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二人で一人

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背中を生ぬるい汗が、つたう。

俺は床に落とした携帯をそのままに、バッグを置き、エアコンのスイッチを入れた。

喉が乾いていたので冷蔵庫から、ペットボトルの麦茶を取り出し、一気に喉に流し込む。

冷たくて濃い目の麦茶が、喉を潤していく。

落ち着こう…とにかく、落ち着くんだ…

所定の場所に座って、とりあえずテレビをつけるが、全く内容が頭に入ってこない。


シュウ… 本当に、寺崎…なのか。

さっきのメールは、寺崎のものではなく、俺の携帯に登録がない新しい番号からだった。

寺崎か、他の誰かが新たな携帯から、ふざけて送ってきたのか…?わざわざ手の込んだ…そんなことをして、何の意味がある…

それよりも… あの内容…

あれは間違いなく…
あの…忌まわしい夜のことを、指しているのだろうが…あの夜のことを知っているのは、寺崎以外にはいないはずだ。

シュウとかいう奴の、俺に対する初めましてがあの夜で、今日の大学が二度目…ということ… なのか…?

だとすると…やはり…

俺は、うなだれる。

   にわかには信じられないが…
    やっぱり、  二重人格…

…寺崎のナカに、シュウ…とかいう…ふざけた別人格の男が、いて…

そして、今日の寺崎の様子から見ると、寺崎にあの夜の記憶はなく…つまり、ソイツが外に出できている時には、寺崎の意識はない…ということ…になる…

そう考えると、全て、辻褄つじつまが合う…気がした。

あの夜、俺が、いつもとは違う寺崎に対し、一種の恐怖と違和感を覚えたこと。

寺崎があの夜のことを、何も覚えていないこと。
今朝の寺崎の、俺の態度に心から傷付いたような様子。

そして…シュウという男からきた、さっきのメール。

全て…話が…繋がってしまう…


ただ、ただ…恐ろしいのは…

シュウが外に出ていない時も、寺崎の行動を把握している可能性があるってこと… 
さっきのメールで、俺の身体が大丈夫そう…と、まるで自分で見ていたかのように俺に知らせてきている…

つまり、寺崎のナカには…ずっと奴がいるか、時々監視している…とかなのか…

今度は冷や汗が…背筋をつたう。

以前、テレビの特集で、多重人格の人物に同意のうえ、会話したり生活したりの、ドキュメント番組を見たことがあったが、あまりに現実味がなくて…ほんとかな?やらせか…?ぐらいにしか考えていなかった…。

圭一 … …
  
俺はこれから… どうしたらいい…?
誰に、どういう態度で接したら…いいんだ…

   
とにかく明日だ、明日はバイトで圭一に会える…

  俺は、それを希望に…
    ノロノロと、動き出した。

               
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