上 下
34 / 363

迷走

しおりを挟む
バイトの日。

圭一からの連絡もしばらく無視しているし、顔をあわせづらかったが、バイトはさすがに連続して休めない。
俺は大学の講義を終え、とぼとぼとバイト先に向かう。

確か今日は、圭一とシフトが丸かぶりだ…
気が重いけど、これ以上グダグダ引きずっても仕方がない。
だから俺も、圭一の何かしらの反応に、大人の対応をしようと決意する。

制服に着替えたが、開始までまだ時間があった。
俺がまかない用のコーヒーを飲みながら控え室のソファで携帯をいじっていると、ガチャリとドアが開く。

圭一が入ってきた。

「あっ…」
圭一が、俺を見て、みるからに動揺する。
…わかりやすい奴だな…よし、俺から会話をと、口を開こうとしたら、

「この前は、先輩、ホントにすみませんでした!」

…圭一が、座ってコーヒーを片手にした俺に、立ったまま深々と頭を下げる。
なんか…俺、すごく、悪い奴みたいだ…

「あの時…俺っ、おれ…」
圭一が続けようとすると、ガチャ、またドアが開く。

「あれ…あ、、取り込み中ですか?すみません、ちょっとすぐ、通りますー…」

今度は俺達と交代でバイトあがりの、森林久美が顔を出す。

俺たちがいる控室の奥に、男女別の更衣室があるため、ただ通過するだけなのだが、やはり変な空気を感じたのか、森林は、そそくさと俺たちの間を通過していく。

脱線するが、この森林は密かに圭一を想ってるんじゃないかと、俺は踏んでいる。

圭一より一つ年下で、同じ高校の先輩後輩にあたるらしい。
圭一に対する彼女の目線や話し方が、特別な人に対するものに、俺にはみえてしまうのだ。恋する乙女の意思表示は、やはり外から見ていてわかりやすい。

森林は奥の部屋に入ったものの、話を聞かれたら、相当まずい。
もうあまり時間がないな…と、俺の方から話を回避しようとしたら、圭一の方から

「先輩、もう俺、着替えなきゃなんで…すみませんが今日バイト上がってから、少しだけで良いので時間もらえませんか…?公園にいます。」と提案される。

しかし、俺は…できれば公園を避けたかった。
まだちょっと本当は、圭一とそのような場所で二人きりになるのが…怖かったからだ。
奴には絶対にそんなこと、言えないし、言う気もないのだが。

だから俺はバイト先近くにあるカフェを指定し、圭一にバイト終わりにそこで待ってもらうことにした。

俺たちはこの先、どうしたら良いのか…

答えは全然、見つからないままだった。

               
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...