【鏡の向こう側】

柚木さくら

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[鏡の向こう側などあるわけないのに]

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私は祖母から譲り受けたこの大きな姿見を見る度に思うことがある。

「鏡の向こう側はどうなっているのだろう」

 多分こんな事を考えるのは私だけだろう――だけど何故か気になってしまうのだ。ファンタジーアニメや小説などの影響だろうか。

 普通に考えれば向こう側などあるはずがないのだ。いや――普通に考えるまでもなく裏側などあるはずがない。 ただ……鏡の裏側と壁があるだけなのだから。

 だが、手を伸ばし鏡に触れれば、向こう側に行けるのではないか――いつもそう考えてしまう。

 そして今日。その鏡に手を伸ばしてみた……結果は自分の手が映るだけ。
当たり前だが向こう側に行ける訳がなかった。

 
だけど私は、次の日もそのまた次の日も、同じことを思うだろうし鏡へと手を伸ばし、向こう側へなど行けないというのを繰り返すだろう
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