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諦め
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木曜日
俺は遅番のバイトを終え、他のメンバーに挨拶し裏口を出た。
あと一日…あと一日で、待ちに待った圭一との旅行だ。一泊二日の旅行だし、浴衣とかそういうものは旅館に揃っているから、実質着替えと、ちょっとした荷物くらいでほとんど準備は済んでいた。
あとは圭一の好きなスナック類やらお菓子を明日買っておけば、準備は万全だ。
うん…あとは、待ち合わせ時間を圭一と…
… 俺は…、一瞬声を失った。
寺崎が目の前に、突然…、立っていたからだ…
いや…俺が考え事をしながら歩いていたから、突然ではなく、気付かなかっただけ、かもしれない…
「て…寺崎…ひ、久しぶり…」
俺はかなり不自然な態度で、声を発した…ような気がする。
「僚介…あのさ…今から…ちょっとでいいからさ…話せないかな…?今週会った時にでも、なんとかおまえと話できたら…って思ってたけど、おまえ、気付けば姿、消してるし、バイトも時間、変更したんだな…ひょっとしてやっぱり…俺のこと避けてたり…するのか…?」
「… …」
どうしよう…今週は寺崎と話したく…なかったのに…
だからわざわざ全ての時間で避けていたのに…まさかバイト先で…待ち伏せ…されるとは、思っていなかった…
なんて言おう、なんて言って、この場を乗り切ろう…
ぐるぐる考えながら、俺は言葉を発する。
「あの…さ…ごめん、寺崎、本当にわざわざきてもらったみたいで悪いんだけどさ…、来週…にしてくんないかな…絶対、時間作るしさ。今週ちょっと都合が、悪くて…」
「週末…奥村との旅行…が、あるからか…?だから、忙しくて俺との、ちょっと話をする時間さえも…取れない…って…こと…か…」
寺崎の低い声が、暗い夜道に響く。
「俺はここ最近のお前の態度に…悩まされて…もう、わけわかんなくなってる…苦しいんだ。頼むからもう、全て話してくれないか…シュウってやつのしたこと… できれば、今…すぐに…」
俺は目を閉じた…
シュウが寺崎の内心をどう言おうと、コイツは俺の…大事な友達だ… もう、コイツを意味なく苦しませることはできない、…引き延ばせない…
「わかった…」
俺は気付けば、そう、答えていた。
俺は遅番のバイトを終え、他のメンバーに挨拶し裏口を出た。
あと一日…あと一日で、待ちに待った圭一との旅行だ。一泊二日の旅行だし、浴衣とかそういうものは旅館に揃っているから、実質着替えと、ちょっとした荷物くらいでほとんど準備は済んでいた。
あとは圭一の好きなスナック類やらお菓子を明日買っておけば、準備は万全だ。
うん…あとは、待ち合わせ時間を圭一と…
… 俺は…、一瞬声を失った。
寺崎が目の前に、突然…、立っていたからだ…
いや…俺が考え事をしながら歩いていたから、突然ではなく、気付かなかっただけ、かもしれない…
「て…寺崎…ひ、久しぶり…」
俺はかなり不自然な態度で、声を発した…ような気がする。
「僚介…あのさ…今から…ちょっとでいいからさ…話せないかな…?今週会った時にでも、なんとかおまえと話できたら…って思ってたけど、おまえ、気付けば姿、消してるし、バイトも時間、変更したんだな…ひょっとしてやっぱり…俺のこと避けてたり…するのか…?」
「… …」
どうしよう…今週は寺崎と話したく…なかったのに…
だからわざわざ全ての時間で避けていたのに…まさかバイト先で…待ち伏せ…されるとは、思っていなかった…
なんて言おう、なんて言って、この場を乗り切ろう…
ぐるぐる考えながら、俺は言葉を発する。
「あの…さ…ごめん、寺崎、本当にわざわざきてもらったみたいで悪いんだけどさ…、来週…にしてくんないかな…絶対、時間作るしさ。今週ちょっと都合が、悪くて…」
「週末…奥村との旅行…が、あるからか…?だから、忙しくて俺との、ちょっと話をする時間さえも…取れない…って…こと…か…」
寺崎の低い声が、暗い夜道に響く。
「俺はここ最近のお前の態度に…悩まされて…もう、わけわかんなくなってる…苦しいんだ。頼むからもう、全て話してくれないか…シュウってやつのしたこと… できれば、今…すぐに…」
俺は目を閉じた…
シュウが寺崎の内心をどう言おうと、コイツは俺の…大事な友達だ… もう、コイツを意味なく苦しませることはできない、…引き延ばせない…
「わかった…」
俺は気付けば、そう、答えていた。
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