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同じ土俵

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「キス…したのか…?日向…先生と…?」

…う、…正確には…キスと…+アルファ…だけど…

「うん…しちゃいました…まあ、ちょっと強引に…いやかなり、無理矢理に…すみません…」

加藤の顔が怒ってんのかなんなのか、顔が強張り過ぎてて…俺はつい、敬語になる。
もしかしたらだけど…俺がアイツとキスしたことに、怒ってる…のかも…しれない。

「…おまえ…マジで、日向先生が…好き、なのか…?それとも、一時的な…気の迷いか…?」加藤が…ゆっくりとした口調で、俺に尋ねる。

「あ…イヤ…もちろん…まだ、わかんね…だって俺…今まで…男とか…好きになったこと、ねえもん…だからまあ。二択で言うと…気の迷いなんかな…でもさ…俺… アイツに…なんつうか…反応…しちゃうんだよね…今まで、女にしか…そんな風になったこと…ないのにさ…だから…まだ…自分でもよくわかんなくて、困ってるとこ…」

俺はハッとする。

俺のことを…好きだと告白した加藤に…こんなにリアルなことまで…話す必要も…なかった気がする…。加藤の固まったままの表情を目にして、そう、思った。

「…じゃあ…さ…俺にもまだ…可能性…あるわけ…だよな?」加藤が俺を向き直る。

俺はぎくりとする。

俺は瑞樹には反応したが…加藤に対してはもちろん一度もないし…やっぱり加藤は友達で…男同然なのだ。可能性なんて、ないに等しい…いや、ありえない。

「あ…あのさ…日向のことはともかく…さ、ごめん、俺…加藤のこと…そんな風に見たこと…一度もねえし…だってお前は、完璧に男…じゃねえか…俺より…体格いいし…だから…いっ…!!…つっ…」加藤に突然、手首をつかまれる。痛いよ…離せ…。

「俺はずっと…一年の時から…お前だけを見てきた…女…に…全く興味ねえし…。でも、お前が当然ノーマルで…恋愛相手が女だから…俺は…なにも言えなくて…見守ろうと…我慢…できてた…。だけど…さ」加藤がいったん言葉を切る。

「お前が…男の日向先生とどうこう…なるくらいなら…俺は…おまえを諦めるわけには、いかない…とりあえずは…同じ土俵に立ちたいから…キス、させろよ…な…」

加藤が、その…俺と張るくらいの…整った顔を近づけてくる…欲情したような…オスの表情… 
は…?嘘…だろ… 大体同じ土俵に…って、なんだ…その理屈…

「冗談、言うな…だから俺はおまえのこと…そんな風に見たことないっ…って。」
軽く笑いながら、なんとか奴を押しのけようとすると、もう片方の手首も掴まれて、一気に床に押し倒される…コイツ…力が強い…マジで…ほどけない…

冗談じゃない…俺はこのかた…女を押し倒すことはあっても、押し倒されたことはない…のに…。なんか…屈辱感が半端ない…そのまま、奴の顔がさらに…近付いてくる。

「おい…マジで…殺…すぞ…おまえ、やめっ…ろ、んっ!…んーっ…!!」…唇を、無理矢理…塞がれる。

両手を床に強い力で縫い付けられたまま…唇を割って…熱い舌を…ねじ込まれる…イヤだ…やめろ…
                
   「う…んん、ん…ふ…んンっ…」

瑞樹に無理矢理にキスをしたその当日に…俺は友人だと思っていた男に…同じことをされ…

俺はもちろん、絶対に泣くつもりはないけど…瑞樹の気持ちが…少しだけ、わかった気がした。
                                            







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