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ある男
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「あの…もう少しだけ、鮮明な写真はないですか?これだと、女の顔は見えますが男の顔が…完全にぼやけてますよね」
喫茶店の一角。
俺がそう話すと、正面の若い茶髪の男が、がっくりと肩を落とす。
この男で本当に大丈夫なのだろうか…俺は少しだけ不安になる。
だが、依頼は依頼…
これは正式な契約なのだ…成果がないと、やはり簡単に、料金を支払うわけにはいかない。
「これだとすみませんが、やはり支払いはできません…」
俺は向かい合う男に、はっきりとそう告げる。
男が顔を上げ、俺をすがるように見つめる。
だが、その手には乗らない…
これではやはり無理だ…誰だかわからない写真は、当然使い物にはならない…。
「距離的にこれが精一杯、だったんすけど…すみません、もう一回だけチャンスもらえますか?…これまでの頻度からすると、あと数日あれば、この二人はまた絶対会うと思うので、今度こそキチンとしたもん、撮りますんで…」
男はかなり必死だった。
よほど金に困っているのかもしれない…
俺は今度こそは、と…この男に希望を託すことにする。
次に駄目だったら他の人間を探そう…頭の隅に、そんなことを思いながら…
「わかりました…綺麗に写ってさえいれば、必ず謝礼は準備します。よろしくお願いします。」
「了解です、では、失礼しまっす…」そう言って、茶髪男は足早に店を出て行った。
俺は静かに、冷めかけの珈琲を口にした。
口の中に、ぬるい苦みが広がる…
だが、もう少しだ…
もう少しで、 手に入る…
俺は唇を噛み締めながら、高ぶりそうになる気持ちをなんとか、抑えた…
喫茶店の一角。
俺がそう話すと、正面の若い茶髪の男が、がっくりと肩を落とす。
この男で本当に大丈夫なのだろうか…俺は少しだけ不安になる。
だが、依頼は依頼…
これは正式な契約なのだ…成果がないと、やはり簡単に、料金を支払うわけにはいかない。
「これだとすみませんが、やはり支払いはできません…」
俺は向かい合う男に、はっきりとそう告げる。
男が顔を上げ、俺をすがるように見つめる。
だが、その手には乗らない…
これではやはり無理だ…誰だかわからない写真は、当然使い物にはならない…。
「距離的にこれが精一杯、だったんすけど…すみません、もう一回だけチャンスもらえますか?…これまでの頻度からすると、あと数日あれば、この二人はまた絶対会うと思うので、今度こそキチンとしたもん、撮りますんで…」
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よほど金に困っているのかもしれない…
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次に駄目だったら他の人間を探そう…頭の隅に、そんなことを思いながら…
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