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19.突撃! 魔法天文台 〜リリアンの職場訪問〜③

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 ぷりぷりと怒るアルベルトをなだめてから、当初の予定通りリリアンは天文台の見学へと繰り出した。アルベルトは案内役をエマにしたのをギリギリまで替えたがっていたが、他に適切な人物が思いつかず断念した。眉間にぎゅうぎゅうに皺を寄せるアルベルトにシルヴィアが先日の鈴蘭のブローチを取り出して見せると、それでようやく部屋を出る許可が下りた。「ソレインが妙な動きをしたら、その場で即時発動するように」という物騒な言葉付きで。
 ブローチを使えば何が起こるのかわかっているリリアンは頰を引き攣らせたが、エマは目を輝かせていた。「こ、今度はどんな体験が!?」と呟いていたが、もしも使うような事態になったら、今度は痣では済まないだろう。リリアンにその気はなかったが、そうなったらなったでアルベルトが何をしでかすか分からないので、ぜひとも大人しくして頂きたい。

「まずは新規の魔道具開発をしている研究室をご案内しますね」

 エマはそう言ってリリアンを先導する。階段を降りてすぐ下の階がその研究室らしい。来た道を引き返し、リリアンは慎重に階段を降りていく。
 螺旋状の階段をぐるりと一周すると、目的の扉が見える。ここも所長室のようにひとつのフロアにひとつの部屋しかないそうだ。

「ここではまったく新しい魔道具を開発しております。きっと見た事のないものばかりだと思いますよ」
「そうなの? 楽しみだわ」

 エマはノックもせずに扉を開いた。そうして目に入った光景に思わずリリアンは目を見張る。
 室内は実に雑多だった。家の執務室のように本と紙束があるのは当然として、壁の棚に色とりどりの液体が入った瓶が並んでいたり、金属でできた無骨な箱が置いてあったり。かと思えば植物の鉢植えがあって、その横には木材が壁に立てかけられている。

「リリアン様、足元に注意なさって下さいね。たまに瓶なんかが転がっているので」
「えっ? え、ええ。分かったわ」

 辺りを見回していたので足元まで気にしていなかった。声を掛けられ、はっとして視線を下ろしてみれば、確かに机の脚の影から作りかけと思しき魔道具が顔を覗かせている。そのままぼんやり歩いていたら躓いていたかもしれない。
 呆けていたのをリリアンが反省していると、エマがくすりと笑う。

「リリアン様がお怪我なさると、アルベルト様に叱られますね」
「ごめんなさい。気を付けます」
「いいえ、私がお世話差し上げなければ、と気付きましたの。それに、お叱りを受けるのも悪い事ばかりではないので」
「叱られるのが、悪い事ではないの?」
「ええ、もちろんですわ! きっとまた先程の魔道具か、別のものを使われるに違いありませんもの! ……ああ、次はどんな風に使われるのかしら。砂状だから成形し易いに違いないわ。固めてなにかにするのでしょうけど、想像がつかない……! 早くこの目で見たい……!」

 エマは、また恍惚として想いを馳せている。余程さっき手を締め上げられたのが気に入ったのだろう。リリアンからして見ればあれは紛れもなく拷問だったのだが……。
 固まるリリアンに気付いたエマは、こほんと咳払いをしてから「さて」と仕切り直した。

「新規となると、様々な手続きが必要になります。その為には申請先の所長室が近い方が便利でしょう? それで所長室のすぐ下に研究室が置かれたのです」
「確かに、その方が良いでしょうね」

 なるほど、とリリアンは頷いた。それは合理的に見える。他の塔からここまで来るとなるとそれなりに手間になるだろう。頻繁に手続きが必要になるなら、ここが一番都合がいい。
 それで所長室の真下が新規の道具開発の研究室になっているのか、とリリアンは感心したのだが、それだけではないのだとエマは首を横に振る。

「合理的に見えますでしょ? でも本音は違うんです。魔導士っていうのは研究が第一で、それ以外は無頓着な者が多くて。造ったはいいけど内容を書類に落とし込むのは面倒、それを提出するのは更に手間、というわけで、所長室に最も近い場所に研究室があるのです。放っておくと半年以上提出されない事もあるので」
「まあ……それでは皆様、お困りなのでは?」
「本当に困るのは、魔導士自身なんですけどね。造っても登録が終わらないと世に出せませんから。まあそれでも、最後には書類を運ぶのもしなくなったので、オリバー所長が取りに来ているのですが」

 エマはちらっと扉に視線を向ける。扉の真横には背の高いスツールがあり、その上には籠が乗っている。
 籠からは、紙の端が覗いていた。もしかしなくてもあれが提出しなければならない申請書だろう。

「そういうわけですから、どちらかというとそっちの手間の方がかかるというか」
「お仕事なさるのも大変ですのね」
「そうですねぇ」

 ふふふ、とエマは笑っているが、彼女も彼女なりに苦労があるに違いない。普段天文台を取り仕切っているのはオリバー所長で、エマは彼の右腕のように見えた。やる事は多いだろう。奔放な女性だが、天文台の副所長ともなると図太くないとやっていけないのかもしれない。

「ではこちらへ。中を案内しますね。と言っても、見て楽しいかは保証できませんが」

 エマは笑顔でリリアンを促す。「ええ」とだけ返して、リリアンはそれに従った。
 ひとつのフロアを使用しているだけあって室内は広い。それを柱の位置で区切るようにして本棚を置いておおまかに分けるようにしてあるそうだ。区分けられているのは四つ、それぞれで別の研究を進めている。
 ここで分けるなら、初めから部屋を四つ準備すれば良さそうなものだ。が、あえてそれをしないのはお互いの監視を兼ねているらしい。どういう事かと尋ねれば、研究に没頭するあまり倒れる者がでるのを防ぐ為だと言われた。
 仕切り代わりの本棚は胸くらいの高さだ。確かにこれなら、不調となった魔導士が居ても他の誰かが気付くだろう。リリアンはそう思ったのだが、直後にエマが「まあ、気付くかどうかは半々ですけど」と付け足した。それでは意味が無いのではないかとリリアンは思ったりした。
 気を取り直して改めて部屋を見回してみると、魔導士達が作業台に向かって何かを呟いている。その隣ではひたすらペンを走らせている者がいたり、金属片同士をカンカンぶつけている者がいたり。側から見れば異様でしかない。

「……すごいのね」
「研究というのは結構地味ですので。あんなものなのです」

 リリアンは魔導士達が訪問者に気付く素振りも見せず打ち込む姿を言ったつもりだったが、エマは違うように受け取ったようだ。が、もっと魔法を使って加工やなんかをしているものだと思っていたリリアンとしては、エマの言葉は的外れとも言えない。

「見学に問題のないものは……ああ、これなんかいいですね」

 中央の通路を進み、エマが指したのは薬箱くらいの大きさの箱だ。木製で装飾はない。蓋は開いていて、中には金属の歯車やら魔石やらが複雑に配置されている。
 内側の側面にはびっしりと模様が描かれていた。魔法陣を構成する文字だろう。
 箱は大きめの作業台に無造作に置かれていて、設計書のような用紙も開きっ放しだ。

「あの、これは?」
「携行可能な天候記録機ですわ。今のものは大型ですので、それを小さくするのが目的です」
「今のものはどのくらいなのかしら」
「ヴァーミリオン家の馬車くらいでしょうか」

 リリアンは目を丸くする。

「それを、この大きさにするのですか」
「ええ。といっても、まだきちんと稼働すらしていませんが」

 大型の魔道具を小型化する研究はよくある事らしい。その過程でうまく作動しないなんてざらで、実用化せず数年経過するというのもあるそうだ。だから現在の状況は別に悪いものでもないとエマは言う。

「携行するという目的は、理解できますが。ですが、馬車くらいの大きさであれば、さほど困るものでもないのでは?」

 リリアンがそう言うと、エマは首を横に振る。

「馬が行ける範囲であれば無論充分です。でもこれはその先……例えば山の上や、道の細い場所での使用を想定しています。ですので、人の手で持てるものであるというのが肝要なのですわ」
「なるほど……!」

 リリアンは自分の発想が甘いものだと痛感した。そして同時に恥じ入る。山の上というのはリリアンの生活圏には無いものだから、そこまで発想が至らなかったのだ。
 山の上で天気を記録する理由までは分からなかったが、そういう目的があれば、これだけ小型化するのも納得だ。リリアンは感心して箱を覗き込む。

「どうして作動しないのでしょうか」
「それは……ねえロイ。これ、なんで動かないの?」

 エマは、近くでがりがりと書き物をしている青年に声を掛けた。青年は声には反応したが、顔を上げる様子はない。

「なんだいエマ、邪魔しないでくれるか」
「いいじゃない少しくらい。それよりも、なにが理由で動かないのよ」
「単純な話さ、良くあるだろう。大型の魔道具を小さくするにあたり、なにが問題になりやすい?」
「機構、または回路を敷くのに必要な面積が足りない、かしら」
「その通り。これもそうだよ。内側に敷いたけど魔法陣を描くスペースが足らないんだ。まだ半分しか描いてないのにだよ! どうやって描ききれるよう回路を削れっていうんだよ、もう削れる所無いよ……」

 ぶつぶつと言いながら青年は頭を抱えてしまった。

「……というわけですわ」
「まあ……大変ですのね」

 エマは苦笑し振り返った。リリアンが思っているよりも、こういった作業は難しいものらしい。
 許可を貰ってから、リリアンも箱を持ち上げてみた。箱はずいぶん重たい。いつぞやのピクニックでアルベルトに渡された弁当箱ほどではないが、ずっしりとしていて、ずっと持っているのはリリアンには難しそうだ。
 けれども大人の男性であれば、もうちょっと重たくても持てるものかもしれない。そう思ったリリアンは、ふと思い付きを口にする。

「内箱を入れてはだめなのでしょうか?」
「内箱?」
「ええ。中に一回り小さな箱を入れるの。その内箱の外側にも魔法陣を描けば良いのじゃないかと、そう思ったのだけれど。重くなってしまうかしら?」
「……そうか、その手があったか!!」

 リリアンが言った途端、ロイという青年魔導士が声を上げる。驚いて思わず箱を落としそうになったが、シルヴィアが手を伸ばしてくれたので事なきを得た。
 そっと箱を机に戻していると、近くの魔導士達が集まってなにやら議論を始める。

「内側と重なるような魔法陣にすればいいんだな? 再計算してみる」
「外箱とぴったり触れるような、精密なものでないとだめだろう。そんなの準備してないぞ」
「木材では乾燥すると縮む。いっそ金属にしては」
「でも木製でないと術式との親和性に欠けるんだ。湿度で差が出にくい材木を探そう」
「なあ……そうすると内箱の内側にも掛けるよな……?」
「そうすると今の三倍の回路か……? な、なら、今と同じ機能に出来るんじゃないか」
「なんてこった……! 早速試してみよう!」

 次第に議論は白熱していき騒然となる。そうこうしているうちになにかが決まったらしく、あちこちへ魔導士が駆け出していった。それをリリアンは見送ったが、あっという間に周囲は無人となってしまった。

「みんなどこかへ行ってしまったわね」
「ええ。でも問題ありません。むしろ良かったくらいです」
「そうなの?」
「はい。彼らに代わって私からお礼申し上げますわ、リリアン様。これで開発が進むでしょう。なんなら今夜にでも試作が完成するのじゃないかしら」

 エマは、手元の箱をそっと撫でる。それでようやくリリアンにも合点がいった。さっきのリリアンの発言で、何か彼らも思い付いたものがあるのだろう。それを試すのに全員が手分けをして準備を始めたようだ。
 けれど、リリアンは魔道具のことも魔法のことも良く知らない。そんな素人の発言でうまくいくほど、簡単なものではないはずだ。

「で、でも、うまくいくとは限らないのでは」
「それで良いのですわ。開発はうまくいかなくて当然なのです。自分達では違う発想が思いつかなくなるものですから、新しい手段を取り入れるというのが大事なのです」
「そう……?」
「失敗は付きものなので、深く考えなくても大丈夫ですよ」

 にこりと微笑んでエマが言うので、そんなものかとリリアンは割り切る事にした。もしもうまくいくのならそれでいいだろうと、そう思うようにしたのだ。
 そんなリリアンの隣で、エマが腕を組んで呆れた声を出した。

「にしてもリリアン様へご挨拶がありませんでしたね……どうぞお気を悪くなさいませんよう。魔導士はああいう生態なのです」
「ふふっ。ええ、気にしていません。皆様とても熱心で、驚きはしましたけれど」

 細かいことを気にしない生態、と言われてしまえば納得しないわけにいかないだろう。リリアンはくすくすと笑い声を上げた。
 ——アルベルトに対してああだったから、位に囚われない人なのだと思ったが、違うようだ。エマという人は随分茶目っ気のある人柄らしい。リリアンは彼女をそう判断した。

「さあ、次へ参りましょう」

 誰も居なくなってしまいましたしね、と言うのに再び笑って、リリアンはエマの後に続いた。


◆◆◆


 次に案内されたのは、さっきの区画の真横の空間。こちらでは今まさに新しい魔道具の開発中なのだそうだ。
 エマに手渡されたのは白い大判のスカーフ。さらりとした感触は絹、リリアンも見慣れた色合いだ。

「これは?」
「雨を降らせる布、それを目指したスカーフです」
「雨を降らせる……?」

 思ってもみなかった機能だ。布が雨を降らせるというのは、一体どういう事だろうか。

「スカーフ……布地が雨を降らせるのですか?」
「そうです。砂漠で使用するのですよ、日除け兼水袋として」
「それは素晴らしいわ!」

 もしも実用化すれば大発明だ。砂漠を行く遊牧民だけでなく、物資の輸送の為横断しなければならない者達のどれだけの助けとなるか。緊急用としてだけでなく、荷物を減らす事にもなる。大勢の命に関わる為か、融資する者も多いのだそうだ。それはそうだろうなとリリアンは頷く。

「ぜひ実用化して欲しいわね」
「私達としてもそうなって貰いたいと思っているのですが、うまくいっていないのですよ。刺繍で魔法陣を刺しているんですが、魔法が発動しないのです」
「魔導士が使っても?」
「ええ。同じ魔法陣を紙に描いたものは普通に使えたので、魔法陣のせいではないはずなのですが」
「不思議……。発動しない魔法陣だなんてあるのね」

 エマはそれに苦笑する。

「意外とあるものですよ。まあ、ほとんどが暴発するとか、想定外の現象を引き起こすのですけれど。これは本当に、何も起きなくて」
「お父様に見て頂くのではいけないの?」
「こういった不備のある魔道具をすべてアルベルト様に見て頂くわけにもいきませんので」
「それは、そうね」

 肩を竦めるエマに、リリアンは微笑み返す。さっきの箱もこの布も、機能を十全に果たしていないという意味では似た様なものだ。それが天文台全体となると、きっと数え切れないくらいたくさんあるだろう。いくらすごい魔法使いである父であったとしても、天文台すべての未完成の魔道具を見て回るのは無理だろう。
 ただ、なんとなくだが、時間が掛かるだけで不可能ではないのでは、とリリアンは思ってしまう。

(お父様に作れない物があるとは、とても思えないのよね)

 なにせあの〝リベラ〟のような魔道具を作るくらいだ。発想もさることながら技術力が高いのは間違いない。
 けれども気紛れな人だから、やっぱり無理だろう。気が乗らないと断るその様子がありありと目に浮かんで、思わずリリアンは口角を上げた。

「これは要研究ですね」

 エマはそう言って布を撫でる。残念だが今後の改良に期待しよう。リリアンももう一度刺繍部分に触れた。
 スカーフには、これ自体に魔力は無いようでなにも感じられない。それが不思議だった。魔法陣と分からなくとも、明らかに普通のスカーフとは違う意匠。これだけ見ると、魔力が無いのはかえって不思議な気がしてくる。

「魔法は普通、自分の属性のものしか発動させられないのよね? それはどう解決しているのかしら」
「術者の魔力から属性を排除する機構が組み込まれています。魔力とは本来、ただのエネルギーですから。属性を帯びた魔力は、言ってみれば色水なのです。色が除外できてしまえば、理屈で言えば純粋な魔力のみが残るのです」
「属性を、排除……? そんな事が可能なの?」
「ええ。と言っても、実現できたのはこの一例のみでして。どうやら水属性に変換するのは可能だと分かったので、このスカーフが開発されたのです。けれども肝心の魔法が発動しなくって」
「すごいわ。それでもこれだけのことができるなんて! さすがは天文台の魔導士ね。では、これは魔導士でなくても使えるように、どんな工夫がされているの?」
「えっ」
「えっ?」

 リリアンは瞬いた。目の前でエマがぱちくりと瞬きを繰り返しているが、どういう反応なのだろう。思わず首を傾げて続ける。

「魔法陣を発動させるのは魔法を発動させるのと同じ。魔力がなければ、水を出せないのよね? 魔力の無い人はどうやって使うの? これから魔石を縫い付けるのかしら?」
「それは……」

 その言葉に、エマがすっと視線を外した。

「……要研究、ですね」

 それでリリアンは、魔導士以外がスカーフを使用する、というのを想定していなかったのだと察した。そっとスカーフを畳み、「期待しています」とだけ伝えると、エマが気まずそうに眼鏡を掛け直していた。


◆◆◆


「お恥ずかしいことに、ああいうのもざらでして。まともなものをお見せできておらず申し訳ない限りです」
「そんな事ないわ。とても楽しく見学させて貰っているもの」
「お気遣いをありがとうございます、リリアン様」

 コツコツと靴の音が廊下に響く。エマは、さっきの部屋を出てからずっとこめかみを押さえている。「どうして気が付かなかったのかしら」と呟いているのが聞こえたので、相当ショックだったのだろう。

「販売先が決まっていなくて、かえって良かったですわ。納品直前であったらどうなっていたことか」
「確かに、それはそうね」
「仮にあのスカーフがちゃんと機能する完成品だったとして、ですが。いざ納品となった時に問題が見つかった、一から作り直すことになった。そうなるとまず生地を織るところから始めねばなりません。新型の織り機を使ったとしても、魔導士が魔力を込めながら織る必要があるので、なかなか作業が進まないのです。魔導士の魔力には限りがありますからね」
「織り機がどれだけ早くても、魔導士の作業には限度があるのね?」
「その通りですわ。そして生地が出来上がらなければ、スカーフに加工できない。つまりそもそも、納品ができないという事になります」
「まあ……」

 なるほど、確かにそれは困る。納品できなければ売上が入らないのだ。ようやくリリアンはエマの心配を理解した。

「納品しなければ研究費用に差し支えるのね。では確かに、あれでは困ってしまうわね」
「そうなんです。でも納品出来るだけいいのです、売れるという事ですから。本当に困るのは、世間に需要の無いものです——例えばあれのような」

 エマは廊下の向こうを指差す。
 そこにはなにやら、半分布に覆われた動物の胴体を運んでいる魔導士の姿があった。まさか死骸だろうかと身を強張らせるリリアンだったが、魔導士が「おっと」とバランスを崩すと布が落ちた。思わず息を呑むが、その下からは金属が覗いている。どうやらあの胴体は作り物のようだ。ほっと息を吐く。

「好きなように研究させていると、あれみたいにへんてこで使い物にならない物ばかりが出来上がってしまうのです。彼には悪いのですけれど、魔法天文台は国営です。国の為に、ひいては民の為になる物を造る事が求められています。そうは分かっていても、どうしても自分の興味を優先するのが魔導士なのですわ。元々それが目的なのですから、当然と言えば当然なのですが」
「皆様、自分の研究にひたむきなのね」
「ひたむき過ぎる、とも言えますので、私としては他の事にも目を向けて貰いたいものです」
「そうね。せっかく作っても、運び出せないのでは困るものね」
「その通りですわ」

 エマは涼しい顔でそう言っているが、自分の作業に熱中してそれ以外がおざなりになるのは彼女も一緒だった。寝食を忘れるなんていうのは魔導士にとっては当たり前なのだ。作った道具が部屋から出せなくなる、なんて経験はさすがに無かったものの、作業しているうちに本来の目的から外れて完成品が別物になっていた……というのは何度かあった。
 途中で作業を止めていればそういう事故も防げるはず。にも関わらず、魔導士はその手間を惜しむかのように手を止めない。手を止めないというより、思考を止めたくないのだとエマは知っていた。作業をしていると、次はこうだ、ここはこうしたらいいだろうと着想が生まれる。そのうちに「いや、この方がいいのでは?」と別の発想が出てくるようになって、元来の好奇心からそれを試してしまうのだ。結果として作ろうとしたものとは別物が出来上がる。
 そうして、出来上がった物に使い所があるものかというと、そうではないケースが非常に多い。これはどういう理屈なのかは分からない。魔法というものが奥深いせいだ、とエマは割り切るようにしているが。
 そうとは知らないリリアンは、不思議ね、と首を傾げている。

「では、実用が難しいものはどうなってしまうのかしら」
「魔導士が自分で使ったり、再利用できそうなら素材に戻してしまいますが……ほとんどは廃棄ですわね」
「そうなのね」

 思った通りの言葉が返ってきて意外とも思わなかったが、リリアンはふと気に掛かるものがあった。それは家で作業をするアルベルトの事だ。リリアンが知る限りでは、エマが言っていたような爆発だとか、造ったものが部屋から出せなくなるというのは起きていないように思う。実用的でないもの、というのにも心当たりはなかった。そもそも作りかけのものを見る機会が無いからというだけかもしれない。だがひょっとして、父も同じように試作と廃棄を繰り返しているのだろうか。

(後でお父様に聞いてみましょう)

 うん、とリリアンは拳を握って頷いた。
 考え事をしていたエマは、どうしてリリアンがそんな動作をしたのか分からなかったようだ。窺う様な視線を向けられたが、「なんでもないの」とそう言えばそれ以上は何も聞かれなかった。

「リリアン様、また少し歩きますが大丈夫ですか?」

 代わりにそう確認され、リリアンは頷く。

「ええ、問題無いわ。この次はどんな場所なのかしら」
「私も所属している魔導学の研究室ですわ。先程までのように開発はしておりませんので、少し地味に見えると思いますが」

 所長室のある塔の一階まで戻り、エマがとある部屋のドアを開いた。
 通された研究室は確かに作業スペースが少ない。代わりに天井まで届く本棚がいくつもあって、いずれも本がぎゅうぎゅうに詰められていた。壁も一面本棚になっていて、そこもやはり本で満杯になっている。

「蔵書量ではここが天文台で一番なんです」
「そうなのね」

 微かな声が静まり返った室内に響く。研究室には三人の魔導士が居たが、彼らはリリアン達が入ってきても体勢を変えず机に向かっていた。
 聞こえてくるのはリリアン達の靴音と、かりかりというペンを走らせる音だけ。たまに魔導士が本を捲った音がするが、誰もそれを気にする様子はない。凄まじい集中力だ。
 リリアンは一番近い棚を見上げる。そこに並ぶ背表紙を見ると、どれも魔法に関する本だった。魔法の本ばかり、というのは当然と言えば当然だけれど、魔導書と呼ばれる本は種類が少ないと聞いたので驚く。
 それがこれだけの数揃っているのは、天文台に所属する歴代の魔導士達の著書だからだそうだ。

「ああ、なるほど。それらを管理、保管するのも、天文台の役目ですものね」
「その通りですわ、リリアン様」

 エマは笑顔をより一層深いものにする。
 リリアンは、エマが思っていた以上に聡明な令嬢だった。極力単純な説明にしているのもあるが、適切に返答が返ってくるのはいいものだ。
 魔法天文台は、若い令嬢からして見れば地味で面白くなく目に映るだろうに、ひとつひとつの研究を興味深そうに見ている。そればかりでなく、疑問を口にしては所員ともコミュニケーションが取れる。この年齢でそれができるのは、やはり高位の貴族であるというのが大きいだろう。けれど、それでも退屈なのであればおざなりになるはずだ。なのにリリアンにはそれがなかった。

(自分の興味の範囲で、でしょうけれど。リリアン様は目の前のものを理解しようとなさっているのね。素晴らしいわ!)

 それが出来なければまず魔法のなんたるかは理解出来ないのだ。国営の学問のトップだからと魔導士を目指す貴族子女も居るが、興味を持てないが為に理解が及ばず、天文台を去る者も多い。魔導の道は険しいのだ。
 つい嬉しくなって、エマの解説にも熱が入る。

「ここでは魔法というもの、そのものの解析を行っています。魔法陣や呪文がなにに干渉して魔法という奇跡を起こしているのか、それの解析などを行っているのです」
「では、研究対象は魔法、ということ?」
「その通りです。ですので、アルベルト様の研究結果が最大の資料となります。あの方の魔法は天文台の魔導士達が使う魔法とは根本的に異なりますから」
「そうなの?」
「ええ、そうなのです! リリアン様はお父君以外の魔導士が魔法を使っているところを見た事がございますか?」
「……そう言われると、親族以外では無いわ」
「魔導士は普通、杖などの補助道具が無いと魔法を使えません」
「えっ!?」

 エマはさらっとそう言うが、それはリリアンにとって驚愕の事実だった。つい声が大きくなってしまい、直後慌てて口元を両手で押さえる。
 そろりと視線を周囲に向けるが、魔導士達は机に向かったままだ。リリアンはほっと胸を撫で下ろす。

「魔導士にとって、杖は魔法を発動させる鍵なのです。が、アルベルト様はそんなもの必要ないと、そもそも杖をお持ちではない」
「……ええ、そうね」

 杖を持っていないのはリリアンも、それと兄レイナードもそうだ。そもそもリリアンは、杖が無いと魔法を使えない、という事すら知らなかった。

「杖も無い、しかも、魔法陣すら不要。こんなの今の常識ではあり得ません。けれども、アルベルト様の魔法は他のどの魔導士よりも強力で強大です。あれだけの威力と規模の魔法は魔導士には使えない。では、魔導士達とアルベルト様の使う魔法はなにが違うのか? ……そもそもアルベルト様の研究はそこから始まったそうなのです」
「…………」

 こくりとリリアンは喉を鳴らす。それらは初めて耳にする事だった。
 リリアンにとって、アルベルトが使う魔法というのは実に身近なものだった。頻繁に魔道具を作るし、リリアンが少し寒そうにしているのを目ざとく見付けては暖炉の火を調整していた。リリアンが幼い時分には魔法を使ってあやすこともあった。それをリリアンは当たり前だと思っていたのだ。
 だが、こうして聞かされるとそれが違って見えてくる。あんな風に魔法を使うのはアルベルトだけ——そう言われてしまうと、なんだか不思議な気分がした。
 だって父は、あんなに思い通りに魔法を使っていたのに。それが少数なのだと言われても、リリアンにはその方が信じられなかった。
 それに、そんな風に魔法を使うのはなにもアルベルトだけではない。レイナードも、それにリリアン自身も、魔法を使うのに杖も魔法陣も必要としないのだ。

「お父様が使わないものだからこれが普通だと思っていたけれど……じゃあ、わたくしもお兄様も、天文台の魔導士達とは違うということね」

 リリアンはそう納得したが、エマはきょとんと瞬いている。

「どうかしたの?」
「えっ? あ、いえ、その……リリアン様も魔法を使われるのですか? 杖を使わず?」
「ええ、そうよ。試しに使ってみましょうか」
「えっ」

 言うなりリリアンが右手を前に差し出してみせた。エマが驚いている僅かな間に、手のひらの上に青い光が現れる。微かに光った直後、そこに渦を巻いて水が湧き上がった。息を呑むエマの目の前で回転する水は量を増していき、やがて球体の形をとる。ふわりと手のひらに浮かぶ水の球は、リリアンが最近よく練習している魔法だ。

「どうかしら。多分、お父様が使う時と同じような原理なのだと思うのだけれど」

 よく観察できるようにとリリアンが手のひらを差し出すが、エマはあんぐりと口を開いたまま、瞬きを繰り返すばかり。

「エマ?」
「……すっ」

 かと思うと思いっきり息を吸い込み、ぐっとリリアンに顔を近付けた。

「素っっ晴らしいですっ! ほ、本当に、魔法陣も杖も使わないのですね!?」

 勢いに驚いてリリアンは半歩後ろに退がる。シルヴィアがエマを警戒する素振りを見せるが、水の球にしか意識がいっていないエマがそれに気付く事はなかった。

「ど、どういうっ……えっ嘘……ほ、ほんとうだわ!」

 忙しく眼鏡を掛け直す仕草をするエマは興奮しっ放しだ。なんだかそれを見ていると逆に冷静になった。リリアンは気を取り直して姿勢を正す。

「見た事があるのではないの?」
「も、勿論ありますがっ! こんなに間近では初めてでっ……! な、なんて滑らかな魔力操作なの……! 美しい、美しいですわリリアン様ッ! 魔力もこんなに煌めいて、クフッ、さっきの魔法陣で出した水とは大違い……! この差はなんなの!?」

 リリアンにはよく分からないが、この水の球はエマの興味を刺激するものらしい。なおもエマは続ける。

「魔力、いいえそんな単純な話ではなさそうね。ひょっとして術式そのものの違い……? 閣下だけでなくリリアン様も……遺伝的なものなのかしら、それとも魔導士としての素養? 分からない……分からないわッ!」

 そう言うわりにエマは楽しげで、笑顔を浮かべている。いや、笑顔と言っていいのか。ギラギラした眼は水の球しか映していないし、にんまりと上がる口角は角度がきつすぎて三日月のように鋭利だった。
 シルヴィアからしてみれば狂気とも呼べる姿だったが、リリアンは「エマは研究熱心なのね」と朗らかに笑っている。懐の広いところはリリアンの美徳だ。警戒心が無いのは父親のせいもあるだろう。エマのそういう所はアルベルトに似通った部分がある。なるほど、それでリリアンはエマ相手でも警戒したりしていないのか、と内心シルヴィアが納得していると、鼻息の荒いエマがリリアンに近付くのが見えた。

「お嬢様」
「大丈夫よシルヴィア」

 思わず間に入ろうとしたのを当のリリアンが止める。仕方なくシルヴィアは退がった。

「……はっ! も、申し訳ありませんリリアン様。あまりの出来事に興奮してしまいました」
「いいのよ」

 リリアンはにこりと笑みを浮かべるが、エマは気まずそうだ。

「はあ、このまま調査をしたい所ですが、それではそちらの侍女にも閣下にも叱られてしまいますね。勿体無いですが、今日のところは諦めます」
「ふふっ。お父様に、エマに協力してあげてって伝えましょうか?」
「とっても魅力的なお話ですが、いいえ、結構ですわ。そのうちに閣下も分析を進められるでしょうし」

 さすがにこれ以上リリアンになにかをさせると、アルベルトが何をするか分からない。エマは自重する事にして、話を逸らす。

「ところで、そちらはずっと魔力を使って維持をしているのでしょうか」
「そうね、少しは。水を作る時が一番集中するから、それ以外はほとんど意識していないのだけれど、多分そうなのだと思うわ」
「成程……」

 リリアンの答えは曖昧だった。その言い方だと術式の発動時が最大でその後はさほどでもないというように聞こえるが、実際に魔力を消費して維持していると言っているわけではない。どうやって維持をしているか、本人が意識していないというのは、やはりエマの知識からすると異常だった。出力した魔法を維持するには、それを前提とした術式をあらかじめ構築しておかないといけないからだ。
 エマが異常性に背筋を泡立てていると、リリアンの手の上から水の球が消えた。保存させて貰えないかと思っていたエマは内心がっかりする。

「それで、どんな違いがあるのか分かる?」
「それは——私よりもお父君に伺ってはどうでしょう。私なんかよりも詳しいはずですわ。なにしろ分析した本人ですから」
「あっ! それは、そうね」

 エマに言われ、リリアンは赤くなる。
 でも、今まで魔法の話なんかした事がない。しかもリリアンには専門的な知識も無いから、さすがのアルベルトも説明を嫌がるかも。そう思いちょっぴり気落ちすると、シルヴィアに「お嬢様」と声を掛けられた。

「もしも旦那様が面倒がるかも、とお思いでしたら、杞憂です。きっと大喜びで説明して下さいますよ」
「そうかしら……?」
「ええ、断言致します。止めなければ三日三晩語り尽くす勢いでずっと喋り続けるでしょう」
「まあ、シルヴィアったら」

 リリアンはくすりと笑い声を上げるが、誇張でもなんでもないのでシルヴィアは真剣そのものだ。

「誇張ではなく、本当に実行しそうですわねぇ」

 エマもそんな風に言うので、ますますリリアンは笑ってしまった。が、これ以上騒がしくするのは良くないはずだ。そろそろ退室しようと、リリアンはエマを促した。
 ぱたんと静かにドアを閉める。この時点で思っていたよりも長く見学をしていたのに気付いたエマは、そろそろ戻りましょうと提案する。

「そうね。お父様、お仕事は終わったかしら」
「お疲れではありませんか?」
「大丈夫よ、ありがとう」

 リリアンとしては疲れよりも充実感が勝っている。魔法天文台は想像よりも不思議な場所だった。研究と一口に言っても様々で、魔導士の作業もたくさんあるらしい。それはリリアンの想像の範囲外の事ばかりで見るもの全てに驚いてしまった。
 そしてなにより、リリアンの知らないアルベルトの話が聞けた。それは何よりの収穫だった。
 ちょっぴり魔法というものに興味の沸いたリリアンは、魔法天文台へ来て良かったとそう思う。が、ふととある疑問が浮かんだ。

「ところで、どうして魔法『天文台』というの?」

 そういう名称だったから特になんとも思わなかったが、こうして見学を終えるとそう名付けられているのが不思議に思えた。ここは魔法の研究機関であって、天体の観測は行っていない。それなのになぜこんな名称が付けられているのか。
 リリアンがそう言えば、まあ、とエマは声を上げる。

「当然の疑問ですわね。ええ、お答えさせて頂きます。それは、当代では魔法は『観測するもの』と位置付けられているからですわ」
「観測……?」
「ええ。魔法という事象は、すでに存在しているものです。それを魔導士は観測する。全て、余す事なく、です。その為に組織立てられた、それが魔法天文台なのです。……現状はなかなか、そうでもないのですがね」
「どういうこと?」
「現在の魔法天文台の役割は魔道具開発です。魔法を用いての開発となりますから、まったくの役目違いというわけでもありませんが。魔導士とは、魔法の探究者。魔法とは何か、魔導とは何かを追い求める者なのです。……この十年ほど、それを忘れてしまっている者ばかりとなっていますけれどね」

 肩を竦めたエマは力無く笑ってみせる。残念そうに見えるのは、彼女の専攻がそれだからだろう。
 近年の魔法天文台の活躍は目覚ましいものがある。これまでにない魔道具の開発によって成し遂げられたと言っていい。国がこれ以上を望むのも分かるし、魔導士の方も注力するのも分かる。とはいえそれらは、『魔法』というものがあって成り立っているのだ。本質を見失っている現状には、思う所があるのだと教えてくれた。

「そう……」
「悪い事とは言いません。魔法の使い方がそれだけあるという事ですからね」
「魔導士って、色々な見方をする必要があるのね?」
「はい。ひとつの魔法でも、使い方次第で様々な効果になりますから。どう使うかを考えるには、多方面からの視野が必要になります。これも魔導士に必要な素質と言えますわね」

 言いながらエマは眼鏡のずれを直す。

「現在この魔法天文台に所属している魔導士の中で、最も力が強いのがアルベルト様ですわ。魔法は元より、作る魔道具も桁外れの性能なのです。……ああ、本当に素晴らしい。あのミスリルの砂だけでどれほどの価値があるか。どういう術式で動かしているかだけでも教えて下さらないかしら……」

 そう語るエマは生き生きとしていて、眼鏡の奥ではきらりと目が輝いていた。
 リリアンは、そういう人がどういう状態なのか、よく知っている。

「エマは、魔法がとっても好きなのね」
「ええ。実はそうなんです!」

 エマは満面の笑みでそう答えた。
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