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真剣告白

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「…さて須賀君。古文って言ったよね?今日の授業の、どこがわかんなかったのかな?」

瑞樹が真面目に、教科書を開いて俺に問う。

まあ、そりゃそうだ…実習中の生徒が授業について質問をしてきたなら、教師はなんとか時間を作って生徒にそのわからないところを教える義務がある…普通のことだ。

「日向先生…先日は驚かせましたか?…すみませんでした。」
俺は一切、古文のことには触れずに、一昨日の夜の話題を口にした。
古文とか勉強とか、そんな話をしている暇はもちろん俺にはない。先生を呼び出す餌にして悪いけど…

「…須賀君、君、さっき古文のことで教えてって…言ったよね?…その話…じゃないようなら、もう僕は行くよ…」

がたんと音を立てて椅子からすぐに立ち上がろうとした瑞樹の細い腕を、俺は咄嗟につかむ。
まだだ…全然話せていない、行かせるわけには行かない…

「いっ…た、痛いよ…須賀…君…もう…一体…なん…なの…君…っ…」瑞樹は立ったまま、俺に手首を掴まれたまま…呆然と俺を見降ろす。

黒縁メガネの奥の…奴の瞳が…不安そうにゆらゆらと震えているように見える。

「先生…とりあえず、座ってくれよ…俺まだ、全然、話せてないし…頼むから…何も、しないから…」
今日は瑞樹に、この前のように、無理矢理に乱暴なことはしないようにしようと、心に決めていた。
できるならせめて、言葉で思いを…俺の今の悩みというか苦悩を…伝えたい…俺は本当に、そう思っていたのだ。

「…わかりました…とりあえず座るけど…前みたいなことは、絶対にやめて…しないで、ください…」
瑞樹がそう小さな声で言って、また椅子に座りなおす。

「はい…なんでしょう…、…ちゃんと聞くから…話してください…」瑞樹が正面から俺を見て、促す。

唇が…小さくて桃色で…可愛い…いますぐキスして、…そのあたりで押し倒して…裸にして…、…

…そんな妄想を、なんとか脳内に封じ込めながら、俺は重たい口を開く。

「あの…回りくどい話するのも、あれなんで…もう直球で、とりあえず、言いますね。俺…どうやら…先生のことが…す…す…」

う…言えねえ…思えば俺は…今まで自分の方から誰かに、好きだとか、愛してるだとか、告白したことが一度もないのだ。ただの一度も…。
いつも相手の女の方から、まれに男からも寄ってきて、好きだの愛してるだの、抱いてくれとか滅茶苦茶にしてくれとか…そんな申し出ばかりを…ただ、受け止めてセックスしたりして、適当に…何不自由なく、生きてきた。

こんな立場になって初めて気づいたが、他人に「好き」…とか簡単に言える奴って、ある意味すげえ…。その相手の答えもわかんねえのに、一方的に告白するなんて…そんなチャレンジ精神、俺には全く持ち合わせていない。

しかも、無理矢理あんなことをしたあとだ…瑞樹からの答えはほぼ予想できる。多分、いや100パーセント、拒否されるどころか…距離を置かれるに違いない。

それでも俺はこの今の気持ちを、奴に伝えておきたかった…。
瑞樹に対する耐えがたい欲望とか…こいつの表情や泣き声…華奢な身体つき…コイツのまとう全て…に欲情してしまう俺の身体は…もう、きっと普通じゃない。

理屈抜きで…俺は恋に落ちたんだ…男に…
だから、性別とか関係なく、性欲のベクトルが…こいつに向かった…

瑞樹が男だとか、そんなことは関係なく…コイツを俺のモノにしたい。…だたそれだけ。

俺は意を決して、再び口を開く。「先生のことが、好き…みたいなんです。だから…この前つい…あんなこと、しちゃいました…すみません…でも俺、先生が許してくれるなら…続きがしたい…」

ああ…俺のこの阿呆な口が…必要最低限の告白、ではなく、必要以上の…告白をしやがった…
でももう、いいや…知らねえ…全部、吐き出したからすっきりした…もう、あとは…あとはこいつの答えだけ。

俺は瑞樹を正面から見据える…

目の前に…ゆでだこのように真っ赤になった…瑞樹…
おや…おやおやおや…???

    どうしたん…先生…?































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