13 / 34
第13話 蓼科の奇跡-夢の終わり-
しおりを挟む
蓼科生活前半の2日間だけで、班のメンバーは男女間も含めて、距離が急激に縮まった気がする。
もともとウチの高校は、クラスメンバーが固定されたまま3年間を過ごすことなどあって、男女含めて仲がいいというのが評判らしいのだが、特に今回のように数日間、同じ班として濃密な時間を共有すれば、自然と仲も深まるというものだろう。
たとえ一軍女子と三軍男子という身分格差はあれど、だ。
前夜、トイレの薄壁一枚を隔てて男の友情を確認し合った男子メンバーに関しては、もはや言うまでもない。
3日目は、午前中が林業の見学と体験、木材加工のワークショップ。午後は班ごとのオリエンテーリングを実施して、夕方まだ明るいうちに寮に戻る。
空が昼から夜へと変化するタイミングで、キャンプファイヤーの始まりだ。
俺はこの手のイベントに興味がない。みんなで火を囲んで、フォークダンスを踊ったり、わけの分からん歌を歌ったり、いったい俺はなにをやらされているのかという気分だ。もともと、ゴリゴリのインドア派なわけで、こういうのでテンションの上がる連中の気が知れない。
ただ、俺はここでも奇跡を体験した。井桁のなかの薪に着火されてから、この火の恵みに感謝すると称して、男女で交互に手をつないで周囲をぐるぐる回りましょう、ということになった。
俺は右手を愛凛と、左手で木内さんの手を握ることになった。
あぁ、これはもう!
火の神だ、火の精だ、火の霊だ、この際もうなんでもいい。
俺を祝え、俺を祭れ、俺を讃えよ、そして俺を愛せ。
吾輩はモテ男である。嫁はまだいない(隣にいる)。
俺はもう、あのさそりのように、この時間があとほんのわずかでも続くなら、俺の体なんか百ぺん焼いてもかまわない。
時よ止まれ、汝らはいかにも美しい。
キャンプファイヤーなどというのは、それ自体はまったくくだらないが、それでも俺はこの時間が永遠に続けばいいと思った。
愛凛と木内さん。
このレベルの美女に挟まれて手をつなぐなんて、たぶんもう二度とできない経験だろう。
俺、もう寿命が半分になってもいい!
謎の手つなぎぐるぐるタイムが終わってから、愛凛が耳元で悪魔のささやきを発した。
「このあとの肝試しでも、手つないじゃえばいいじゃん」
「えっ、い、いやそれはさすがに……」
「ダイジョブダイジョブ。だってもう手つないだんだから、イケるって」
「そうかな……」
「肝試しの終わりの方でさ、君と一緒にいるとドキドキする、こうやってずっと君と一緒に歩いていたい、なんて言ってやればもう、あすあすの目はときめきピンクハートよ」
「な、なるほど……」
俺をけしかけるのは、さぞ楽しかっただろうな。
そうは思っても、彼女のあまりにも魅力的な提案をしりぞけることのできない俺だった。
悪魔の声は、常にこの上なく美しいものだ。
俺は、俺はついに、木内さんと結ばれるのか?
この夜、キャンプファイヤー会場でそのままバーベキューをしたり花火を楽しんだりしてから、いよいよ勝負の肝試しだ。
一度、全員で寮に戻ってから、一組ずつ、出発する。
俺たちの班は、クラスでも真ん中あたりの順番だ。夜も20時を過ぎ、充分に闇も深まっている。
俺はガチガチに緊張しながら、木内さんとともに順番を待つ。
すぐ前の愛凛・清水ペアが呼ばれた。
「そんじゃ、いってきまーす!」
後続のペアに元気よく挨拶して、愛凛は足取りも軽く寮の玄関から出ていった。
あいつ、ずっと楽しそうだな。
愛凛に手を振り送り出してから、木内さんはふぅ、と息をついた。両膝をぎゅっと抱えて座り、緊張に耐えている様子がうかがえる。
「なんか、ドキドキしてきちゃった」
「木内さんは、肝試しとか苦手?」
「どうだろ。あんまり得意じゃないかも……」
「大丈夫。俺がいるから」
ウホホ。調子に乗ってずいぶん男前なこと言っちゃったな。
木内さんはしかし、安心したように笑顔を返してくれた。
これは愛凛が言った通り、手をつなげるか?
脈アリなのか?
ひょっとすると、ひょっとするのか?
さぁ、いよいよだ。
玄関で提灯を渡され、ぴったりと寄り添いながら、湿気の多い林のなかを静かに歩いてゆく。
真横にはクラスで一番の美人。
彼女は時々、不安な気持ちをあえて払拭しようとするように、目が合うたび、甘い微笑みを向けてくれる。
なんて、なんて美しいのだろう。
あぁ、俺はこの人に愛を叫びたい。
と思っていると、不意に足元から草が伸び、人の身長の高さまで盛り上がって、襲いかかってきた。
「ギェッ!!」
俺は驚きのあまり、奇声とともに提灯を落とした。
あぁ、人か。
すぐに、木内さんが拾い上げて、俺に返してくれる。
「あ、ごめん。びっくりしたね」
「うん、びっくりした。でも大丈夫!」
普通にびっくりしてしまった。
少し歩くと、今度は白い幽霊のような影が正面から迫ってきて、俺は悲鳴とともにまたしても提灯を手放した。
どうやら木に吊るしたてるてる坊主だったらしい。
「提灯、燃えたら危ないから私が持ってみるね」
またしても、木内さんが地面に落ちた提灯を拾い上げつつ、俺を傷つけまいとしてそのように言った。
表情は変わらず優しげだが、どうも雲行きが怪しい。
俺氏、肝試しにひどくビビってしまっている。
まずい。
そのあとも、おどかしが入るたび、俺はときに悲鳴を発し、ときに頭を抱え、ときに腰を抜かしてビビり散らかした。
しまいには、単なる自然現象でしかない強風や、ねずみが横切っただけでも金切り声を上げる始末だ。
なんだ、どうなっている。
こんな、こんなはずじゃなかった。
怖がる木内さんを、男の余裕を見せつけつつエスコートして、手をつなぎ、甘い愛の言葉をささやいて、俺に惚れさせる手はずだっただろう。
今、彼女は提灯を持ち、俺の前をすたすたと歩いてしまっている。
もしかして、怒っているのだろうか?
俺が、考えられないほどのヘタレであるゆえに。
出発前、大丈夫、俺がいるからなどと言っておきながら、このていたらく。木内さんは、軽く驚きの声は上げるものの、腰を抜かすほどではない。
(なんとか、なんとか挽回できないか……)
俺はそれをのみ願ったが、しかし無理だった。
なにもできずに、終わった。
俺が侍だったら、ここで自決して果てていただろう。
終着地点では、愛凛が待っていた。
「あすあすー、どうだったー?」
愛凛ははしゃいで木内さんに話しかけたが、色よい報告を聞くことはあるまい。
(くそ……なぜ、なぜこうなった)
すべては、すべては夢だった。
終わったんだ。
俺はもう、立ち直れない。
もともとウチの高校は、クラスメンバーが固定されたまま3年間を過ごすことなどあって、男女含めて仲がいいというのが評判らしいのだが、特に今回のように数日間、同じ班として濃密な時間を共有すれば、自然と仲も深まるというものだろう。
たとえ一軍女子と三軍男子という身分格差はあれど、だ。
前夜、トイレの薄壁一枚を隔てて男の友情を確認し合った男子メンバーに関しては、もはや言うまでもない。
3日目は、午前中が林業の見学と体験、木材加工のワークショップ。午後は班ごとのオリエンテーリングを実施して、夕方まだ明るいうちに寮に戻る。
空が昼から夜へと変化するタイミングで、キャンプファイヤーの始まりだ。
俺はこの手のイベントに興味がない。みんなで火を囲んで、フォークダンスを踊ったり、わけの分からん歌を歌ったり、いったい俺はなにをやらされているのかという気分だ。もともと、ゴリゴリのインドア派なわけで、こういうのでテンションの上がる連中の気が知れない。
ただ、俺はここでも奇跡を体験した。井桁のなかの薪に着火されてから、この火の恵みに感謝すると称して、男女で交互に手をつないで周囲をぐるぐる回りましょう、ということになった。
俺は右手を愛凛と、左手で木内さんの手を握ることになった。
あぁ、これはもう!
火の神だ、火の精だ、火の霊だ、この際もうなんでもいい。
俺を祝え、俺を祭れ、俺を讃えよ、そして俺を愛せ。
吾輩はモテ男である。嫁はまだいない(隣にいる)。
俺はもう、あのさそりのように、この時間があとほんのわずかでも続くなら、俺の体なんか百ぺん焼いてもかまわない。
時よ止まれ、汝らはいかにも美しい。
キャンプファイヤーなどというのは、それ自体はまったくくだらないが、それでも俺はこの時間が永遠に続けばいいと思った。
愛凛と木内さん。
このレベルの美女に挟まれて手をつなぐなんて、たぶんもう二度とできない経験だろう。
俺、もう寿命が半分になってもいい!
謎の手つなぎぐるぐるタイムが終わってから、愛凛が耳元で悪魔のささやきを発した。
「このあとの肝試しでも、手つないじゃえばいいじゃん」
「えっ、い、いやそれはさすがに……」
「ダイジョブダイジョブ。だってもう手つないだんだから、イケるって」
「そうかな……」
「肝試しの終わりの方でさ、君と一緒にいるとドキドキする、こうやってずっと君と一緒に歩いていたい、なんて言ってやればもう、あすあすの目はときめきピンクハートよ」
「な、なるほど……」
俺をけしかけるのは、さぞ楽しかっただろうな。
そうは思っても、彼女のあまりにも魅力的な提案をしりぞけることのできない俺だった。
悪魔の声は、常にこの上なく美しいものだ。
俺は、俺はついに、木内さんと結ばれるのか?
この夜、キャンプファイヤー会場でそのままバーベキューをしたり花火を楽しんだりしてから、いよいよ勝負の肝試しだ。
一度、全員で寮に戻ってから、一組ずつ、出発する。
俺たちの班は、クラスでも真ん中あたりの順番だ。夜も20時を過ぎ、充分に闇も深まっている。
俺はガチガチに緊張しながら、木内さんとともに順番を待つ。
すぐ前の愛凛・清水ペアが呼ばれた。
「そんじゃ、いってきまーす!」
後続のペアに元気よく挨拶して、愛凛は足取りも軽く寮の玄関から出ていった。
あいつ、ずっと楽しそうだな。
愛凛に手を振り送り出してから、木内さんはふぅ、と息をついた。両膝をぎゅっと抱えて座り、緊張に耐えている様子がうかがえる。
「なんか、ドキドキしてきちゃった」
「木内さんは、肝試しとか苦手?」
「どうだろ。あんまり得意じゃないかも……」
「大丈夫。俺がいるから」
ウホホ。調子に乗ってずいぶん男前なこと言っちゃったな。
木内さんはしかし、安心したように笑顔を返してくれた。
これは愛凛が言った通り、手をつなげるか?
脈アリなのか?
ひょっとすると、ひょっとするのか?
さぁ、いよいよだ。
玄関で提灯を渡され、ぴったりと寄り添いながら、湿気の多い林のなかを静かに歩いてゆく。
真横にはクラスで一番の美人。
彼女は時々、不安な気持ちをあえて払拭しようとするように、目が合うたび、甘い微笑みを向けてくれる。
なんて、なんて美しいのだろう。
あぁ、俺はこの人に愛を叫びたい。
と思っていると、不意に足元から草が伸び、人の身長の高さまで盛り上がって、襲いかかってきた。
「ギェッ!!」
俺は驚きのあまり、奇声とともに提灯を落とした。
あぁ、人か。
すぐに、木内さんが拾い上げて、俺に返してくれる。
「あ、ごめん。びっくりしたね」
「うん、びっくりした。でも大丈夫!」
普通にびっくりしてしまった。
少し歩くと、今度は白い幽霊のような影が正面から迫ってきて、俺は悲鳴とともにまたしても提灯を手放した。
どうやら木に吊るしたてるてる坊主だったらしい。
「提灯、燃えたら危ないから私が持ってみるね」
またしても、木内さんが地面に落ちた提灯を拾い上げつつ、俺を傷つけまいとしてそのように言った。
表情は変わらず優しげだが、どうも雲行きが怪しい。
俺氏、肝試しにひどくビビってしまっている。
まずい。
そのあとも、おどかしが入るたび、俺はときに悲鳴を発し、ときに頭を抱え、ときに腰を抜かしてビビり散らかした。
しまいには、単なる自然現象でしかない強風や、ねずみが横切っただけでも金切り声を上げる始末だ。
なんだ、どうなっている。
こんな、こんなはずじゃなかった。
怖がる木内さんを、男の余裕を見せつけつつエスコートして、手をつなぎ、甘い愛の言葉をささやいて、俺に惚れさせる手はずだっただろう。
今、彼女は提灯を持ち、俺の前をすたすたと歩いてしまっている。
もしかして、怒っているのだろうか?
俺が、考えられないほどのヘタレであるゆえに。
出発前、大丈夫、俺がいるからなどと言っておきながら、このていたらく。木内さんは、軽く驚きの声は上げるものの、腰を抜かすほどではない。
(なんとか、なんとか挽回できないか……)
俺はそれをのみ願ったが、しかし無理だった。
なにもできずに、終わった。
俺が侍だったら、ここで自決して果てていただろう。
終着地点では、愛凛が待っていた。
「あすあすー、どうだったー?」
愛凛ははしゃいで木内さんに話しかけたが、色よい報告を聞くことはあるまい。
(くそ……なぜ、なぜこうなった)
すべては、すべては夢だった。
終わったんだ。
俺はもう、立ち直れない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

僕(じゃない人)が幸せにします。
暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】
・第1章
彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。
そんな彼を想う二人。
席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。
所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。
そして彼は幸せにする方法を考えつく――――
「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」
本当にそんなこと上手くいくのか!?
それで本当に幸せなのか!?
そもそも幸せにするってなんだ!?
・第2章
草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。
その目的は――――
「付き合ってほしいの!!」
「付き合ってほしいんです!!」
なぜこうなったのか!?
二人の本当の想いは!?
それを叶えるにはどうすれば良いのか!?
・第3章
文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。
君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……
深町と付き合おうとする別府!
ぼーっとする深町冴羅!
心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!?
・第4章
二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。
期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する――
「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」
二人は何を思い何をするのか!?
修学旅行がそこにもたらすものとは!?
彼ら彼女らの行く先は!?
・第5章
冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。
そんな中、深町凛紗が行動を起こす――
君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!
映像部への入部!
全ては幸せのために!
――これは誰かが誰かを幸せにする物語。
ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。
作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる