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加藤という男

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「…は…??」

俺は…一瞬、耳を疑った…。
今この男は…なんと言った…?自分の耳に…問うてみる。

「え…??今、おまえ…なんつった…?…は?…?」もう一度、声に出して奴に問う。

加藤は、珈琲カップをゴトリと置いて、俺に向き直り、口を開く。

「俺は、おまえ…須賀のことが…好きだ…もうずっと、前から…」加藤の表情は…真剣そのもの。

あろうことか、俺は言葉を…うまく紡げずにいた…
だって…コイツのこの表情…多分だけど…冗談とかで話している顔じゃない…マジで…真剣に…俺に、告げている顔だ。

「……えっと… 」俺は馬鹿みたいに…口を半開きにしたまま、何も話せないまま、加藤を見つめていた。
なんて言葉をかけたらいいか…全然、わかんねえ…
だって、この加藤が…俺のことを好きだとか…とてもじゃないが…信じらんねえし、今まで…予想もできなかった。

確かにこいつは今まで、女からの告白を、見事に滅多切りしていて、確か、コイツが高1の時、他校の超がつくほどの美少女に告白された時も、一晩考えるまでもなく、その場で速攻断ったと…噂で聞いたことがあった。その美少女を見たことがある周りの男どもは、彼女をふるとかもったいねーだの、信じらんねーだの、そんな話をしていた…気がする。

そうだ…それで、俺らで…あらためて加藤がその申し出を断った理由をしつこく聞いたりして、加藤をいじったときに、確か、ずっと想ってる奴がいるとかなんとか…言っていたんだ…

でもまさか…その相手が…俺だった…?とでも、言うのか…

まさか…。

だって、俺…完全に見た目…男だし… 

たとえば瑞樹みたいに、華奢とか女っぽいとかチビとか…そんな要素は一つもない…

唯一、色素が薄いっていうか、色白で茶髪…ってくらいの特徴があるだけで、あとはまあ、異常に顔が整っている…
…おっと、これは自慢になりそうだが、ほんと、そのくらいで、とりあえず、まあまあ男子の要素が強いと思うんだけど…

なのになんで…加藤の好きな奴が…俺…になるんだ…
今まで全くわかんなかったけど…もしかしたら…そもそもコイツは…ゲイ、だったりするのだろうか…

「あのさ…加藤…俺…ちょっと今少し、混乱してる…俺…完全に…男、だぞ…?」俺がなんとか、そう言うと、

「そんなの、わかってるよ…おまえが滅茶苦茶、女好きなこと、もちろんよく見てるしわかってるし…こんなに早くお前に…言うつもりなんて、なかったんだけど…でも…アイツが…日向先生が…来てからお前…なんか様子変だし…それで俺、少し焦ったのかもしんねえ…。おまえがアイツのこと…好きになってきてるんじゃねえか…とか、段々気になって…」

加藤が続ける。

「んでさっき、さ…電話の先で、「助けて」…って叫んでた奴って…ひょっとして…日向先生…とかじゃないよな…?声が似てる気がして…んで気になって俺、すぐに家を飛び出してきたんだ…」

 うわ…ヤバい…完全にバレてやがる…。
             
 これは…どう答えるのが、正解なんだ…

                                     つづく






















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