【いつも見る同じ夢】

柚木さくら

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いつも見る同じ夢

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いつも見る同じ夢

 私は毎晩同じ夢を見ている。
いつも同じ場所で私は『あなたは誰?』と呟いている。
 夢の中の私は海を見つめていて、波の音が心地良いのか『良い気持ち』そう腕を空へと伸ばしながら呟けば、決まって呟いた後に後ろから私を呼ぶ声がするのだ。
 
 私はその声に振り向き微笑んでいるけど……その人物はもやおおわれていて誰か分からない。
 ただ懐かしい感じがするのは確かで、『あなたは誰?』と問いかけた所でいつも目が覚める。

*****
 やはり今日もあの夢を見た。雲ひとつ無い空――波の音が心地良い。
 そして空に向かい腕を伸ばしながら『気持ち良い』呟く言葉も同じだ。そして次は私を呼ぶ声……その声に微笑みながら振り返る。
 ここまではいつもとまったく変わらないのだけど、今日は少しだけいつもと違った。
 
その違和感に数秒首を傾げる……そうか! 相手にかかっているもやが薄くなっているのだ。だけど相変わらず相手の事は思い出せない。
だから『あなた誰?』と心の中で呟いた所でまた目を覚ます。

*****
今日もまた同じ夢だ。もう何度見たかも忘れてしまったくらいだ。
 雲ひとつ無い空。心地良い海風。空に向け腕を伸ばす私。
『気持ち良い』と呟く私。ここまではまったく同じ。
 呟いた後に私を呼ぶ懐かしい声……その声に振り向く私。
 相手にかかっていたもやは顔から下の部分のは無くなっていた。
『あなたは誰?』今日も問いかけた所で目が覚める。
 目が覚めて思った事……もやがかかってるのは顔だけ。と言うことは、もしかしたら次に夢を見れば誰か分かるかもしれない。
 そう思いながらいつもの日常が始まる。

*****
この夢を見始めてから、何日か数えていたけど、もう数えるのはやめた毎日見ている同じ夢。
 
雲ひとつ無い空に向かって腕を伸ばす私。
心地良い海風が頬を撫でていく。
『気持ち良い』と呟く私……それから私の名前を呼ぶ懐かしい声に返事をし振り返る。
 すると……昨日まで顔にかかっていたもやが全て無くなっていた。

『あなただったのね』と呟きその人物を確認した所で目が覚めた。
まだ隣で眠っている人物を見る。
 
そう……いつも夢の中で、私が『あなたは誰?』?と問いかけていた人物は、数年前偶然にもこの街で再会した私の大好きな人であり、今日私の夫になる人だったのだ。
 
何故何回も同じ夢を見て、姿にもやがかかっていたのかは分からない……もしかしたら不安から来るものだったのかもしれない。
 でも、今日の夢でもやが晴れたのだからこれ以上考えるのはやめた。
 これから私は幸せになるのだから……と隣の彼を起こした。
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