【完結・R18】もう、少しだけ…

手紙

「…　…　…」

俺は、震える手で…小さく折り畳まれた便せんを開く。

な…んだ、これ…　

『この写真を社内にばら撒かれたくなければ、今夜7時に下記の場所へ一人で来い』

なんだ、これ…　もしかして…　
脅迫…の…　類か…　？

テレビでよく見る、あれだ…
新聞記事や雑誌などから一個一個切り抜いた字を貼り合わせて作られた、怪文書…みたいな…紙…
なんなんだ、これ…　　ふざけている…

まさか…　…　社内の人間に…バレていた…　？

最悪だ…　、嘘だろう…　　…

せっかく、穏便に…事が進んでいたのに…

今だって…　慰謝料が…　直美に対して、順調に払われているのに…　

なんで今…？　
今頃になって、こんなものが俺のデスクに置かれているんだ…　

目的がわからない…　
俺と夏木のことを知っている人間が、この会社にいるのか…？

…そうか、それで…　

　　　なるほど、わかったぞ…　そうか…　この相手は…　　

俺と夏木の関係を妻である直美にばらす…もしくは会社にばらすぞと俺を脅すつもりなのか…

たまたま俺の弱みを握った卑怯な奴が…　脅迫まがいのことをして、
俺から金を…　むしり取るつもりなのかもしれない…

だが、甘いな…　　この手紙をよこした奴がどこのどいつか知らないが、
既に直美は、不倫の事実を知っているのだ…
全てを知ったうえで慰謝料で手を打っているのだから…今更直美にこの写真を見せようが、不倫の事実をばらされようが、正直痛くも、かゆくもない…

俺と直美…あくまで当事者間…夫婦の中ではもう既に解決したこと。　

怖いものはない…　よし、大丈夫だ…　
　
俺はその夜、脅迫されている身でおかしな話ではあるが、意気揚々と…指定の場所へ向かった。