【完結】別れの形

もえこ

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彼へのメール

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「ごめん…もう、今日の場所には行きたくない…今度からは外でご飯とか、カフェとかに行こ。プラトニックで良いから、」

どんな形でもまだ彼と繋がっていたくて、そうメッセージを入れた。

「いやだ、ごめん…好きだ…本当に好き。だからそんなこと、言わないでくれ…今日のことはごめん」


「ううん、もう無理。私、女としてこれ以上みじめな気持ちになりたくない。ね、今度からは最初の頃みたいに、外で会おう。」

「いやだ…俺は君が好きなんだ。あの場所は人目につかずにゆっくりできるし、君とできるだけ長く一緒にいたい。できればずっと、離れたくない…」

好き…その言葉は、
あなたにたくさん…お腹いっぱい…もらった。

私はこの性格だから、あなたに好きって言ったこと、数えるほどしかないのに、

あなたはいつでも、電話でもメールでも、会ったときにも、こっちが恥ずかしくなるくらいに何度も、何度もそう、言ってくれた。

ありがとう、私も好きだよ

それが…私の精一杯の返し、くらいで、
私が自発的に『好き』
…そう言ったことなんて、ほぼ、ないに等しい。

なのにあなたは…何度も何度も…そう言ってくれた。

ありがとう、私本当は、あなたのことが好き…
大好き。

これは言ったことが多分ないけど、口に出しては言ってないけど、伝わっているかな…

あなたがあまりに私に、好きとか大好きとか、言ってくるから私は恥ずかしくて…

言葉なんていらない。
そんな風に心の中で想ってくれていたらそれだけで嬉しいって、そう言ったことがある。

でも、あなたは言った。

言葉は、出さないと意味がない。相手に伝わらない。だから俺は、そうすることにしていると、はっきり。

そっか…でも、私はそういう感情を表に出すのが苦手だから、私はやっぱり言わないよってあなたに言ったことがある。

うん、それはそれ、君は君、俺は俺…だから、俺は言いたいの。今の気持ちをそのまま…君が好きだ。

嬉しかったな、あの時。
いつもあなたがこんな私を好きって言ってくれるから、自分自身を少しだけ、私も好きになれたんだ。

彼は続ける。

「俺は君とずっと一緒にいたい。本当に…でも、いろんなことが君のストレスになるなら…」そう、余韻を含んだメールが来た。

私は、その時の感情のままに返信する。
頭を冷やせば…今思えば、
一呼吸、置けばよかったのかな…

ここが私の悪いところでもあるけど。

「うん…ストレスを感じる。
     あなたは…無神経、だよね」

そんな、短い文面。

あなたの性格なら、この後にくる返信はなんとなくわかってる。

「わかった。じゃあ俺、消えるよ…君の前から。」

やっぱりだ…

そして、私はいつもあなたのことが心配になって、数日経って、元気かどうか、ついメールしてしまう。

今までの喧嘩が、すべてそうだったから。

私にはわかる。


でも、今回は違う。
私はあなたに、もう返信しない。

「はい。」
私はそう、一言だけ返事をして、彼のメールアドレスを削除した。

だからもう、私から彼にアクションを起こすことはできない。
アドレスを残したままだと、未練が残る。
そしていつもの繰り返しになってしまうから。

それからもう、今日で1週間。

彼からの連絡はない。
私からも連絡はできない。


これで、きっと終われる。
そんな気がする。

私は最後の最後に、彼を言葉で傷付けた。

彼に浴びせた、無神経だという発言。

きっと彼は、今までにないショックを受けている。

でも…多分…











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