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混乱

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「僚介…?おい、おーい…」

俺は目の前に寺崎がいるにも関わらず、軽く放心状態になっていた。
今…寺崎…いや、シュウが延々と俺の目の前で話し続けたことは、本当の話…なのか…?

寺崎が俺のことをどうとか…こうとか…

それとも、シュウが面白がって適当に作った話を俺に…?…デタラメ…にしては、話が具体的で田口の件も含めてなんとなく…筋が通っている…気もしてくる…

… …背筋に冷たい汗が、伝った。

俺は思わず、無言で寺崎を見返す。
目の前にいるのは、いつもの寺崎だ。
優しくて気さくで、友達思いの。

何か話さなければ…
頭ではそう思うのにうまく言葉が出てこない。

「僚介…俺、今また少し、記憶飛んでたみたいだな…サンドウィッチ、食べた覚え…ないし…
まさかまた、中の奴が現れておまえに、なんか言ったり…、したり…したの…か…?」

寺崎がこちらをみて真っ直ぐに尋ねてくるが、俺に今、スラスラと答える力は残っていなかった。

「ごめん…寺崎…ちょっと俺、急ぎのさ…用事思い出したから今日はちょっと、うん、やめとくわ。ごめん、こっちから声かけたのに…また、時間ある時に誘うな。」

不安そうな表情を浮かべている寺崎をその場に置き去りにして、俺はその場をそそくさと立ち去った。

早足で、家に向かう。

歩きながらも、シュウが話した内容が頭の中をグルグルと駆け巡る。

寺崎が…俺を…だと…?

まさか…

入学してからすぐ、友達のいなかった俺に声をかけてくれてから、ずっと、気のおけない仲良い友人…だと思っていた、寺崎が…

シュウのいうように…お…男の俺と…セックス…したいとか、そんな感情を俺に対して…抱いているとでもいうのか…

今、この1年半近くを思い返してみても、寺崎からそんな感情、ただの一度も、微塵にも…俺には感じることはできなかった。

唯一、圭一だけが、寺崎のことを危険な感じがするから気をつけろと…言っていたが、それはあくまで、寺崎の中のシュウという危険な存在を圭一が本能みたいなもので感じ取って、俺に告げた…んだと思っていたし…。

俺は…愕然とした、ただ…

あくまで、シュウの…言うことだ。
100%信じるのは、やっぱり…危険だ。

なにより、寺崎本人から、俺自身に対してそんな感情を吐露されていない以上…今までどおり寺崎と接していくより、ほかはない。

ただ…俺の中に…

シュウだけではなく、寺崎本人に対しても一種の警戒心みたいなものが生まれてしまったことは、やはり否めない…。

ごめんな…寺崎…おまえは…悪くない…けど、
もう少し考える時間と、おまえとの距離が欲しい…

圭一… 俺…どうしたらいいんだ…
どんどん…対処法が、わからなくなってきた…

俺は…
混乱する頭を抱えながら帰路につく。

               
           































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