【完結・BL】泣いている君が好き（須賀編）

日向先生

その子は…いや、その先生は、日向瑞樹ひなたみずきといった。

うちの高校が母校で、今通っている教育大学からの紹介でここに実習できたらしい。
年齢は２１歳とか…って、嘘…だろう？…って、最初、そう思った。
見た目的に…絶対俺よりいくつか年下だと思っていた。申し訳ないが、下手したら中坊…にも見えてしまう。

俺は、前に立っておどおどしているようにも見える奴を…こっそりと観察する。
童顔…なのもそうだけど、身長があんまり…高くない。多分１６５～…？センチ位しかないだろう…
…んで、見ただけでわかるような、ほっせー身体と、華奢な首筋…やっぱなんか…異様に白いな…
あと、ちょっと厚いフレームの、黒縁メガネをかけていた…冴えない感じの…。

…あれは確か映画館で、アイツが持ってたやつだな…俺が紳士なふりして、アイツにかけたあのメガネ…

そして…俺は気付いてしまう。
眼鏡をかけているせいか、少しだけ目が小さく…見えるような…レンズが厚いのかもしんない…。

あの映画館での、小動物号泣事件…では、コイツは最初、眼鏡をとっていて、大きな瞳をウルウルさせながらハンカチで抑えつつ、可愛く泣いていた…俺はそれを見て、ある意味…やられちまったわけだけど…

眼鏡をかけていると、だいぶ違う印象だ…うん。
白くて小さくて華奢な体形で…綺麗な黒髪で…実は美形な感じだけど…メガネ効果で、少し冴えない感じになっている。
よしよし、それでいい…その眼鏡はずっとしたままでいて、間違っても取ったりしてその大きくて可愛い目や…素顔は、他の野郎に、見せんなよ…

ん…あれあれ…やっべー…俺…中坊相手に…いやいや、先生の卵相手に…何考えてんだ…。
…って、俺…やっぱなんか、おかしいな…アイツは男だ…　男男男…

んでもって、俺は、女！が…好きな男…！！…なんだ。俺が奴を何度かチラ見しながら、モヤモヤ考えていると、

…　不意に、奴の視線が俺に…とまった…

ドキンっ…俺の心臓が跳ね上がる…やっぱ、気付いた…かな…もしかして、そうなのか…

俺は見返すが、奴の表情は読めない。さすがにこんな場で、映画館での話など二人で雑談を交わすわけにもいかないし、きっとスルーだろうなって…構えていたら、やっぱり見事なまでにスルー。

視線をすぐに正面に戻し、再びお辞儀をして、ソイツは教室から出て行った。

捜す手間が省けた…向こうの方から、獲物…いやいや、小動物が…やってきてくれた…。アイツがここにいる２週間で、絶対に…俺のこの、おかしな胸の高鳴りの原因を調べて、決着をつけてやる。