなっていて、内心ホッとする。

昨日の今日で、なんとも気まずい…

今日の寺崎は、やはり寺崎自身に違いない…

そう、頭ではわかってはいるものの…  最後、寺崎にされた行為が…
もちろん俺が承諾したことではあるが、キスと… 抱擁… それらが
今になって頭の中を駆け巡る…。

寺崎には圭一と付き合っていることを正直に伝え、
その流れで、寺崎に最後の願いと言われ思わず承諾したことではあるが…あれは、今思えば、果たして正しかったのだろうか… 抱き締められたことは、まあ…ギリギリいいとして…キス、だぞ…

軽いキスとはいえ、唇に…
頬ではなく唇を合わせての寺崎とのキス…今思えばやっぱり、よくは…なかったのかもしれない…
俺には、そういうところがある…
その場の雰囲気に流され、場の空気を読み…なんとなくOKする…みたいなことが…これまでに何度も…

だが、やはり良くなかった。
俺には圭一という恋人がいる。
にもかかわらず、他の男と…よりにもよって、圭一が一番警戒している寺崎と…
最後だからと頼まれたとはいえ、キスを…するなんて… 

その後、寺崎を押しのけてシュウが出現して、襲われて…そのまま…俺の意識からそのことは遠のいてはいたけど…
もし仮に、圭一に言えば…正直に話してしまえば、アイツはまた、烈火のごとく激高するかもしれない…

考えが甘過ぎた… 本当に、圭一の言う通りなのかもしれない…

「あ… っと、僚介、… ごめん、入りづらかったろ。 どうぞ?」

いきなり背後から寺崎に声を掛けられ、ビクンと身体が跳ね上がる。
もはや、シュウではなくとも…寺崎の存在自体が、俺を動揺させる。

「あっ… ああ … ごめん、俺も着替えてくる… な…」声が震える。

「あの…さ、僚介…仕事終わってからでいいんだけど、少しだけ、話がしたい…」
寺崎の真剣な目が、俺をとらえる… 

話… ?昨日の…話の続き… ? それとも、別の、か…?

だが、断ることは… 今さら、寺崎から逃げることなんて、できない…

「 え…っと … あ… ああ… う、ん…わかった…」

絶対に、寺崎と二人きりにはならない…  

圭一の、心から心配したような顔と…
その、絶対的な条件を頭に浮かべながら、俺は更衣室へ向かった。












 
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